無料招待客のリピート率は4割超、有料転換も3割
――大型招待キャンペーンで増えた新規観戦者はその後、リピートしてくれるのでしょうか?
竹渕:各ホームスタジアムの注力試合や大規模招待による観戦者の4割以上、国立競技場で試合を繰り広げるTHE国立DAYでも3割超の方が再訪してくれていることがわかっています(初来場後約2年間での実績)。しかも招待のうちの約3割が2~4回目の観戦時には有料に転換しています。
――いわゆるクーポンゲッターがずっと参加するわけではないんですね。他業種では無料サンプリングは効果につながりにくいという話も耳にします。
竹渕:招待の初回来場がうまく機能し、そこからクラブやリーグ側のCRMで継続的な接点を作ることで、新しいファン層にきちんと変わっていることがデータにも表れました。クラブにも施策がきちんと新規層の増加につながっていることを随時共有しています。
鈴木:招待の場合であっても、観戦はスタジアムに移動する時間と労力と交通費をかけて体験するものです。スタジアムにお越しいただいた時点で、ある程度のハードルを乗り越えた方々だと言えます。さらに初回から有料来場の方と、初回は招待の方の定着率もあまり変わりません。現段階ではリピートも付いてきているので、招待施策をポジティブに捉えていますが、招待施策のような獲得型の施策と、広く興味関心を高める関心想起型の施策は両輪です。この2つをバランスよく実施する必要があると考えています。

現場の体験が重要、ユーザー調査からPDCAを回す
――観戦の満足度を知るためのユーザー調査もされているそうですね。
鈴木:はい。スタジアム観戦者に対しての満足度調査は全60クラブで実施しています。年間240試合分について様々な項目に関する満足の度合いを5段階で尋ねます。たとえば、試合前の雰囲気や試合の中身、試合以外のレジャーやイベント、スタグル、グッズ物販、周囲のサポーターとの交流や応援体験、スタジアム自体の設備など多岐にわたります。
調査結果や課題点をクラブと共有し、改善のPDCAを回すと、きちんと次の調査で結果が出ます。昨対比で一番改善しているクラブはどこか、取り組みの方向が間違っていないかがわかります。
――改善の正しい姿ですね。具体的にどんなことをしてるんですか?
鈴木:あるスタジアムはキャパシティが小さく、スタグルの店舗も少ない点が満足度の低下につながっていました。そこで、隣の芝生広場を開放してキッズエリアにするなどして食べる環境を改善しました。結果、観戦体験の向上が数値として現れています。また、スタジアムでのグッズ物販が混雑する問題に対して、セルフレジ導入やキャッシュレス化に取り組み、グッズ物販に関するスコアが改善しているクラブもあります。
竹渕:CRMと聞くと「このシナリオを踏んだ人にはこのクーポンを送る」など、基本的にメールやデータでの施策を考えますよね。ロジックな部分はもちろん必要ですが、サッカーの良さを最も体感できるのはスタジアムです。観戦体験自体を良くすることに注力しています。
――認知・未利用層や未認知層へのコミュニケーションはどうされていますか?
竹渕:Jリーグのファン・サポーターは、新規層からライト層、コア層まですべて、デモグラフィックに大きな差がありません。ですからファン・サポーターの熱量ベースで施策をわけて、メディアとコンテンツを変えています。

昨年はインフルエンサーさんや、ちいかわ、にじさんじなどとのコラボをしました。今年はさらに強化していきます。