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「ユーザー・イノベーション」に見る、変化する消費者像とマーケティング

 ビジネスパーソンとして一歩飛躍するために、大学院やMBAの門を叩くマーケターが増えています。実務だけでは知り得ないアカデミックの知識を武器に、新たな視点を手に入れる最も簡単な方法は、学術論文を読むことです。しかし、学術論文は難解で敷居が高いのも事実です。本連載では、日本マーケティング学会が刊行する『マーケティングジャーナル』の内容を噛み砕き、読みどころをピックアップ。一線で活躍しているマーケターに向けて今読むべき論文を紹介します。

目次
この記事は、日本マーケティング学会発行の『マーケティングジャーナル』Vol.36, No.4の巻頭言をもとに、加筆・修正したものです。

イノベーション創出は、ユーザー起点へ

 今、イノベーション創出に注力する企業が増えています。消費者ニーズや市場動向の把握を起点とする、いわゆる「顧客志向」が企業のイノベーションの源泉となり、同時に消費者や市場の解明が進んでいます

 しかし、そこでは、イノベーション創出はメーカーの役割であり、それを使用するのがユーザーという前提が置かれています。作る者を意味する「メーカー」という言葉や、消費する者を意味する「消費者」、あるいは使う者を意味する「ユーザー」という言葉をみても、それぞれの役割の前提を示していたといえます。

 そもそも、 イノベーションの父と言われるシュンペーターが定義して以来よく使われる「イノベーション」という言葉も、企業(起業家)による創出を前提にしていました(参考文献『経済発展の理論』)

 しかしここ数年来、使用・消費を前提とした消費者像を見直す取り組みが進んでいます。それは、ユーザーが自らの使用のために自ら製品を開発・改良する、すなわち「ユーザー・イノベーション」のことです。

 その代表例の1つが、マウンテンバイクです。1970年初め、オフロードで自転車に乗るために、頑丈なバイク用のフレームやバルーンタイヤ、ドラムブレーキなどを使って、ユーザーが自転車を組み立てたことから始まりました。

 イノベーションを行うユーザーの存在は、ユーザーを創造者あるいは問題解決者とみる、新たな消費者像へと捉え直す必要があります。こうした捉え方は、実は新しい見方です。そもそも何百年もの間、実務でも研究の世界においても、イノベーションはメーカーが行うのが当然だと信じられてきたからです。

 1970年代になって、MIT のエリック・フォン・ヒッペル教授によって、 はじめてユーザー・イノベーションの存在が明らかにされました。この研究がきっかけとなり、その実態が明らかとなり、多様な研究に発展してきました(参考文献『Democratizing Innovation』)

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