リテールメディアは「データの分断」の解決策
──まず、会社の事業内容と担当する業務について教えてください。
Criteoは、DSP・SSP双方の事業を行い、コマースメディアというアプローチでマーケティングソリューションのプラットフォームを提供する企業です。私は、ECモール、マーケットプレイス、リテーラーに対し、データ・アセットを活用した広告収益ビジネスの支援を行うマネタイゼーションチームを統括しています。

──タッチポイントの増加やプライバシー規制の強化といった社会背景の中で、マーケターは今、どういった課題に直面していますか?
ユーザーの行動パターンが複雑になり、ユーザーとのタッチポイントが多様になりました。そんな中、マーケターはすべてのタッチポイントで一貫したブランドメッセージを“戦略的”に伝える必要があります。その一方で、“戦術的”には各環境に応じて異なるアプローチを実行するという、非常に高度で複雑な課題に取り組まなければならない状況にあります。
特に深刻な問題は、データの分断です。ウォールド・ガーデン(Google、Metaなどのプラットフォーム)とオープンインターネットでデータが区切られているため、どのユーザーにどのようなメッセージを発信し、それによってどのような行動変容が起きたかを一貫して把握することが困難になっています。
そうした中で、注目を集めたのが「リテールメディア」です。同一ユーザーの購買行動を一貫して分析できるソリューションとして、米国発で現在はヨーロッパ、アジアでも活用が急速に拡大しています。
eMarketerの最新調査(Worldwide Retail Media Ad Spending 2025)によると、世界のリテールメディア広告費は2025年に約1,690億ドル(約24兆円)に達し、2029年までに年率15%以上の2桁成長が続き、約2,500億ドル(約37.5兆円)まで成長すると予測されています。
日本でのリテールメディア活用は“もったいない”状態
──日本でのリテールメディアの活用はどのぐらい進んでいるのでしょうか? Criteoによるリテールメディアの定義もあわせて教えてください。
まず、Criteoが考えるリテールメディアとは、小売業者が保有する顧客データやメディア資産を活用して、ブランド企業(広告主)に向けてマーケティングソリューションを提供する手法です。ブランド企業にとっては、これまで入手できなかった購買データにアクセスできたり、顧客インサイトが得られたりすることで、より売上に直結しやすいターゲティングや配信が可能になります。
日本での活用状況は、当社の調査結果によると83%のマーケターがリテールメディアを認知しており、68%が「活用したい」という結果でした。ただし、多くの企業では購買データを用いたオフサイト配信や、リテーラーのアプリ・ECサイト内のオンサイト配信、店舗内でのデジタルサイネージ配信など、“ピンポイント”に活用しているのが現状です。
リテールメディアの真価は、オンサイトとオフサイト、店舗とデジタルを横断して、一貫したマーケティングを展開できることにあります。新規獲得からリピート購入、ロイヤルティ向上まで、包括的にマーケティング戦略を組むことで効果を発揮するソリューションなので、局所的な活用だと“もったいない”です。