顧客に中長期的なファンになってもらうために
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回はパルコのCRM戦略について伺います。まずは、自己紹介をお願いします。
安藤:これまでメーカーや小売りでCRM・デジタルマーケティングに携わり、2018年にパルコに入社しました。現在はデジタル推進部として、デジタルタッチポイントの構築および運用、自社QRコード決済サービス「ポケパル払い」とポイントサービス「PARCOポイント」のシステム構築、デジタルコミュニケーション、データ分析活用などを担っています。
上岡:各地のPARCO店舗で販促やテナントリーシング(テナント誘致)、出店者との契約管理などの経験を経て、2019年からCRM推進部に加わりました。当部署では、キャッシュレス全般の運用業務、SNSやWeb広告など各店のコミュニケーションツール運用、VOC(お客様の声)の取得から蓄積や分析などのカスタマーサポート、ECサイト「ONLINE PARCO」の運用と大きく分けて4領域を担当しています。
これらはいずれも、中長期にわたってお客様にファンになってもらうことを目指しています。パルコ固有の資産として、その関係性を適切なコストで維持拡大することを私たちはミッションに掲げています。
MZ:2022年11月にパルコではあらゆるサービスの顧客IDを統合した会員Webサービス「PARCOメンバーズ」を導入されましたよね。サービスの概要を教えていただけますか。
安藤:PARCOメンバーズでは現在、PARCOポイント・ポケパル払い・ONLINE PARCOの会員サービスを利用いただけます。つまりPARCOポイントのWebサービスと、ECサイトであるONLINE PARCOの会員統合によって生まれたサービスとなります。
ID統合による利便性の先に、新たな提供価値を作る
MZ:IDの統合に至った背景をお聞かせください。
安藤:パルコには、エンターテインメントや新規事業などショッピングセンター事業だけにとどまらない総合的な魅力があります。その魅力を伝えるために、お客様と1対1で向き合い、なおかつ多様性のあるサービスを提供していくパルコらしさが大切であると考えました。
ID統合の最終的なゴールは、LTVを拡大することと、会社の収益を拡大することです。そのために、顧客のロイヤルティを高める必要があります。一番の方法は、パルコを好きになってもらうこと。そのためにはタッチポイントを増やす必要があり、ID統合を行うことでその土台を整えられたと思います。
MZ:各種サービスのIDを統合する取り組みは、コストやリソースも非常にかかると思います。意識されたことやポイントがあれば教えてください。
安藤:現在はまだ道半ば、これからが本番という段階です。何より難しいのは、ID統合をした意義を全社的に理解してもらうことですね。またID統合の先に新たな提供価値がなければ、お客様目線では「利便性が向上した“だけ”」になりかねません。
だからこそサービス同士を横連携・クロス連携させ、お客様にとってより価値の高いものを生み出す必要があります。今はその価値作りを行っている段階です。
MZ:全社的な理解を得るために、どんな試みをされたのでしょうか?
安藤:中期計画策定のタイミングで、経営側とも多く話しながら目線合わせをしています。加えてPARCO各店や各部署ともコミュニケーションを取りながら、具体的な取り組みを進めているところです。