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先進的なCRMを実践する事例大全

TikTokの総再生回数800万超 ミツカンが実践するメーカーのCRM施策とその効果測定

 LTV向上の重要性を理解しながらも、具体的な手法に悩んでいる企業が多い中、ミツカンでは、2021年からCRM本部を設置し、顧客にミツカンという企業そのものを好きになってもらえるように活動をしているという。その一環として行っているのが「凹メシ」プロジェクトだ。本記事では、同プロジェクトを推進するCRM本部 メディアPR課 課長の田中保憲氏に、成果が測りにくいCRM施策のための独自指標「推定LTV」やプロジェクトの成果、今後の展望についてうかがう。

ミツカンが推進する顧客データ基盤の構築

——まず、田中さんが所属されているミツカンのCRM本部について教えてください。

 CRM本部は、2021年7月に設立した部署です。当部署では、「ミツカンという会社のファンをつくる」ことをミッションとして掲げています。目指すのは、お客様がスーパーでついミツカンの商品を探してしまう状態です。

株式会社Mizkan CRM本部 メディアPR課 課長 田中 保憲氏

 当部署が立ち上がった背景には、当時ミツカンが直面していた二つの課題があります。一つ目が「コロナ禍による生活習慣の変化」です。当時、デリバリーや冷凍食品などの便利な商品がコロナ禍をきっかけに多くの方に浸透しました。これにより、コロナ前と比較すると自炊する人が減り、調味料の売上が落ちてしまいました。

 二つ目が「PBの台頭」です。近年、多くの小売店がPB商品を販売するようになりました。これは、NB(ナショナルブランド)である私たちの立場が脅かされていることを意味しています。なぜなら、各小売店は当然、PBを販売することの優先度が高く、PBの商品が売れるのであればわざわざNBの商品を売る必要がないためです。

 これらの理由から、お客様一人ひとりのミツカンへのLTVを向上させるためには、わざわざ選んでもらえるブランドになる必要があると考え、そのための部署としてCRM本部を設立しました。

 とはいえ、私たちのようなメーカー企業は、自社で顧客データを持っていないためCRMを行っていくことは非常に難しいです。そのため、2023年3月に「【公式】mizkan(ミツカン)の公式通販ショップ」をオープンしたり、2024年の7月には「公式ファンサイト」をオープンしたりと、CRMに注力できるようにデータ基盤の構築を進めています。

LTV向上施策「凹メシ」プロジェクトとは?

——2022年11月、部内に「凹んでない課」を設立し、「凹メシ」プロジェクトと呼ばれるCRM施策を開始したと聞きました。このプロジェクトの概要と開始のきっかけを教えてもらえますか?

 ミツカンは、創立から200年以上の老舗企業ということもあり、お客様の多くは昔からご愛顧いただいている中年以上の方々です。特に、穀物酢や米酢といったいわゆる生酢の売上は、50代以上がほとんどで、30代以下の方は全体の10%超しかいません。しかし、LTVを上げていくことを考えると、若年層のお客様もファンにしていきたいという想いがありました。このような背景から、若年層顧客の新規獲得を目指して立ち上がったのが「凹メシ」プロジェクトです。

 従来ミツカンではお客様に対して、「ミツカンの商品の利用を通して身体を元気にしよう」といった機能訴求のコミュニケーションを行ってきました。しかし、同プロジェクトでターゲットとしている若年層のお客様は、内臓脂肪、血糖値や血圧などに気を遣う人は多くありません。そのため、“心の健康”に着目して嫌なことを“凹んだ”と表現したコミュニケーションを行いました。

 具体的には、「また月曜日が来てしまった」「洗濯していたら靴下が片方なくなってしまった」などの日常にある誰でも経験するような凹んだ話に対して、そんな気持ちを整えてくれる美味しい食事を提案するというもの。「やけ酒も良いけど、“凹メシ”も良いんじゃない?」と手を差し伸べるイメージです。このように今まで行っていた機能訴求から情緒訴求へと切り替えていきました。

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この記事の著者

土屋 典正(編集部)(ツチヤ ノリマサ)

法政大学法学部を卒業。新卒で人材派遣の会社にて営業職を経験し、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/17 09:00 https://markezine.jp/article/detail/45442

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