丸亀製麺が考える2種類の“感動”
「食の感動で、この星を満たせ」というスローガンの下、感動体験の創造をミッションの中核に据えている丸亀製麺。あらゆる意思決定において“感動”が最優先事項に設定されている。「常識や合理性の範囲内では真の感動は生まれにくい」「一見非合理に見える取り組みの先にこそ、他社が創出できない独自の市場と感動が存在する」と語るのは、同社のマーケティング部長を務める南雲克明氏だ。

丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長 南雲克明氏
同社が考える感動は2種類ある。第一は「自ら仕掛けにいく感動」だ。店舗づくりや空間設計、商品開発など、顧客に能動的に働きかける要素である。第二は「つながりから生まれる感動」で、人と人とのつながりから生まれる情緒的な要素である。この二つの掛け算により、感動創造の拡大を図っているのだ。
「『五感への訴求』と『エンターテイメント性 驚き・ワクワク』そして『人の力』を感動の重要要素と捉えています」(南雲氏)
丸亀製麺では次の五つの戦略的アプローチを採用している。「本能の探求」「インサイトの発掘」「パーセプション形成と衝動づくり」「内発的動機を高める」「ビルディングブロックづくり」の五つだ。一つずつ見ていこう。
インサイトは調査結果に表れない
1.本能の探求
本能は不変であり、最も強力な欲求である。「できる限り本能に近いところにアプローチすることが望ましい」と南雲氏。丸亀製麺では、五感を本能にアプローチするための入り口・スイッチと位置づけているそうだ。特に視覚は「情報の大部分を占める、最も重要な要素」だという。うどんから上る湯気や、グツグツと湯が煮えたぎる様子を見せながら、視覚を通じて衝動をかき立て、本能に近い領域を刺激している。
「五感の刺激は感情領域、さらにその奥の記憶領域とつながっています。記憶を呼び起こすためには五感を刺激することが有効です。これによって衝動と興奮状態を創出するマーケティング戦略を実現しています」(南雲氏)
2.インサイトの発掘
丸亀製麺ではインサイトを「消費者が今まで気づいていなかった事実や潜在意識/深層心理」と定義している。無意識に感じていたが、人から言われて初めて「そうそう!」と顕在化するため、調査結果やデータの表面には表れない。
インサイトを発掘するために、丸亀製麺では三つのアプローチをとっている。