SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Autumn

先進的なCRMを実践する事例大全

「ROI可視化までお客様軸」に徹底改革 顧客LTVの最大化を目指すファンケルのCRM戦略

 1980年創業、無添加化粧品のパイオニアとして通信販売を中心に事業を拡大してきたファンケル。1990年代は健康食品の製造・販売も開始し、数々のヒット商品によりサプリメントブームを牽引してきた。チャネルも通信販売から直営店舗、ドラッグストア等の卸販売、ECモールなど幅広く展開。通販事業からスタートしたこともあり、CRMに定評があるのも同社の特徴だが、2023年からこれまでの勝ちパターンを脱却し、「顧客LTV最大化」に向けて業務を変革してきたと言う。その背景や施策の中身、成果について、同社でCRMの取り組みをリードする石川雅俊氏に聞いた。

CRMは「お客様との絆づくり」、定量的な指標は「顧客LTV」

━━まず石川さんが所属している通販営業本部がCRMにおいてどのような業務を担っているのか教えていただけますか。

 通販営業本部にある戦略企画部のメイン業務は、通販チャネルに関する戦略の策定・推進です。これに加えて顧客育成とその全体設計も行っており、これらがCRM領域の業務になると思います。また、それらに必要な損益や売上などの業績管理や顧客データ分析も担っており、幅広い領域を担当しています。

画像を説明するテキストなくても可
株式会社ファンケル マーケティング推進統括オフィス 通販営業本部 戦略企画部 部長 石川雅俊氏

 通販チャネルのミッションは「お客様との絆づくり」で、これはファンケルのCRMの定義だと考えております。もう少し具体的に言うと、お客様との絆を深めるために、顧客解像度を高め、お客様を深く知る。より広くお客様とつながり、顧客接点を増やす。つながった先でしっかりお客様の体験を高める。その取り組みを推進し、お客様の価値を最大化することを目指しています。

━━なるほど。では、そのCRMの取り組みについてどのような方針で進めているのでしょうか。

 CRMは「お客様との絆づくり」とお話ししましたが、その“絆”の定量的な指標として、ファンケルではお客様のLTV(Life Time Value)を見ています。このLTVを重要指標としてCRMのPDCAを回しています。これは通販も店舗も同じです。

 LTVは、複数の商品を購入する「併売性」と、長く使い続けていただく「継続性」で構成されます。ファンケルは「美」を扱う化粧品事業、そして「健康」のサプリメント事業を展開しており、商品点数も非常に多いので、データを基にお客様の解像度を上げ、最適な商品のご提案をはじめ体験を高めることで併売性や継続性を高めていく取り組みを行っています。

 一例を挙げると、ファンケルの基幹商品である「マイルドクレンジングオイル」をお使いのお客様に、クレンジング後に使う洗顔料をお勧めしたり、化粧水や乳液を購入した方にスペシャルケアをご提案したり、そういった形で併売性を高めていますし、化粧品を買っている方にサプリメントをご紹介することもあります。

ファンケルが従来の「CRMの勝ちパターン」から脱却した理由

━━3年ほど前から「お客様の収益可視化」に取り組み始めたとのことですが、どのような狙いがあるのでしょうか。

 ファンケルは、2015年に機能性表示食品制度がスタートした時にサプリメントがヒットし、通販チャネルも売上を大きく伸ばしました。以来、ヒットしている“強い商品”の広告を積極展開して新規のお客様を獲得し、定期購入へ早期登録していただくこと。また、長年化粧品を中心にご愛用いただいているロイヤルティの高いお客様に向けてキャンペーンを展開してきており、それも成果を上げていたこと。この2つがいわゆる勝ちパターンとして定着していたのです。

 ところが、コロナ禍を経てこの勝ちパターンの前提が大きく崩れました。化粧品もサプリメントも競合が激増し、ネット広告費も高騰、これまでのやり方では以前のような伸長と収益性の確保が難しくなりました。そこで通販チャネルとして、新たなお客様の獲得は、伸びしろのあるECモールが担い、直営通販は「既存のお客様をもっと活性化することで、LTVの最大化を目指す」という戦略へ転換し、業務のやり方も変えていきました。

画像を説明するテキストなくても可
クリックすると拡大します

 最大の違いは、それまでキャンペーンなど施策ごとに見ていた収益やROIを、お客様を軸にして見るようになったことです。以前の施策単位のROIでは、キャンペーンがどれくらいのお客様に重複して実施していたのかがわからず、どのキャンペーンがどのお客様に対して本当に良かったのかまではわかりませんでした。現在は、たとえば値引きやクーポンなどの施策について「ロイヤルティの高いお客様は、どの施策にどのくらい反応しているのか」「ライト層のお客様はどの施策にどのくらい反応しているのか」「そのお客様のLTVはどれくらい引き上がったのか」というところまで見るようにしています。

 様々な取り組みを行い、2022年に比べ2024年は一人当たりの直営通販での年間金額は25%ほど上がりました。

ファンケルの石川氏も登壇!LTV戦略が学べるセッションが無料開催

 2025年9月10-11日に東京・丸の内で開催予定の「MarkeZine Day 2025 Autumn」では、本記事で登場したファンケルの石川氏らが登壇するセッション『ファンケル×ゴルフダイジェスト・オンラインに学ぶ「ブランド想起」を広げるLTV最大化戦略(仮)』を実施予定です。

 パネリストとしては石川氏のほか、ゴルフダイジェスト・オンラインでデータを活用したエンゲージメント向上に取り組む加藤氏も招聘し、モデレーターに経営やCMO視点で長くデータを活用している、タネトシカケの代表、はなまるのCMOの髙口裕之氏を迎えます。

 顧客とのエンゲージメントを高め、LTVを向上させるためにどのような工夫が必要か、どのような発想でデータを活用すべきかなどが学べるセッションです。参加は事前登録制で席に限りがありますので、登録はぜひお早めに。

次のページ
「つながり」と「行動」のデータを見て顧客解像度を上げる

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
先進的なCRMを実践する事例大全連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/07/29 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49453

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング