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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Autumn

先進的なCRMを実践する事例大全

「ROI可視化までお客様軸」に徹底改革 顧客LTVの最大化を目指すファンケルのCRM戦略

「つながり」と「行動」のデータを見て顧客解像度を上げる

━━ファンケルは事業を支える独自のIT基盤「FIT(ファンケル・インフォメーション・テクノロジー)」があり、FITを活用することでお客様一人ひとりに合ったコミュニケーションを実現しているそうですが、これはどのような仕組みなのでしょうか。

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 FITは、通販・店舗にまたがって顧客や施策を統合管理し、通販の注文から出荷までの管理を担うシステムで、2014年から開発を進めてきたものです。第1期は2014年から2年かけて基幹システムをオープン化し、2017〜2018年に通販・店舗のデータを統合しております。そのFITという通販・店舗のシームレスな基盤があったからこそ、コロナ禍の店舗休業時に円滑に通販誘導ができ、売上影響を最小限におさえることができました。その後、FITに蓄積されたデータ分析を本格化してCRMの取り組みを変えるようになったのです。

━━お客様の解像度を上げるためにどのようなデータを見ているのでしょうか。

 具体的には、ECサイトやアプリにおけるお客様の行動履歴や、購買履歴はもちろんですが、アプリやLINE、メルマガの登録・配信・レスポンス、情報誌の送付・レスポンスといったオンライン、オフラインでのコミュニケーション履歴とその反応状況、口コミ投稿の履歴、直営ECサイトの「お気に入り商品」の登録などのアクティブな行動履歴状況、店舗でのカウンセリング履歴などの顧客に紐づくあらゆるデータを、顧客をセグメントして見ております。

 また、当社では情報誌やECサイト上で告知しているキャンペーンの他に、お客様ごとに個別にアプローチしているキャンペーンがあります。細かいものまで含めて年間1,000本ほどの施策が実行されており、そのうち8割はFITで登録している施策、残り2割はマーケティングオートメーション(MA)やECサイト上での出し分けしているものになります。

 この施策数を実現できることはFITの強みだったり、ファンケル通販の強みではありますが、前述の施策の重複の話でもありましたが、本当に意味のある施策なのかなど顧客軸での可視化が必要であり、どのお客様に展開した施策なのか、コストはどれくらいかかっているかを紐付け、顧客ごとの損益を可視化しています。まだ完全にはできあがっていないのですが、こうしたデータを全員で見て、理解を深め、業務を変えつつあります。

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店舗と通販が共通して「1人」を意識できる体制へ

━━CRMの体制についても教えてください。

 ファンケルの組織は「事業・広告」と「チャネル」に大きく分かれています。チャネルの方は、私が所属する通販チャネルのほか、直営店舗チャネル、ドラッグストア等の卸販売チャネルなどが含まれます。さらに通販チャネルは、直営通販とECモールの2つがあります。

 圧倒的な配荷店舗数を持つ卸販売チャネルや、膨大な集客力があるECモールは主力商品を展開して幅広い顧客接点を担うという役割があり、直営通販と直営店舗は顧客体験を深めてLTVを高める役割を持ちます。直営通販と直営店舗は、組織こそ別ですが「1人の顧客」を意識し、オムニチャネル化を見据えて融合を進めています

 なお、直営通販は、キャンペーンを企画する部署、ECサイトやLINEなどデジタルコミュニケーションを司る部署、新たな顧客体験価値を創出する部署などに分かれておりますが、顧客軸のあらゆるデータを組織長も交えて発信し続けることで、社内の意識も大きく変わりました。商品ごとの施策成果ではなく、「顧客との絆づくりだから、顧客軸で見よう」という意識改革は大きく、「お客様にとって何をご提案すればいいか、どういう体験をしてもらうとお客様のロイヤルティはあがり、結果として併売や継続につながるか」という視点で施策を企画するようになっています。

ファンケルの石川氏も登壇!LTV戦略が学べるセッションが無料開催

 2025年9月10-11日に東京・丸の内で開催予定の「MarkeZine Day 2025 Autumn」では、本記事で登場したファンケルの石川氏らが登壇するセッション『ファンケル×ゴルフダイジェスト・オンラインに学ぶ「ブランド想起」を広げるLTV最大化戦略(仮)』を実施予定です。

 パネリストとしては石川氏のほか、ゴルフダイジェスト・オンラインでデータを活用したエンゲージメント向上に取り組む加藤氏も招聘し、モデレーターに経営やCMO視点で長くデータを活用している、タネトシカケの代表、はなまるのCMOの髙口裕之氏を迎えます。

 顧客とのエンゲージメントを高め、LTVを向上させるためにどのような工夫が必要か、どのような発想でデータを活用すべきかなどが学べるセッションです。参加は事前登録制で席に限りがありますので、登録はぜひお早めに。

次のページ
LTV向上に向け、最適な層に向けた施策を展開

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/29 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49453

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