ブランド強化を図るアーバンリサーチ
外出の機会が減ったコロナ禍は、アパレルの小売市場にとって売上が落ち込み厳しい時期となった。しかしそれは、アーバンリサーチにとっては変化を目指すきっかけにもなったという。どのような変化を目指しているのか、同社デジタル事業部の小野田和晃氏が語る。

「コロナ禍の経験から、これまでとは違う事業のやり方をする必要があると気付き、“ブランド力”を強化していくことにしました」(小野田氏)
取り組みの一環として、たとえば「new basic」というコンセプトを掲げ、京都店を大幅にリニューアルした。また、大阪・関西万博に出店し、肉まんで有名な551HORAIとコラボしたアパレルの販売をするなど、多様なブランドやコンテンツを通じてブランド強化に取り組んでいる。
AIでブランドの価値を紐解く
アーバンリサーチは、ブランド強化のために、まずは自社の価値の源泉はどこにあるのかを紐解くことにした。分析をリードしたプレイドのAIチーム「Data Mind」鈴木氏は次のように語る。
「生成AIの進化により、従来難しかった写真や動画、長文の自然言語といった非構造言語からも、意味や曖昧なニュアンスを捉えることができるようになってきました。それにより、ブランドやユーザーの様々なコンテクストをより把握することが可能となります」(鈴木氏)

ここでのコンテクストとは、顧客がブランドやその商品を“選びたくなる情報”を指す。「なんとなく一番いい気がする」「今のスタイルや性格に合う」など、どういう文脈(意図や背景、前後関係など)あるいは状態にあることによって購入に至ったのかを探っていく。そしてそのコンテクストから、ブランドの価値となる独自性、競合との差別化を浮き上がらせていくわけだ。なかでもロイヤルユーザーのコンテクストは、ブランドにとっても重要な資産だと認識し、重要視している。
「コンテクストは、マーケティング用語で言うと、インテントとカテゴリーエントリーポイントの掛け合わせと捉えるとイメージしやすいかと思います。そこからアーバンリサーチのコアな価値を捉えられたらと考えました」(鈴木氏)