広くコスメ好きに向けた発信を続けるVOCE
――今回は、SNS運用で大きな成果を上げている『VOCE』のデジタル戦略についてうかがいます。まずはお三方の普段の業務や役割について教えてください。
渕:私は現在、VOCEデジタルチームの編集長として、コンテンツや運用の統括をしています。VOCE編集部は紙とデジタルでチームが分かれており、私はデジタル領域全体を見る立場です。
『VOCE』は1998年創刊の美容誌で、いわゆる三大美容誌の中でも最も長い歴史があります。私達は年齢や性別にとらわれず、美容が趣味の人・コスメ好きな人を読者だと考えています。また、若い層を中心に男性も当たり前にコスメを使うようになってきています。SNSを中心にメンズ領域のコンテンツ作りにも積極的に取り組んでいます。

髙橋:私はVOCE編集部に在籍して6年目の編集者です。4年ほど前からデジタルチームに所属しています。以前はX専任でしたが、現在はSNSのマネジメントを主業務とし、特にX(@iVoCE)とInstagram(@vocemagazine)の運用を統括しています。
鎌田:私はVOCE編集部のデジタルチームで、プロデューサーとしてデータ分析とPDCAを担当しています。VOCEのデジタル全体の数字を広く見つつ、新たなデジタル施策を編集長と一緒に推進する役割です。2年ほど前から、特にソーシャルメディアの分析に注力しています。
以前は紙の本誌に対して、SNSはそのプロモーションツールという位置づけでした。しかし現在では、それぞれを独立したメディアとして捉え、機能させています。特にInstagramやXは、若い世代にアプローチする重要な役割を担っており、コスメ好き・VOCE好きの裾野を広げる重要なチャネルになっています。

コロナ禍が加速させたデジタルファースト戦略
――SNSに対する意識の変化はいつ頃から始まったのですか?
渕:全社的なデジタル化の号令もあり、弊社はSNSやYouTube(@VOCE)の活用にも早くから取り組んできました。ただ、大きな転機となったのはコロナ禍の時期ですね。読者の方々とリアルでつながることが難しくなり、情報を伝える手段がSNSしかなくなったのです。
その時に気づいたのは、SNSはプロモーションツールではなく、雑誌と同じように、読者に価値のある情報を届ける「メディア」なんだということでした。それが編集部レベルでの意識変革のきっかけとなり、当時の編集長のもと「それぞれのSNSを、独立したメディアとして運用する」という意識が編集部全体に浸透していきました。
髙橋:VOCEとしてSNSの位置づけが変わったことで、読者の認識も、「SNSも自分自身に向けた情報を届けてくれるメディアなんだ」と変わったように感じます。
――会社としてデジタル活用の方針があるとのことですが、VOCE編集部のカルチャーとしてはいかがでしょうか?
鎌田:VOCE編集部には「すぐやる精神」があります。新しいことが出てきたら、まずやってみる。失敗しても、挑戦を受け入れる文化があります。実際、Instagramライブは美容メディアの中で先駆した自負があります。BlueskyやThreadsが登場した際も、すぐにアカウントの運用を開始しています(@vocemagazine.bsky.social/@ vocemagazine )し、Pinterest(vocemagazine)の運用もずっと続けています。最近ではTikTok(@voce_magazine )でのショート動画運用にも力を入れています。

髙橋:SNSは先行者利益が大きいですし、実際にトライ&エラーを通してしか学べない部分が多いです。だからこそ、失敗を恐れずにチャレンジする姿勢が重要だと感じています。