ホットリンクが探る、SNS活用企業の成功の秘訣
─ 目的に即しているならば、あえて機能やブランド訴求はしない選択もする。PaidyのSNS活用の姿勢
─ Instagramで中長期的なブランディング強化を狙う、運用戦略を見直した「KOSÉ公式アカウント」
─ 「ぬいぐるみクリーニング」で話題の「ネットで洗濯.com」がSNSで発信し続ける理由
─ “企業アカウント然”としない投稿でフォロワー数27万人超、JA全農広報部に聞くSNS運用の心得
─ 「100人に1人刺さる」企画が数字をつくる、らしさを追求したヤッホーブルーイングのSNS運用
─ 「SNS利用のルール」ではなく「会社の行動指針」がベース、LayerXがSNSを全社活用できる理由
─ 38万人超の「のりふ民」に愛される紀文のXアカウントに聞く、“人と人”の自然なコミュニケーション
─ なぜ今? SNSでも魚肉ソーセージの口コミが広がった理由
─ なんばグランド花月はSNS運用体制をどう変えた?公演担当の自由な発信から劇場らしい投稿へ変化した背景(本記事)
観光客もお笑いファンも集まる劇場
――なんばグランド花月のご説明と、皆さんの業務内容を教えてください。
和田:なんばグランド花月(以下、NGK)は「笑いの殿堂」とも称される吉本興業のお笑い専用劇場で、吉本の中でも一番大きな寄席小屋です。365日お笑い公演を行っており、昼間は漫才、落語、コント、よしもと新喜劇、夜は単独ライブや企画公演を行っています。
観光地のため、全国各地からお客様にお越しいただいています。平日昼間は企業団体や修学旅行などの団体様が多く、夜の単独ライブや企画ライブはお笑いファンの方が中心です。幅広い層の方が来られる劇場です。
私は公演のプロデューサーとして各公演の制作業務を担当し、併せてSNS担当として川田と一緒に活動しています。基本的には各公演にそれぞれ担当がついてSNS投稿もしているのですが、全体的な制作管理とSNS運用の管理を2人で行っています。
川田:なんばグランド花月のX(@namba_g_kagets)とInstagram(@nambagrandkagetsu)を担当し、定期投稿や朝のポスト内容の考案、演者さんのピックアップ、スケジュール管理などを行っています。劇場では入退場時のお客様ご案内も担当しており、お客様と直接お話しする機会が多いため、そこで得られる声もSNS投稿のヒントにしています。
生田:私は2024年2月からホットリンクのSNSプロデューサーとして参画し、Instagramをメインに、コンサルティングという形で運用に関するご質問にお答えしつつ、お困りごとに対する解決策をご提供しています。単発的なアドバイスではなく、継続的な運用体制の構築を重視してサポートしています。
公演ごとのバラバラな運用から、体制を強化
――内製のみだった以前の運用から、外部のSNSプロデューサーを採用することにした背景を教えてください。
和田:以前は各公演担当がそれぞれ自由に投稿しており、投稿時間も内容もトンマナもバラバラでした。告知が中心でブランディングを意識したり、企画をしたりといったことができていませんでした。投稿の整理が必要だとわかっていても、実行できていない状態でした。
誰もが課題を感じる中、支配人の主導でSNS改善のプロジェクトが発足し、最初になんばグランド花月が取り組むことになりました。そこで正式にSNSチームを作り、生田さんに1から整理していただいて、計画的な運用を進めることになりました。
劇場という商材の特徴として、アテンションから購買までが非常に短いという点があります。「今日の当日券あります」と投稿すれば「今夜行こう」と思ったり、芸人の名前を見れば「この人が出るなら見に行こう」となったりする。マーケティングファネルの上から下へ一気に通りやすい商材なので、安定した投稿体制を整えてアテンションを取れば売上につながるという仮説がありました。だからこそ、最初から投稿の面白さを狙うよりも、まずは安定した運用を重視することにしました。

生田:運用が安定していなければ、良いコンテンツを作ってもフォロワーの期待に応えられません。そのため、まずは体制の構築とルールの見える化を提案しました。なんばグランド花月さんの中で、誰がどういうお仕事をされているかを確認し、投稿頻度や投稿内容のルールを川田さんと擦り合わせながら決めていきました。