狙うべきは誰の投稿?UGC創出は購入体験から
コスメブランドに限らず、企業のSNS活用において、UGCは欠かせない要素の一つです。中でも、実際に商品を使ったユーザーによる投稿は、企業発信よりも「リアルな声」として受け止められやすく、購買を検討しているユーザーの後押しにもつながります。
ただし、UGCを増やそうとするあまり、「誰がその投稿をしてくれるのか」という視点が抜け落ちているケースも少なくありません。SNSでの話題化やバズを狙う施策と、購入者によるUGC創出とでは、目的もアプローチも異なります。既に商品を購入し、何らかの期待や満足感を持っているユーザーこそが、新たな購買の後押しとなるUGCを発信してくれる存在です。
そのような購入者が、思わず投稿したくなるような体験をどう設計するかも、コスメブランドがSNSを活用する際の鍵になります。たとえば、パッケージの工夫や同梱物、店舗での接客、使用感や香りといった細かな要素など、購入後の接点が「誰かに伝えたい」という気持ちを引き出すきっかけになります。
ユーザーとの接点やUGC創出のきっかけをSNSの中だけで作ろうとせず、商品の購入や利用に関する体験すべてをUGCの入り口と捉える。この視点が、UGCの“質”と“量”を高め、次の購買にもつながっていきます。
そして、こうした購買体験全体を起点にUGCを生み出していくためには、SNS担当者だけでなく、ブランド全体で取り組む体制作りが不可欠です。
実際、多くのコスメブランドでは、SNSのアカウント運用はSNS担当者、インフルエンサーやメディアとの連携はPRチーム、広告配信は広告チームと、それぞれが縦割りで役割を担う体制が一般的です。パッケージデザインは企画開発、店舗デザインはVMD、メインビジュアルはPR、と視覚に触れる要素だけでも複数の部署が関わっているケースも多いのではないでしょうか。SNS担当者がボトムアップでUGC創出の仕組みを構築するには限界があります。
だからこそ、ブランドの中で意思決定権を持つ人が「UGCをどう増やすか?」という視点を持ち、対話を始めることが何より重要です。
もちろん、ブランドの規模が大きくなるほど、部門を越えた連携は簡単ではありません。その場合は、ホットリンクのような支援会社を運用代行のためだけでなく、全体設計の整理や部門間の橋渡し役として組み込むのも一つの手段でしょう。
自社を見つめ直す。「以前からある体験」がヒントに
実際に、「購入者によるUGC」の発生に寄与した事例があります。
とあるスキンケアブランドでは、X上で美容好きのユーザー(いわゆる「美容垢」)の間に広がる「使い切りコスメ」や「底見えコスメ」といった投稿文化に着目。これは、愛用している商品を“最後まで使い切った”ことを写真付きで発信するもので、継続的に使われていることの証として、信頼感の醸成にもつながるUGCです。
同ブランドでは、そうした文化と親和性のあるアイテムに対して、使い切りを報告する専用ハッシュタグを設け、投稿を呼びかけました。元々商品に好感を持っていたユーザーの「伝えたい」という気持ちを後押しすることで、自然な形で発信が生まれ、「最後まで使いたくなる商品」という印象を広げるきっかけにもなりました。
SNSの活用方法や施策で悩んだ時は、他社の成功事例に振り回されてしまう前に、自社のブランドや商品がどんな体験を届けているのかを、改めて見つめ直してみることをお勧めします。
