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キンドリルのグローバルCMOに訊く、ブランド成長につながる組織文化と構築の鍵

 2021年にIBMからスピンオフし、独立する形で設立されたキンドリル。新たなブランドとして歩み始めた同社は、どのようにして組織文化を構築し、ブランド成長を実現してきたのか。創業期から関わり、グローバルでCMOを務めるMaria Bartolome Winans(マリア・バルトロメ・ワイナンズ)氏に、ブランド立ち上げから現在に至るまでの取り組みやその背景にある戦略的思考、AI時代にどのようなマーケティングが求められるかなどを聞いた。

“一生に一度”の規模に挑戦したブランド立ち上げ

━━まず、ワイナンズさんのご経歴と、現在の役割について教えてください。

画像を説明するテキストなくても可
キンドリルホールディングス マーケティング最高責任者 Maria Bartolome Winans(マリア・バルトロメ・ワイナンズ)氏

 私はキンドリルが2021年にIBMからスピンオフした当初から、この会社に関わっています。マーケティング領域でのキャリアは29年間で、そのほとんどをIBMで過ごしました。

 スピンオフの話をいただいた時、大きな変革の一部に関われる、そしてマーケティングチームとブランドを一から構築できる機会だと感じました。CMOとして、これほどの規模でゼロからブランドを立ち上げることは、キャリア上で一生に一度あるかないかの経験です。

 現在は、グローバル全体ですべてのマーケティングを統括しており、ブランディングやコーポレートブランディングも担当しています。

━━キンドリルの現在の事業規模と、ブランドの特徴について教えてください。

 現在、キンドリルは売上高151億ドル(約2兆4,000億円)、日本は各市場の中で第2位の規模を誇ります。

 スピンオフは、IBMとキンドリル双方にとって戦略的に重要な決断でした。IBMがインフラ事業とサービス事業を同時に手がけていた状況から、キンドリルがミッションクリティカルなエンタープライズテクノロジーサービスに特化することで、IBMは自社の優先事項により集中できるようになりました。

 キンドリルが設立されたことによる最も大きな変化は、お客様のニーズに対してより柔軟に対応できるようになったことです。独立後はMicrosoft、Google、AWSなど、お客様にとって最適なパートナーを自由に選択できるようになりました。

 この「自由度の向上」により、TAM(Total Addressable Market)は2倍に拡大しました。従来のマネージドサービスに加え、コンサルティングやアドバイザリー業務にも事業領域を広げられたのです。

 私たちが長年培ってきた強みは、お客様の事業の核、ミッションクリティカルな領域でのサービス提供です。航空会社の予約システム、銀行のデータセンター、ATMシステム、製造業のサプライチェーンなど、「なくてはならない」システムを支えています。

スピンオフ時の3つの課題と「人を中心に据える」アプローチ

━━スピンオフ時に直面していた課題と、その解決策について詳しく聞かせてください。

 スピンオフにあたって、私たちは3つの大きな課題に直面しました。

 第1に「お客様からの要望」です。お客様との対話を重ねる中で、明確な要求をいただきました。1つは「エキスパート人材を必ず引き継いでほしい」ということ。もう1つは「ビジネスをシンプルにしてほしい」。事業体制が複雑すぎるという声でした。

 第2の課題は、従業員のモチベーション向上です。多くが長年IBMで働いてきたメンバーでしたから、新しい会社での挑戦に対してワクワクしてもらう必要がありました。

 第3の課題は、新しい企業文化の構築です。キンドリルらしい文化を一から作り上げる必要がありました。

 これらの課題解決の核となったのが「人を中心に据える」という考え方です。サービス企業にとって、製品は人そのものです。従業員全員を新会社の創業メンバーとして位置づけ、ブランドに人間味を持たせるヒューマナイズを徹底しました。

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「キンドリルウェイ」で実現した組織文化変革

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49194

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