そもそも「カテゴリー」の定義は何なのか
松本:今日は、田岡さんの書籍『急成長企業だけが実践するカテゴリー戦略 頭に浮かべば、モノは売れる』の内容を踏まえて、カテゴリー戦略についていくつか質問をさせて下さい。

カテゴリー戦略に関する松本さんの疑問
1.そもそも「カテゴリー」とは?
2.カテゴリー名をシンプルに表現しつつ、独自性も示したい。どうバランスを取る?
3.必ず新カテゴリーである必要はあるのか、既存カテゴリーではなぜダメなのか?
4.カテゴリー戦略とブランド戦略の関係性、優先順位は?
5.カテゴリーの創造者がNo.1でいられるとは限らない?
松本:さて、「カテゴリー戦略」への関心が業界で高まっていますが、そもそも「カテゴリーとは何か」という大前提が飛ばされがちだと感じていました。カテゴリーとは業界なのか、界隈なのか、それとも消費者の頭の中にあるくくりなのか。田岡さんはどのように考えていますか?
田岡:カテゴリーとは何なのか、という定義の話だけで今日の対談が終わりそうなくらい、奥が深く難しいテーマですよね。「カテゴリー」は元々分類学で説かれており、その後、認知心理学、認知言語学の領域にも広がっていきました。
長くなるので根源はさておき、近年の経営・マーケティングの文脈に落とすと、「カテゴリー=お客様の頭の中にあるもの」と私は定義しています。業界、マーケット、界隈など似た意味を持つ言葉は他にもありますが、カテゴリーは「あくまで顧客目線である」という点で異なります。

松本:たしかに、企業目線と消費者目線のカテゴリーは本来一致するはずですが、ズレが生じることもあります。企業目線でカテゴリーを考えるのではなく、消費者の頭の中を出発点にしてカテゴリーを創っていく。田岡さんは、これが重要と考えているわけですね。
田岡:おっしゃる通りです。企業が見ている「マーケット」と、顧客が思い浮かべる「カテゴリー」は一致しているべきですし、仮にどちらかを優先するなら、購買行動の源泉となる「顧客の頭の中」を重要視すべきである、と考えています。
顧客目線でカテゴリーを認識できていないケースは、意外と多くあります。たとえば、経営やマーケティングにおいて、自社の市場規模を算出する時も、「そのようなマーケットは本当に存在するのか」「いくつかのカテゴリーを総称して、なんとなくマーケットと呼んでいるだけではないか」といった視点を持つことが重要で、意外とこれができていないケースが散見されるように思います。