カテゴリー戦略は、顧客視点の市場戦略である
松本:書籍の中では、カテゴリー名をシンプルに表現することの重要性にも触れられていました。 カテゴリーNo.1を目指すには「要は何屋か?」が一瞬で伝わるだけでなく、独自性も伝わらなければならない。このバランスに苦戦しているマーケターは多いと思います。田岡さんはどうアドバイスしますか?
田岡:私も10年近くマーケティングに携わっていますが、四苦八苦する部分です。シンプルでありながら独自性のあるカテゴリーを創出するには、顧客の潜在課題をしっかり掘り下げることが重要だと思います。
その際、まず行うべきは、自分たちの独りよがりな仮説や想像を広げるのではなく、顧客のファクトを見ること。その後に、時代や社会の変化に伴う不満、トレードオフ的に解決を諦めている課題、業界構造のゆがみなど、新しいカテゴリーが生まれやすいポイントに着目し、潜在課題を言語化していくことをおすすめしています。
松本:まさに聞いてみたかったポイントなのですが、潜在課題の発見は重要である一方、既存のカテゴリーでも、潜在課題を解決するプロダクトは生まれていますよね。既存のカテゴリーでも独自性の訴求はできているはずです。必ずしも新しいカテゴリーを創造する必要はないのでは、という疑問にはどう答えられますか?

田岡:そうですね、「潜在課題に対して新しいカテゴリーを創造するべきだ」とまで一概に言うことはできません。ただ、特に既存カテゴリーがレッドオーシャン化している場合は、新しいカテゴリーを創造することで、価値が浸透しやすく、不毛な競争を避けることができます。カテゴリー戦略の意義は「不毛な競争からの脱却、新たな価値の創造へのシフト」にあります。
既存カテゴリー内で独自性を出したい時、マーケティングでは「コンセプト」を打ち出していきますよね。コンセプトは「他と何が違うかを示すこと」が重要ですが、カテゴリーは「コンセプトを新たなスタンダードとして顧客やステークホルダーとともに浸透させていくこと」です。こう言語化すると、カテゴリー戦略の本質が理解されやすいと、私も最近気づきました。
松本:なるほど。カテゴリーはParityで、コンセプトはDifferenceだと考えているので、非常に共感します。