若年層だけの潮流ではない!ブームから浸透の段階へ
MarkeZine編集部:トキ消費の傾向について、もう少し詳しく教えてください。伺ってきたトキ消費の背景を踏まえると、若年層のほうがトキ消費の傾向が強そうですが、実際はどうでしょうか。
夏山:たしかに、当初は20代の若年層がトキ消費の潮流をリードしていたのですが、最近は年代による差が縮まってきています。
先にも少し触れた通り、トキ消費は音楽イベントをはじめとするエンタメ・コンテンツビジネスから広がっていきました。若年層でトキ消費の傾向が強かったのには、これも要因としてあるでしょう。しかし最近は、様々な業種業態にもトキ消費が広がってきています。一般の消費財や企業のプロモーション、キャンペーンなどにもトキ消費の概念が反映されるようになっており、必ずしも若年層間だけの潮流とは言えなくなってきているのです。
こうした現象から、トキ消費はブームを経て、浸透の段階へと移り変わってきていると考えています。

トキ消費は、コロナ禍でむしろ広がった?!
MarkeZine編集部:次に気になるのがコロナ禍前後での変化です。
夏山:コロナ禍を経てトキ消費の形態にも少し変化がありました。というのも、消費に関する生活者調査(毎年7月実施東名阪20~69歳男女1,500人インターネット調査)のデータを見ると、「トキ消費の流行実感度」のスコアが2020年頃に急激に上がったのです。

MarkeZine編集部:「その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ消費」=トキ消費なので、コロナ禍では流行の実感が難しそうですが……。
夏山:私たちもなぜスコアが急増したのか疑問に思い、あわせて聴取している自由回答を詳しく分析してみました。すると、コロナ禍で一気に浸透したオンラインイベントの利点について言及している方が多く、たとえば子育て中の親御さんが「オンラインイベントなら(夜でも)参加できる」と回答していたり、「遠くのライブ会場だと参加できなかったが、オンライン配信なら参加できる」といった回答も見られたりしました。
また、コロナ禍で進んだオンライン化で投げ銭やチャット機能など生活者が参加できる機能も一気に増えました。これまでトキ消費のような楽しみを諦めていた人たちにとっては、実はコロナ禍で敷居が下がった部分もあったのです。