雑誌マーケットの縮小がECに波及
「市場環境がガラリと変わった」。大森洋平マーケティング部長ブランディングディレクターは、現状のファッションEC市場をこう指摘する。
小学館、主婦の友社、集英社、講談社などが発行する女性向けアパレル雑誌と連携し、雑誌で掲載されている商品をECで販売。売上高が100億円近い規模まで引き上げた。だが、ネットの普及による出版不況で雑誌のマーケットは縮小。雑誌を手に取る女性読者が減少し、経営の根幹を揺るがしつつある。
「雑誌に載っているコーディネートを参考にして当社を利用する消費者が多かったが、今の女性は違う」(大森氏)というように、雑誌のモデルが着用するファッションを、「MAGASEEK」で買い求めるという消費行動は変わりつつある。
雑誌で消費ニーズやトレンドなどに応じた企画や特集を組んでも、消費者の財布の紐は固い。大森氏が「個人のコーディネート能力が高くなってきた」と指摘するように、ネットなどの情報を掴んでユーザー自身が独自にコーディネートをアレンジする傾向が強まってきているという。また、創業から12年という時間の経過も影響。中心顧客である28~32歳代の女性が「MAGASEEK」を卒業することによって引き起こす、サイト離れも少なからず影響しているようだ。
時代の変化が改革を後押し、今が「第2創業期」
「第2創業期」。マガシークが現在進めている新たな取り組みを、大森氏とマーケティング部 Webマーケティングスーパーバイザー・石川森生氏はこのように考えている。
「ファッション市場は右肩上がりの成長率を示しているが、(マガシークは)マーケットの伸びに追いついていない」と指摘する。
こう危機感を抱く2人は11年の中途入社で、前職は広告代理店、コンサルティング企業。これまでのマガシーク内の既成概念にとらわれない発想で、新生マガシークの誕生に向けたマーケティングなどを担当している。
「magaseekからMAGASEEKへRe:birthします~あなたにとって『最高』で『最幸』のファッション通販サイトへ~」。12年9月、マガシークはサイトやCI(コーポレートアイデンティティ)を大幅にリニューアルした。この刷新にはマガシークが抱える数々の課題を解決するための秘策が込められている。目指すのは「雑誌連動ファッションEC」から、「新コンセプトファッションEC」だ。
新たに掲げたサイトコンセプトは「マガシークは、自分のためのセレクトショップ」。競合他社とは明確に差別化を図るサイト構造やサービス設計を採用し、イメージは「豊富な品揃えの中で、いつでも着たい服が見つかる、自分だけのセレクトショップ」(石川氏)。将来的には消費者にこんな気持ちを抱いて欲しいのだという。
従来は「いわゆる赤文字系雑誌のイメージが強く、若い女性向け」(大森氏)だったサイトイメージを、黒や白を基調としたシンプルな雰囲気のイメージに変えた。悪く言えば特徴がないと言えるが、大森氏曰く「先ずは誰にでも受け入れられ易いエイジレス・ジェンダーレス・ボーダレス・カテゴリーフラットなサイトを目指し、無印良品のようなオールターゲットブランドに近い思想でサイトもCI(コーポレート・アイデンティティ)もVI(ビジュアル・アイデンティティ)も全て再構築した」。
サイトトップ画面は、カテゴリーなどを意識せずに、女性向けファッションや男性向けアパレル、アクセサリーや時計などの商材が数秒ごとに入れ替わる。「ウィンドウショッピングをするような感覚」(石川氏)を意識したサイト作りで、これまでの中心顧客だった28~32歳代の女性以外の女性や、数年前より力を入れている男性顧客を取り込もうとする意図が汲み取れる。