制限の中でどうするか? 運用担当の苦労と対策
編集部:前半ではアカウント運用の目的などを伺いました。では、運用にあたって難しさを感じる場面や、工夫していることはありますか?
JWT杉本:サンリオさんにとってキャラクターの世界観を守ることが重要なように、ビッグリンカーンも完全に自由にキャラクター設定ができるわけではありません。リンカーンが実在する人物なので、イメージがある程度固まっているんです。それに、自治体を代表するキャラクターなので、その点の考慮も大切です。
例えば、ゆるキャラの運動会に出場するとして、ビッグリンカーンが走るのはいいけど転ぶのはNGという決まりがあります。でもああいうイベントって、キャラクターのちょっとした失敗が可愛かったり面白かったりして、注目を集めることもあるんですよね。
コーセー小林:ツイートはすべて先方の許可が必要なんですか?
JWT杉本:イベント中のリアルタイムツイートは、比較的自由にやれています。でも、基本的なコンテンツカレンダーは、本国の承認をとっています。だから、Twitterのツイート内容にしても他のプロモーションにしても、本国にいろいろな案を出すんですが、日本と米国の感覚の違いもあり、ボツになることも多いんです。
そのため運用が難しい側面はありますが、とにかくできるだけ多様な提案をしています。そして、本国と我々お互いの価値観や意図を擦り合せることが大切だと思っています。
FHJ井土:大統領という設定と州からの依頼で、リツイートに制限があることもハードルですね。でも、日本との外交も大きなテーマなので、他のキャラクターとも積極的に関わりたいと思っています。
サンリオ田口:井土さんが仰るとおり、Twitterの良さの一つにアカウント間でのやりとりがあると思います。ですが、弊社では異なるキャラクター同士が同じタイムラインに出ることに関して保守的な部分があります。というのも、各キャラクターの世界観をとても大切にしているので、それらが不用意に混ざり合わないよう慎重に対処しなければなりません。それと、弊社の場合、ライセンス事業との兼ね合いなどビジネスサイドでの中立性にも配慮が必要になりますね。
避けて通れない属人化問題、その対策とは?
サンリオ奥村:これは運用上の悩みですが、キャラクターアカウントのツイートでは必ず絵か写真がつきます。かつ、世界観にこだわりがあるので、外注が難しいんです。すると属人化してしまい、担当が倒れるとキャラクターも倒れる、というリスクもあります。そこで、ある程度作り置きして運用するのですが、それだけだと面白くなくなるので、その時々の旬のものも取り入れて、変化をつけて、バランスよくやっていくというのがテーマになっています。
おはよう、シナモンだよ♪ひんやりしてきたからマフラーを出したよ。おしゃれな巻きかた、教えてほしいな。 pic.twitter.com/t8ldTKGDVb
シナモン【公式】 (@cinnamon_sanrio) 2014, 10月 16
ちなみに、スケジュールの立て方はアカウントの担当者ごとに違います。私は月次単位で用意しています。絵は既にあるものを使う場合もありますが、季節のイベントや急遽頼まれたものなどは描き起こすので、スケジュールがタイトになることもあります。
コーセー小林:属人化の問題は確かにありますね。SETSUKOは運用担当者をツイート内容で分けてます。キャンペーンやアド関係は代理店さんにお願いして、通常のツイートは社員が一人で行なっています。というと驚かれるんですけど、女性社員が多いので彼女たちの面白そうな行動を見つけてツイートできます。ですから、ネタには困らないですね。
ただ、サンリオさんと同じく、普段の担当が一人だけというのはリスクです。なので、担当がいつ異動になっても継続できるように、SETSUKOの設定は履歴書のように細かく決めています。趣味とか年齢とか婚活中であるとか……。これはアドを担当している代理店にも共有しています。