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Phybbit×アドイノベーションに聞く、巧妙化進むアドフラウドの実態

 これまでPCを中心に行われていたアドフラウド(不正広告)の影響が、モバイルやアプリ広告にも及んでいる。インストールの成果データを盗む、実体を伴わない架空のインストール数を水増しするといった、巧妙かつ悪質な手口にどのような対策をするべきか。アプリマーケティングを支援するアドイノベーションとAIを搭載したアドフラウド対策ツールSpiderAFを開発するPhybbitの担当者に、最新のアドフラウド対策について話を聞いた。

アプリ広告の健全化に取り組む2社

――まずは、お2人の自己紹介からお願いします。

細川:アドイノベーションの細川竜馬です。弊社はアプリベンダー様を中心に、スマートフォンアプリに特化したマーケティング支援を行っています。

 また、2017年7月に、イスラエルの企業Tapticaと資本業務提携を結び、日本国内における同社のモバイルDSPの販売も行っています。

株式会社Phybbit 代表取締役社長 大月 聡子氏アドイノベーション株式会社 執行役員 メディア事業部 部長 細川 竜馬様
株式会社Phybbit 代表取締役社長 大月 聡子氏
アドイノベーション株式会社 執行役員 メディア事業部 部長 細川 竜馬様

大月:Phybbitの大月聡子です。Phybbitは、AIを搭載した「SpiderAF」というアドフラウド対策ツールを開発し、広告主やアドネットワーク運営企業・メディアといった幅広いクライアントへ提供しています。

 SpiderAFは、ご担当者が最小限の労力で最大限アドフラウドを検出できるようにすることをミッションとし、新たにスマートフォンアプリ広告向けのアドフラウド対策サービス「SpiderAF for app」をリリースしました。開発にあたっては、アドイノベーション様にもご協力いただいています。

2017年に高まったアドフラウドへの危機感

――2017年は、広告主が広告の透明性向上を訴えたスピーチや大手媒体によるアドフラウドに関する報道をきっかけに、業界全体でアドフラウドへの関心が高まった年でもありました。あらためて、現在のアドフラウドの状況について教えてください。

細川:2017年あたりから、グローバルでアドフラウドを仕掛ける集団が、日本国内を狙っているのではないかという傾向がありました。

 特に日本のアプリ市場は大きく、収益性の高いユーザーが多いことから、広告主は高い獲得単価で出稿しています。しかし、アドフラウドへの対策は全体的に遅れていました。

 そのため、広告主のアドフラウドへの危機感はここ1年で非常に高まっており、「アドフラウドにどう対策していますか」とお問い合わせをいただくことも増えています。

大月:アドフラウドの手口は巧妙化していますが、PCでは主流である従来のクリックを大量発生させる手法も根強く残っていますね。アドフラウド業者の数も増えている印象を受けます。

 アプリ広告を狙ったアドフラウドの手口は、成果データを盗み効果測定ツールをだますタイプと、人工的にインストールを大量発生させるタイプの大きく2つに分けられます。

アプリへのアドフラウド、主な手法を一挙解説

――成果データを盗むタイプのアドフラウドとはどういったものなのでしょうか。

細川:成果データを盗むものにも2つの種類があります。1つは、インストールハイジャックと呼ばれるもので、アプリ広告の効果測定ツールの機能を深く理解し、スキを狙って自然流入や正規の広告経由の成果データを盗むものです。

 Android端末の場合、アプリストアにアクセスした情報を他のアプリでもキャッチできる仕様になっているようで、これを悪用していると思われます。ユーザーがマルウェアと気づかずにインストールしたアプリを起点に、発生しているケースが多いですね。

大月:もう1つは、マルウェアに感染したアプリなどによるクリックフロードと呼ばれるものです。アプリの起動とともに大量の広告クリックを発生させることで、ユーザーが後でインストールすると効果測定ツールが広告による成果と勘違いしてしまうのです。

――人工的にインストールを発生させるアドフラウドは、どのように行われているのでしょうか。

細川:不正にインストールを大量発生させる「インストールファーム」という手法です。主に人力とBotによって行われ、人力の場合は大量の端末を用意し、ストアからのインストールを地道に行います。一通り実施したら、端末のOSをリセットすることで、再度カウントさせることもできてしまいます。

 Botの場合は、広告効果を測定するSDKに情報を送ることで、疑似的なインストールを大量発生させるものになっています。

――人力でインストールするのは、手間の割に合わない印象を受けるのですが、そんなことはないのでしょうか。

細川:先述のように、日本のユーザーは収益性が高いためインストール単価は上昇傾向です。高いものだと1,000円を超えます。

 また、人力の場合不正が発覚しづらく、効果測定ツールのベンダーも対策を進めていますが、それに合わせてアドフラウド集団の手口も巧妙化するため、いたちごっこ状態となっています。

「これは不正かも?」アドフラウドに気づくコツ

――続いて、アドフラウドだと気づくためのポイントを教えてください。

細川:わかりやすいのは、インストール後にアプリが起動されないという現象です。たとえば数百レベルでインストールが発生しているのに起動しているユーザーがいない、もしくはすべて1度だけ起動されて以降変化がない場合、怪しいですね。

大月:「IPアドレスが日本国外ではないか」「端末が国内販売されていないものではないか」「OSのバージョンが古過ぎないか」などの傾向もウォッチすべきです。日本の方の多くは最新のOSへアップデートする傾向がありますし、iOSのシェアのほうが高い。国内の平均的なスマートフォンの利用環境と大きく外れていると、アドフラウドではないかという可能性が高まります。

細川:あと、一番わかりやすいのは言語設定ですね。国内のアプリで広告のクリエイティブも日本語なのに、英語設定の端末から多くアクセスがあったというケースもとても怪しいと思います。

――アドフラウドかどうか、どのように判断すべきでしょうか。

細川:これまで挙げたポイントをもとに、総合的に判断することが重要ですね。他にも、人力で行うファーム系は並べた端末で作業をする分、まとまった時間帯にアクションが集中しますし、前日のパフォーマンスに比べ急激に伸びているのに、起動がないなども注視するポイントです。アドフラウド自体に物的証拠はありませんので、状況証拠を積み重ねて判断しています。

SpiderAFで誰でも不正を特定

――ではあらためて、Phybbitとアドイノベーションが一緒にアドフラウド対策に取り組まれた理由を教えてください。

細川:以前から私たちは独自にインストールデータの分析を行い、アドフラウド対策を進めていました。しかしログデータをもとにエクセルでレポートを作成し、不自然なデータを指摘して、統計的な観点で判断をするという一連のフローは、コストと時間がかかり過ぎていたんです。

 そのような状況でSpiderAFを知る機会がありまして、その機能と私たちが手動で行っている対応が似ていることに気づいたのです。ならば一緒に開発をしましょうという話になりました。

大月:元々SpiderAFはWeb向けのサービスが先行しており、アプリ向けを開発中というタイミングで、今回の取り組みがまとまりました。アドイノベーションさんが持つモバイル広告の知見やアドバイスをいただいたおかげで、一層アプリ向けの機能が充実したと思います。

――SpiderAFを導入し、どのような成果が得られていますか。

細川:SpiderAFのコンセプトである、怪しいものを可視化し客観的な証拠として作り上げるという仕組みを取り入れられたのは大きいです。

 さらにツールを導入したことでアドフラウド対策への高いノウハウが標準化され、誰でもアドフラウドを検出し、次のアクションが取れる体制を整えられたことが素晴らしいですね。やはりログデータのみでは、アドフラウドの判断が属人的になってしまいますから。

不正に関わる項目を細かにスコアリング

――SpiderAFの具体的な機能を教えてください。

細川:SpiderAFでは利用者が配信しているアドネットワークごとにレポート生成をし、アドフラウドと見られるデータがないかスコアリングしています。配信先のどの面のデータが疑わしいか追える上に、スコアをもとにアドフラウドかどうかも判断しやすいのが特徴です。

ダッシュボードのイメージ:クリックで拡大

大月:ダッシュボードでは、スコアの他にインストール件数、データセンター経由の有無、端末の種類などが確認できるようになっています。疑わしい部分は色が変わるなど、アラートのサインが出るようにしています。

 ラストクリックから初回起動までの時間を確認し、インストールファームやハイジャックやフローディングの判定に役立てております。また、端末情報や言語設定やOSのバージョンを見て、現在の日本のアプリ市場における分布との乖離を比べ、Botや海外のスプーフィング(なりすまし)や一見正常に見える不正インストールを弾いています。

業界全体で対策強化を

――広告配信先であるメディアとは、どのような連携を取られていますか。

細川:以前から取り組んでいたアドフラウド対策に、SpiderAFを導入し、エビデンスとして活用していくことを伝えています。前もって、どの基準を超えたらアドフラウドと見なすかという運用基準を共有し対策を進めているところです。

 最近では海外事業者が運営するアドネットワークへ出稿するケースもありますので、一層メディア側との協力は必要になるかと思います。

――最後に、今後の展望やアドフラウド対策として取り組みたいことを教えてください。

細川:広告主・メディア・広告代理店と、ネット広告に関わるすべてのステークホルダーへ、共通の理解や知識を共有できるように働きかけたいですね。このままネット広告市場の信頼性が低くなってしまうのは避けねばなりません。

 各社が協力をしてアドフラウドの撲滅に取り組めるようなサポートをしたいです。そのファーストステップとして、広告測定ツールの機能と併用できるSpiderAFを活用したご支援ができたらと考えています。

大月:アドフラウド対策で難しいのは、関係各社が足並みをそろえて対応しなければならない点です。不正とはいえ、クリックやインストールが多く見えますし、獲得単価が下がるので問題ないと判断する企業も、もしかするといるのかもしれません。しかし、それは確実に間違っています。

 アプリ広告のKPIの見直しなど、マーケティング活動そのものに関わってくるのがアドフラウド対策です。業界全体の意識が変わるような働きかけを、アドイノベーションさんをはじめ様々なパートナーと行いたいと思います。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/04/24 10:00 https://markezine.jp/article/detail/28197