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TikTokのオフラインへの成果は? 電通デジタルとGroundTruthが店舗誘導効果を可視化

 大手外食チェーンがTikTokキャンペーンを展開、そのKPIを来店効果に設定し、精緻な計測を実現した。オンライン広告のオフラインへの成果を可視化した取り組みだといえる。TikTok Adsの岩田幸也氏と電通デジタルの辻本裕也氏、GroundTruthの安里勇吾氏にどのような仕組みで計測し、どんな成果が得られたのか話を伺った。

オンラインからの送客を実店舗の来店で計測

MarkeZine編集部(以下、MZ):来店計測を行ったキャンペーンでは、どのTikTok広告メニューを活用されたのでしょうか。

岩田:主に「#(ハッシュタグ)チャレンジ」をご活用いただきました。TikTok内で“お題”と専用のハッシュタグを設け、ユーザーはお題に則った動画を、ハッシュタグを付けて投稿するというものです。顧客企業様には、お題に使う音源やスタンプをご提供いただきます。

TikTok Ads プロダクトストラテジーオペレーション 本部長 岩田幸也氏
TikTok Ads プロダクトストラテジーオペレーション 本部長 岩田幸也氏

MZ:施策の成果として、なぜ来店効果を可視化することになったのでしょうか。

辻本:デジタル広告が主流になりつつあるなかで、顧客企業からは認知や理解だけでなく、購買や来店をKPIとしたいというニーズが高まっています。しかし、購買に関してはPOSデータを開示してもらうことは難しいので、その一歩手前の来店が重要な指標だと考えました。そこで今回、我々電通デジタルTikTok Adsさん、位置情報マーケティング企業であるGroundTruthさんの3社で協力し、来店分析をすることにしました。

電通デジタル プラットフォーム6部 ロケーションマーケティンググループ 辻本裕也氏
電通デジタル プラットフォーム6部 ロケーションマーケティンググループ 辻本裕也氏

安里:これまではオフラインの指標である「訪問」を計測するのは非常に難しいという状況にありました。しかし、スマホが浸透してそれほどコストをかけずに位置情報が取得できるようになったことと、我々が持つ特許技術「Blueprints」によって、かなり精緻に来店を計測できるようになりました。我々としても、TikTokのようなプレミアムメディアで配信した際に、オフラインでのインパクトはどれくらい出るのかというのは非常に興味がありました。

GroundTruth Japan Head of Japan 安里勇吾氏
GroundTruth Japan Head of Japan 安里勇吾氏

UGC動画の来店計測に着手

岩田:TikTokの広告メニューにタグを貼って来店計測をするだけでしたら、他でもやれるところはあると思います。しかし今回はUGCを投稿した人と、それを見た人がどう動いたかというのも可視化できました。他にTikTokでの広告メニューとして、インフィード広告やアプリの起動時に表示される起動画面表示広告、アプリ内バナー広告なども出稿していたのですが、すべての成果を計測しました。全世界のTikTokでも、これまで来店計測に着手することは、なかなかありませんでした。

 動画はテキストや画像よりも圧倒的に訴求力が高く、共感性も高くなりますし、その広告効果は絶対に結果として現れるはずだと思っていました。ですので、その成果を可視化できたことは、非常にありがたかったです。

MZ:日本はそうした施策で後発になる場合が多い状況です。今回、来店計測を実施することができたのはなぜでしょう。

岩田:当然、他の国でも弊社はトラッキング施策をやっているのですが、広告市場自体が日本はアメリカに次いで2番目に大きいので、顧客企業様の求めることがより高度化しています。

安里:弊社の本拠地であるアメリカでもプレミアムメディアでの訪問計測の可視化はまだやっていないので、本当に先進的なことだと思います。なぜかというと、アメリカでは、基本的にプレミアムメディアは、データをサードパーティに共有しないんですよ。特に、プラットフォームを持つメディアはそういう傾向が強い。そういった中で、プラットフォームも持つTikTokが、この新たな領域にチャレンジしているのは、市場的にも非常に大きな意味を持ちます。

正確性を高めるサンプル作りと精緻な位置情報データ

MZ:具体的な来店成果の可視化の方法とは?

安里:キャンペーン期間中とその後の14日間で計測を行いました。我々がSVL(Store Visitation Lift)と呼ぶ指標を用い、広告の接触者と非接触者のアップリフトの差異を確認しました。というのも、日常的に来店している人にたまたま広告が当たっていても、広告の効果があったとはいえません。そこで我々はリフトの差異を見るようにしています。

 ここでこだわっているのは、サンプルの作り方です。単純に非接触者をこのキャンペーンの広告を見なかった人と定義してしまうとあまり正確なデータにならなくなってしまうので、接触者と似たような人に非接触者のサンプルを合わせています。そこはTikTok Adsさんにご協力いただき、属性を合わせた上でリフトを見ているので、かなり精度の高い数字になっていると思います。

MZ:先ほど、位置情報の取得にGroundTruthの特許技術を使われているというお話がありましたが、どういったものになりますか。

安里:一般的な来店計測では、計測する建物から円を描いて、半径何メートル以内に入ったか否かで調べます。しかし我々のBlueprintsでは、建物の形状に合わせた境界線データを保有し、その中に入ったか否かで見ているので、より正確な来店数を計測できます。実際に弊社で検証したデータでは、半径50mの円で設定したデータとBlueprintsのデータを照らし合わせたところ、前者の91%が実際には来店していない結果が出ました。

約37%増の来店リフト効果

MZ:キャンペーンの計測から、どのような結果が出ましたか。

岩田:「#チャレンジ」のコミュニケーションに接触したユーザーは、約37%増の来店リフト効果を確認できました。

安里:広告メニュー接触別に来店リフト率を見ると、広告接触をした人で約45%、UGC接触をした人も約33%の来店リフトがあるという驚きの結果が出ました。

岩田:来店までの期間を計測したところ、動画に接触してから24時間以内に来店する人が最多でした。初日の接触傾向を詳しく見ると、接触後1時間以内に来店する人が最も多く、欲求を喚起することができたと想定されます。

辻本:今回の施策を行った外食チェーンは、若者に行きやすいお店だったということも効果につながったと思います。顧客企業様からも、興味深い結果が出たと好評でした。

若年層との重要なコンタクトポイントに

MZ:短時間で成果に結びついたポイントはどういったところにあったのでしょうか。

岩田:やはり動画の力は大きいのですが、TikTokはデフォルトでサウンドオン、フルスクリーンなので、より訴求しやすいということがあるでしょう。

MZ:顧客企業の商材やターゲットによって、相性といったものはあるのでしょうか。

辻本:やはり配信面との相性はあると思います。若年層が多いTikTokのユーザーと商品がマッチするもののほうが、より効果は出やすいでしょう。

MZ:顧客企業のなかには、テレビで取りきれない層を取っていきたいという考えもありますか。

辻本:はい、そこは顧客企業のニーズがあるところです。テレビCMはその圧倒的なリーチ力から、これまで顧客企業のブランド認知向上を主目的に利用されてきました。しかしながら、若年層においては、テレビの視聴時間が減少傾向にあるという事実はあります。そこで、テレビではなく動画媒体を見ている若者に対して、TikTokでリーチしていくというのは、非常に重要なことだと思っています。実際、今回の計測でも、テレビCMとTikTokとの重複接触で送客を高める結果も確認できています。

さらなるデータ連携で新たな可能性を

MZ:今後は、TikTokとデータ連携をして、どういったご提案をされていく予定ですか。

辻本:今回、電通デジタルはTikTok Adsさんとメジャーメントパートナーという形でこの取り組みを行いました。TikTokキャンペーンのインプレッションログを、電通グループが提供する統合マーケティング・フレームワーク「People Driven DMP」に連携しました。People Driven DMPのユーザーデータとTikTokのデータを掛け合わせることによって、広告接触のユーザーと非接触のユーザーを可視化できるようになったわけです。今後、GroundTruthとTikTokの配信面をPeople Driven DMPと連携することによって、GroundTruthからTikTokに対して広告出稿をできるようにします。これによりPeople Driven DMPとの連携も深めていきます。

安里:我々のシステムでは様々な種類のターゲティングができるのですが、それをそのままTikTok上でできるようにしていくということです。たとえば、「Neighborhoods(ネイバーフッズ)」という弊社が持つ特殊なターゲティング技術で、店舗の商圏にいる人に自動的に広告配信をすることもできるようになります。

岩田:そうすると、たとえばカラオケに月に2~3回行っている人に対してボウリングなどのアクティビティを訴求するとか、サッカー場に来ている人に対してスポーツ飲料を訴求するということもできるようになります。こうした連携によって、広告の効果測定から先のことがどんどんできるようになっていきますので、より多くの顧客企業様にTikTokをご活用いただけるようになっていくかと思います。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/06/26 17:02 https://markezine.jp/article/detail/32204