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KPI比489%の成果も TikTok広告におけるインフルエンサー活用の最前線

 TikTokユーザーに広くリーチすることができる手段として注目されているのが、インフルエンサーの起用。TikTokの広告メニューと組み合わせて展開することで成果を上げている企業も出てきている。TikTokで100万以上のフォロワーを抱える人気インフルエンサーのミスターヤバタン氏を起用したキャンペーンを展開したのが、ドミノ・ピザ。KPIに対し489%の成果も記録したという。ドミノ・ピザ ジャパンの小山魁理氏とTikTok Adsの南部歩氏、そしてヤバタン氏本人にインフルエンサー施策のポイントと成果を伺った。

インフルエンサーの親近感を広告でも

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回のキャンペーンの目的と、TikTokを活用することになった背景をお聞かせください。

小山:「ニューヨーカー 1キロ ウルトラチーズ」という商品を2019年6月に期間限定メニューとして発売しました。お客様からまた販売してほしいとの声が多く、2019年の9月に再販をした際のキャンペーンにTikTokを活用しました。

 動画は、テキストや写真の5,000倍の情報量があるとも言われていますし、ドミノ・ピザの商材、ビジネスとも非常に親和性も高いと感じておりました。また、TikTokというプラットフォーム自体に興味を持ってもいましたし、TikTok Adsを活用することで何よりユーザーの“共感”を生むことができ、よりエンゲージメントを高めることができるのではないかと思っていました。

株式会社ドミノ・ピザ ジャパン デジタルマーケティング部/シニアスペシャリスト ソーシャルメディアマネージャー 小山魁理氏
株式会社ドミノ・ピザ ジャパン
デジタルマーケティング部/シニアスペシャリスト ソーシャルメディアマネージャー 小山魁理氏

MZ:活用したTikTokの広告メニューと、インフルエンサーを起用した理由を教えてください。

小山:インフルエンサーパッケージとインフィード広告を利用しました。インフルエンサー自身によるアカウントの投稿に加えて、より多くの新規顧客へのリーチを狙う目的がありました。インフルエンサーを起用したのは、我々が伝えたい“100%モッツァレラチーズを使用している”というメッセージは一貫していますが、テレビCMなどの広告とはまた違った形で、親近感や魅力をユーザーに伝えたかったからです。そこで、日頃からユーザーとの距離が近いコンテンツを届けているミスターヤバタン(@mr_yabatan:以下、ヤバタン)さんを起用させていただきました。ヤバタンさんがドミノ・ピザでアルバイト体験をし、「ニューヨーカー 1キロ ウルトラチーズ」を作って食べるという内容の動画を制作しました。

「ニューヨーカー 1キロ ウルトラチーズ」のイメージ
「ニューヨーカー 1キロ ウルトラチーズ」のイメージ

インフルエンサーキャスティングの2つのポイント

MZ:ヤバタンさんをキャスティングしたのは、どのような理由からでしょうか。

南部:弊社がインフルエンサーの方をご提案する際には、2つの点を意識しています。一つは、そのインフルエンサーさんのファンがどういった方たちなのかということ。もう一つは、その方が普段どういったコンテンツを作れるのかということです。ヤバタンさんは、性別や年齢問わず幅広いファンがついているので、ドミノ・ピザさんの顧客層と合っているのではないかと思いました。また、動画のストーリー展開がすごくお上手でつい最後まで見てしまうので、商品を魅力的にしっかりと方針に沿って伝えてもらえるという点でも、うまくマッチするのではないかと考えました。

TikTok Ads ブランドアドソリューションディビジョン クライアントパートナー 南部歩氏
TikTok Ads ブランドアドソリューションディビジョン クライアントパートナー 南部歩氏

小山:個人的にヤバタンさんのことはTikTokで拝見して、存じ上げていました。コンテンツがおもしろくて、誰でも理解しやすい情報伝達力や、長尺でも見せるスキルを持っていらっしゃるなぁと思っていて。ユーザーとの距離が近いのも、ものすごくいいですよね。

MZ:ヤバタンさんのプロフィールについてご紹介ください。

ヤバタン:日本で活動するコメディアン・動画クリエイターで、最近はテレビにもけっこう出ています。私はノルウェー人ですが元々日本が好きで、24歳のときにワーキングホリデーで来日しました。日本人の感覚に特化した笑いを意識しています。

 SNSはInstagramから始め、2017年12月に投稿したイルミネーション動画がTwitterで大ブレイクしました。TikTokは1年ほど前に始めたのですが、現在のフォロワー数は100万を超えて、他のSNSと比べても一番多くなっています。TikTokはフォロワーが増えるのがすごく速くて、びっくりしました。

ミスターヤバタン
ミスターヤバタン

実際のクルーとの自然なやりとりを撮影

MZ:動画はどのように制作し、どういった点を工夫されたのでしょうか。

南部:まず、ヤバタンさんのいつもの投稿や動画でのキャラクターを踏まえて、弊社でおおまかなストーリーボードを作りました。TikTokユーザーの関心事や響くポイントは常に弊社で研究していますので、そういった要素も盛り込んでいきました。それをヤバタンさんにご確認いただきながらすり合わせをしています。具体的なセリフ回しや表現は、ヤバタンさんらしさが出るようにお任せしています。オチの部分も何パターンか撮影しました。

ドミノ・ピザでアルバイト体験したヤバタン! 投稿動画はこちら

小山:弊社からは、チーズのシズル感と、100%モッツァレラチーズを使っていることの2つを、徹底的に伝えたいとお願いしました。それ以外は、あえてお願いしていません。あまりいろいろ指示をしてしまうと、普段のヤバタンさんらしさが出てこなくなってしまうという懸念があったからです。私も撮影に立ち会ったのですが、ヤバタンさんが楽しそうに撮影できているかとか、クルーとのコミュニケーションはうまくいっているかというのを見るようにしていました。皆さん、終始すごく楽しそうでしたね。

MZ:出演しているのは、実際に働かれている方なのですか?

小山:はい、本物のクルーです。

南部:ヤバタンさんの過去の動画でも、他のお客さんや店員さんとのやりとりがすごくおもしろいので、今回も店員さんを何名かアサインできないかとお願いしました。また、実際の店舗での撮影ということもあり、機密情報の映り込みがないかなどはかなり気をつけました。

MZ:動画制作や撮影において、ヤバタンさんがこだわった点はありますか。

ヤバタン:1分という短い時間の中で起承転結をつける構成、最後のオチに商品のポイントであるのびるチーズのインパクトを持ってくること、クルーとのやりとりでナチュラルな雰囲気を出すことなどを重視しました。動画を見た後に、ピザを食べたい気持ちになったでしょ?

南部:「ニューヨーカー1キロウルトラチーズ」という商品名を聞いて、「長〜い!」というリアクションがおもしろかったです。

ヤバタン:ただの商品説明も、リアクションによっておもしろくなります。テンポや声のトーンも重要ですね。ヤバタンはわかりやい簡単な日本語を話している感じもウケているのだと思います。あと、今回の動画では、ピザを食べた後、「やばくない?」と一瞬素に戻るシーンがあって、そこについてコメントしている方も多かったですね。そういう“普通に出てきた言葉”も必要ですね。

KPI設定とブランドリフト調査

MZ:今回の施策のKPIは、どのように設定されましたか。

小山:KPIは完全視聴率とエンゲージメント率です。「ニューヨーカー1キロウルトラチーズ」を最初に販売した際のプロモーション時には、TwitterをはじめとしたSNSでも大きな反響を呼ぶことができ、メディアなどでも非常に大きく取り上げていただきました。ただ、その時は「1キロのチーズが乗ったピザ」というところが印象深く伝わりましたが、我々としては、「100%モッツァレラチーズを使っている」という点もあわせて伝えたいところだったので、そこをもっと上手く訴求したいと考えました。そのためには、動画を最後まで見ていただいて、商品についてより深く知っていただく必要がありました。また、日頃TikTokのコンテンツを見ている時と変わらない感覚で、いいねやコメントをいただけるのが理想的な形であると考えました。

MZ:ブランドリフト調査も行ったそうですが、その方法について教えてください。

南部:キャンペーン開始前に、広告を当てる「接触組」と広告を当てない「非接触組」という2つのユーザーグループを同じ条件で作成しました。広告キャンペーンが終わった後に、それぞれのグループに同じ質問を投げかけて、そのリフトの差を見ることによって、今回配信したキャンペーンがどのくらい効果があったのかを確認しました。

KPIに対し489%の成果

MZ:動画配信後のKPIに対する成果は?

南部:完全視聴率は目標KPIに対して235%、エンゲージメント率は目標KPIの489%となりました。ブランドリフトにおいては、広告認知は+167%、購入意向についても+48%という良好な結果が得られました。キーワード想起についても、今回打ち出したかったキーワードである「100%モッツァレラチーズ」や「チーズ1キロピザ」が強く想起につながっているという結果が数字にも表れました。

広告認知の変化
広告認知の変化

MZ:動画を見たユーザーからは、どのような反応があったのでしょうか。

小山:100%モッツァレラチーズを使っている、という我々のメッセージについても反応してくれているユーザーもいましたし、「広告だと意識せずに見てしまった」というようなコメントも非常に多く、まさにこれが私の思い描いていた反応でしたので、かなりの手ごたえを感じました。

ヤバタン:チーズに対するコメントも多かったですね。あとは、「ヤバタンかわいい」とか(笑)。

南部:チーズの質や量に対するコメントも多かったので、ヤバタンさんにフォーカスするだけでなく、しっかり動画を最後まで見てくれ、商品の魅力が伝わったなと思います。

MZ:売上にも変化があったのでしょうか。

小山:今回のコンテンツが実売にも直結してくれたこともあり、想定以上の実績を得られる形となりました。お店のクルーに話を聞いてびっくりしたのが、「ヤバタンピザをください」と言われるお客様がたくさんいらっしゃったことです。ヤバタンさんの動画が、様々な層のお客様に受け入れられた結果ですね。

世界観になじむ広告に率先して取り組む

MZ:ドミノ・ピザでは、今後どういった形でTikTokを活用していく考えでしょうか。

小山:今回、とてもいい成功事例を作ることができました。これからは、インフルエンサーやプラットフォームに“なじむ広告”が当たり前になっていく時代だと思います。これからも効果的に活用し、率先して取り組んでいこうと考えています。

MZ:TikTok Adsとしての展望はいかがでしょうか。

南部:広告主企業様にはTikTokは新しい媒体とか、ちょっと尖っている媒体に見えてしまい、なかなか取り組みづらいと思われるケースもあります。しかし今回のドミノ・ピザさんの事例で、しっかり設計さえしていけば、これだけ多くのユーザーに届き、売上にも寄与できる媒体だということを証明できたと思います。今後は、他媒体と連携した立体的なキャンペーンの展開や、公式アカウント運用を軸とした継続的なお取り組みにより広告効果の最大化についても一緒に取り組んでいければと思います。

MZ:最後にヤバタンさんから、インフルエンサーとしてPR活動の今後についてお聞かせください。

ヤバタン:フォロワー、ファンはとても大切な存在ですから、PR動画でもまずは見てくれている方々におもしろいと思ってもらえるものを作るのが自分のミッションです。ヤバタンの動画を通して、いろんな商品やサービスのよさを伝えていけたら嬉しいですね。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/06/26 17:04 https://markezine.jp/article/detail/32507