ポイントプログラムを活用し共感を生む:ケロッグ
消費財業界の例としてジョーンズ氏がまず挙げたのは、ケロッグだ。米国の消費財業界では、企業がその顧客とともに慈善活動を支援するケースが多く、その過程で生まれる共感が信頼の醸成につながっているという。
ケロッグでは、自社のロイヤル顧客のポイントプログラムを活用。コロナ禍によるロックダウンで解雇される人が増える中、困窮家庭へ食料を提供するフードバンクの活動に自社から寄付をした上で、顧客が有するポイントも寄付できるように対応した。直近のキャンペーンでは、顧客からの寄付は10万ドルを超えたそうだ。
消費財業界ではほかにも、様々な取り組みが生まれている。酒造メーカーのアンハイザー・ブッシュ・インベブは、ロックダウンによって卒業式の中止という憂き目にあった学生のために、バーチャル卒業式を開催。スターを招いてインタラクティブな体験を提供し、好意的に受け入れられた。このように消費者と直接つながり、ロイヤルティを高めた例がすでにいくつも生まれているのだ。
スワイプやタップ…スマホでの自然な行動でニーズを把握
ジョーンズ氏はさらに消費財業界のD2C事例やECの成長に触れながら、先進的なブランドは、COVID-19の発生以前から既に『顧客が誰であるか』を捉えようと動いていたと解説する。
「小売業者を介した商品販売に留まっていた過去に対して、今や消費財ブランドは独自のロイヤルティプログラムを導入し、マーケティングデータベースを構築し始めています。具体的には、消費者がスマートフォン上でごく自然に行うスワイプやタップ、チャットや撮影といった行動を通して、動機やニーズといったデータを直接得られるよう工夫を重ねているのです」(ジョーンズ氏)
明確な同意がない状態で、サードパーティのトラッキングクッキーやデータ購入を通じて消費者を“詮索”する行為は、長期的な関係構築においてマイナスだ。消費者は、自らデータを提供したつもりがないのに過度なパーソナライズが行われていることに、不気味さを覚える。その結果、自分のデータを利用しているブランドに対して不信感を抱いてしまうのだ。こうした点からも、ゼロパーティデータの取得と活用の意義が増している。
動画本編では、外食産業の取り組み事例も紹介しています。店舗の営業が制限される中でも、顧客とつながり続けるための仕組みとは?