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顧客起点のビジネスはどう実施する?インバウンドの思想を取り入れた成功事例(AD)

顧客体験の向上でコンバージョン率を最適化 「HubSpotブログ」に学ぶ、Webサイト改善の進め方

 役立つホワイトペーパーを用意してもコンバージョンに結びつかない。いい記事を自社ブログで配信し続けても、反応が乏しい。こうした悩みの原因は、自社サイトの体験が訪問ユーザーにとって適切でない、使いにくいものになっていることかもしれない。そんな課題を解決するのがCRO(Conversion Rate Optimization:コンバージョン率最適化)戦略だ。「CROは単にコンバージョン率を上げる活動ではなく、顧客体験を最適化してその結果ビジネス成長を実現するもの」と語るHubSpot Japan マーケティングマネージャー 室橋健氏に、HubSpot日本語ブログのCRO実践例とともに、改善施策を進めるうえでのポイントを解説してもらった。

CROとは「顧客体験を最適化する」こと

MarkeZine編集部(以下、MZ):本日はHubSpotのCRO(Conversion Rate Optimization:コンバージョン率最適化)戦略についてお伺いしていきます。まずは室橋さんのご担当業務と、「HubSpot日本語ブログ」におけるCROの役割について教えてください。

室橋:2020年5月にHubSpot Japanに入社し、現在はSEOや広告運用に加え、「HubSpot 日本語ブログ」におけるCROを担当しています。

HubSpot Japan Marketing Manager 室橋 健氏
HubSpot Japan Marketing Manager 室橋 健氏

室橋:HubSpotは「ビジネス成長を目指す人たちを支援する存在になる」というミッションを掲げ、それを実現するための一つの方法としてブログを活用しています。ブログでは当社が提唱するインバウンドの思想(※)や、これまで実践してきたマーケティング・営業・カスタマーサポートのナレッジや仕事で使えるテンプレート群など、ビジネスの課題解決に役立てていただけるコンテンツを無料で公開しています。

(※)インバウンドの思想:相手から価値を受けとる前に、先にこちらから価値を提供し、良好な関係を構築することを目指す思想。

▼「HubSpot 日本語ブログ」の戦略について取材した記事はこちら
HubSpotブログ編集長に聞く、BtoBのオウンドメディアで追うべきKPIとトピック選定3つの条件

室橋:そして記事を読んでより詳しい情報を知りたくなった方や、HubSpotのツールを使ってみたいと思っていただけた方のニーズに応えるべく、より詳細な情報を掲載したebookやプレゼン資料、あるいはHubSpotの無料で利用できる機能への導線を記事内に設置しています。このような、ブログ記事に合わせて提示するコンテンツを、HubSpotでは「オファー」と呼んでいます。

室橋:CROは、このブログ記事からオファーをダウンロードするまでの一連のプロセスを、読者にとってより負荷がないものにし、課題を抱えている方に対してストレスなく必要なオファーを受け取るまでの体験を提供する役割を担っています。

 字義どおりに解釈すると、CROとは「コンバージョン率の最適化」ですが、大切なのは検索経由でブログに訪れてくださった、何かしらの課題を抱えている方に対し、最適な解決策やヒントをわかりやすく提示して、ストレスなく必要とする情報にたどり着いてもらうこと。「CROは顧客体験向上のための活動である」ということを意識することが大切です。

CXを第一に考えることが、信頼関係の構築につながる

MZ:CROを顧客体験向上のための活動と意識することが、なぜ重要なのでしょうか?

室橋:コンバージョン率最適化というと、どうしても「とりあえずリードを創出できればいい」「無料登録してくれればいい」と数字のみを追いがちになります。そうすると極端な話、メールアドレスを登録するフォームを1つだけ用意し、そこへの誘導を強化すればいいという考え方になるでしょう。しかし、それがブログに訪れた方にとって最適な体験かといえば、決してそうではありません。

 読者として快適に記事を読み、知識を得て、さらに詳しく知りたいという方には適切なタイミングで適切なリンクを設置し、快適にお役立ち情報をダウンロードしてもらう。そのようにユーザー視点を持って取り組まなければ、一時的に成果が上がったとしても、信頼関係は築きにくいでしょう。インバウンドの思想から考えると、顧客体験の最適化は長期的に見て最重要のテーマといえます。

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ダウンロードするまでの“摩擦”を取り除く

MZ:では、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか?

室橋:ブログ記事を読んで、より詳しい資料がほしい、無料機能を試してみたいと思ったのに、ダウンロードボタンがどこにあるのかわからなかったり、ダウンロードするまでの手続きやページ遷移が煩雑だったり、どんな資料なのか中身が全然わからなかったら、がっかりしてそのまま離脱してしまいますよね。こうしたフリクション(摩擦)を減らしていくために、CTAの配置場所やテキスト文言、バナーデザインなど諸々の設計や改善を行っています。

 たとえばブログ記事は一つひとつ熱量をもって制作しているので、1記事で7,000字を超えるものも多々あります。記事を読み進めるうちに、「もっと詳しく知りたい」と思う方がいて、当社側で役立つオファーを提供していたとしても、ダウンロードの導線が記事の一番下にしかない場合、何度もスクロールしないとたどり着けません。

 そうした摩擦を解消するためには、ブログ記事の一番上、中段、最後にダウンロードへの導線を設定する、CTAを配置する際はテキスト・バナー画像など最適な表現を選んで表示するといった施策を行います。詳しい情報が欲しい方も、じっくり読んでから資料を見たい方もいれば、最初だけさらっと読んでダウンロードする方もいるので、適切な見せ方・適切なタイミング・適切な表現で提示していきます。

1年間でブログ経由のリード数が約3倍、CVRは約1.5倍に

室橋:現在「HubSpot 日本語ブログ」には約900の記事があるのですが、私が入社してから今年(2021年)4月末まで593記事に対して改善策を実施しました。CTAの位置やテキスト・画像クリエイティブを見直したり、コンテンツが古い記事・オファーを完全に作り直したり、オファーがない記事は新たに制作したりなど、ブログ記事とオファーの連携を図りながら改善を進めました。

 新しい記事を制作する時には、「ブログ記事とその受け皿であるオファーがきちんとそろっている」という状態になるよう企画を進めています。

MZ:大変な作業ですね。そうした施策により、どのような成果が得られたのでしょうか。

室橋:2020年の5月から2021年の3月末までの成果ですが、ブログ経由のリード数は、CRO施策以前の3倍になりました。またコンバージョン率に関しては以前の1.5倍となっています

CROは「数」と「質」で進める

MZ:ここからは、より具体的なCROの進め方について伺っていきます。約900記事のうち593記事の改善を行ったという話でしたが、具体的にどのように優先順位を付けて進めていったのか、また記事以外のランディングページ(LP)に対して行った施策についても教えてください。

室橋:大きく「数のCRO」と「質のCRO」の2つに分けて進めました。

 数については、そもそもオファーのコンテンツが古かったり、本来あるべきコンテンツがなかったりという課題を抱えていたので、日本語ブログの編集長と連携し、新しく制作したり、リニューアルすることで対応しました。

 これらの新しいオファーをダウンロードしていただく動線を、約600記事に展開することで「数のCRO」を実行しました。

室橋:質については、CVRを高めるためLP改善を行いました。テストを繰り返し、最もダウンロードされやすいパターンを見つけたら他の記事にも横展開していくことで、オファー利用の流れが大きく改善できたと思います。

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「DMAIC」プロセスで施策改善のPDCAを回していく

MZ:その「最もダウンロードしやすいパターンを見つける」というのが最も困難な点だと思うのですが、具体的にどのように進めたのでしょうか?

室橋:これはWebアナリストの小川卓氏が提唱する「DMAIC」プロセスに則って進めました。DMAICとはWebサイトに限らず、分析・改善していくための大きく分けて5つのプロセスで、Define(目標・KPI設計)、Measure(ツール選定/仮説立案)、Analysis(全体分析/施策提案)、Improve(実行施策・振り返り)、Control(改善文化の継続)で構成されています。後半のAnalysis・Improve・Controlがいわゆる改善施策のPDCAになります。

引用元:小川卓氏 資料
引用元:小川卓氏 資料

室橋:実際にこの流れに沿って、オファーを紹介しているダウンロードページの改善を行いました。具体的には、ダウンロードページから申し込みフォームが立ち上がるまでのプロセスが円滑になるとCVRが上がるので、その最適化を行うためにどうすればいいかを考えました。GoogleアナリティクスやヒートマップツールのHotjarを使って検証したところ、問題が3つあることがわかりました。

 1つ目は、ダウンロードボタンがファーストビューに無く、スクロールしないと出てこないという問題です。第2に、ダウンロードコンテンツ(オファー)の中身を見たいという方がいるのに、やはりそこもスクロールしないと見られない状態だったこと。そして最後に、オファーの中身を見るカルーセルまで辿り着ける人はそもそも50%しかいない、という問題です。

室橋:これらの問題を改善するため、LPデザインの改善を行いました。Aパターンは固定CTA(Call To Action)を設置し、スクロールしてもCTAボタンが常に表示されるようしたもの、BパターンはCTAを上部に配置したもの、Cパターンはカルーセルを使ってスクロールすることなく中身の確認やダウンロードを行えるようにしたものです。Cパターンが今回の分析で導き出した改善案になります。この3つのパターンで多変量解析を行い、特に改善度が高かったBパターンへの改修を進めています。

リソースがなくてもすぐにはじめられるアクション3選

MZ:数と質の改善は優先順位を付けて進められたという話で、Webサイト改善に悩む企業の方に参考になったと思います。ただ、リソース不足でなかなか改善に着手できないという企業もあるでしょう。まずは何から着手すべきでしょうか。

室橋:そうですね、DMAICプロセスに則って進める、スピードを追求する、量をこなすというのが基本になります。質ももちろん大切なのですが、CROは実は試行回数が重要です。なぜかといえば、顧客体験は結局ユーザーが決めることなので、もし結果が出なくても「次に行こう」と回数を重ねることで成果がついてくるためです。

 より具体的なアクションに落とし込むと、次の3つはすぐに始められるのではないでしょうか。

すぐにはじめられるアクション3選

1、主要ページのファーストビューにCTAを設置する
2、訪問→コンバージョンまでユーザー視点で体験する
3、GA&ヒートマップでデータ分析→テストを実施する

室橋:私たちが他サイトを拝見している限りでは、主要ページに動線が貼られていないケースはかなり多いです。まずリンクをしっかり付けるだけでも、かなり変わると思います。これはリンクを付けるだけなので、それほど負担にならないでしょう。

 あとは実際に、他部署のメンバーなどにユーザー目線で訪問からコンバージョンまで体験してもらい、どこにフリクションがあるのか指摘してもらうこと。横で操作を見ていて、「ここで詰まっているな」と感じる部分もあるでしょう。

 最後にGoogleアナリティクスやヒートマップツールを導入し、データを見て課題を発見し、仮説を立ててテストを実施すること。ツール導入がまだならまずは導入してみることをお勧めします。

MZ:最後にWebサイトの改善に悩むマーケターや企業の方にアドバイスをお願いします。

室橋:繰り返しになりますが、CROは顧客体験向上の活動です。顧客体験を考えて活動することで、結果として自社のビジネス成長につながります。そのため効率的にコンバージョンレートを上げたり、要領よくリードを創出するといった目先の数値ではなく、「顧客にどう円滑に価値を提供するか」という意識がとても大切です。

 その視点に立てば、読者/見込み客の摩擦を減らすことができると思います。その大前提の下、どんどんテストを重ね、勝ちパターンを分析して「これがなぜいい体験になるのか」を考えて横展開すると、見込み客にとっても自社にとってもいい結果になるのではないでしょうか。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/08/26 11:00 https://markezine.jp/article/detail/36896