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メール経由の売上を4倍にした企業も。コロナ禍でのCRM構築のポイントを、シナジーマーケティングに聞く

 CRMはマーケターにとって既になじみ深い言葉だが、コロナ禍で顧客接点に変化が生じたことで、その重要性が改めて認識されている。20年にわたってCRM領域の課題解決に取り組み、7,000件以上の企業支援実績を有するシナジーマーケティングのデジタルマーケティング事業部 多々良史弥氏に、今必要な対応とCRM施策を社内定着・推進させていくコツをうかがった。

CRM領域で20年の実績を持つシナジーマーケティング

MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは御社のご紹介、多々良さんの自己紹介をお願いいたします。

多々良:シナジーマーケティングは大阪で創業し、約20年間、一貫してCRM領域を主軸に事業展開してきました。主力製品であるCRMツール「Synergy!」は、これまで7,000件以上の導入実績があります。ツールを提供するベンダーとしての立ち位置と、お客様の現状を紐解いて戦略や施策の設計から実行支援までを行うコンサルティング会社としての立ち位置を兼ね備えた会社です。

 2014年にヤフーグループに入り、2019年には創業者による株式取得があり再独立をしています。こうした経緯や近年のコロナ禍などの社会変化も鑑みて、今年の1月にビジョンやミッションをリニューアルしました。新たなビジョンには「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」を、ミッションには「Create Synergy with FAN」を掲げています。

シナジーマーケティング株式会社 マーケティングプロデューサー 多々良史弥氏
シナジーマーケティング株式会社 マーケティングプロデューサー 多々良 史弥氏

 私自身は「Synergy!」活用提案のほかマーケティング施策のご提案や、PDCA体制構築などを支援するコンサルタントの立場で仕事をしており、BtoC、BtoBの両方の企業様を担当させていただいた経験があります。

 たとえば顧客データが数百万人を有するエンターテインメント企業様のメールマーケティングのプロジェクトマネージャーを担ってきたほか、EC事業者様に対するブランディング、コミュニケーション戦略策定、各種レポート業務など、プロジェクトに継続的に関わることが多いです。

CRMの出発点は、お客様に向き合い理解すること

MZ:さまざまな企業の支援に携わっているのですね。CRMを強化しなければ、と思ったとき真っ先に思い浮かぶのがメールやLINE、広告配信といったコミュニケーションの最適化ですが、御社ではCRMにおいて大事なことを、お客様にどのようにご説明されていますか。

多々良:私は「企業が顧客に向き合うスタンスの表明」が、CRMの本質だとお伝えしています。お客様に向き合って理解し、どのような体験を届けるのかを考えることが、CRMのスタートです。手段としてメールやLINEなどを用いたとしても、届ける相手であるお客様を理解していなければ、場当たり的な対応になってしまう可能性があります

 どのような業態でも顧客理解は必要な要素ですが、戦略策定前に行うだけでなく、施策を重ねる中で軸を見失った際に立ち戻る場所という意味でも重要です。顧客理解に取り組むことで、マーケティング部門に携わる皆様の認識がアップデートされ、メンバー間の目線もそろいます。すると、現状の施策を棚卸しした際も冷静に見直しが図れます。

 方法としては、アンケートを取ったりデモグラフィックデータを集めたりするだけでは十分ではなく、自社顧客の消費行動に関する価値観も含めて考え、ペルソナを作ることが重要だと考えています。

シナジーマーケティングのCRM整理(Webサイトより)
シナジーマーケティングのCRM整理(Webサイトより

会員の伸びを最大限に活かしメール経由の売上を4倍に

MZ:コロナ禍における購買行動の変化や価値観の変容を受けて、顧客へのアプローチを再設計する必要が生じたり、かつては有効だったやり方が機能しなくなったりするケースも出てきていると思います。実際にお客様と接する中で感じていらっしゃることを教えてください。

多々良:コロナ禍の中で強く感じたのは、変化が加速したことによって以前から対応が必要と言われていたことがより顕著に現れたなということです。

 たとえばBtoCでのEC化率の上昇は、多くの企業様が実感されていると思います。その中で1つ、印象的な事例として、アパレル系EC事業を展開されているヒラキ様のトリガーメールをご紹介します。ヒラキ様はコロナ直後に新規流入が増加し、昨対比116%の会員数になりました。この増加自体は、コロナ禍という外部要因が影響していると考えられます。ですがその後、CRM施策の要としていたトリガーメール経由では、単月で受注件数が最大で昨対比4倍まで増加しました。単純に比較しても、EC会員の増加率以上に売上が伸びています。

MZ:会員の増加を、しっかりと売上に結びつけることができたのですね。ポイントはどこにあったのでしょうか。

多々良:成果が出たのは、コロナ禍以前から、顧客行動を起点としたトリガーメールをしっかりと整備できていたことが大きいです。トリガーメールは、サイト内の行動を起点としてメールを送る、One to Oneの顧客体験を重要視する施策で、製品をより探索したいというモチベーションが強い新規会員と非常に相性が良いものです。

 ヒラキ様は早くからこの顧客行動に応じたコミュニケーション設計を重要と考え、約20パターンのトリガーメール施策をコツコツとスタートしていました。早い段階からこのような顧客体験の向上にリソースを割いてきたことが、実を結んだのだと思います。

MZ:BtoB領域では、どのような変化が起きているのでしょうか。

多々良:BtoBにおいてはウェビナーの定着が進みました。しかし気軽に参加できる分、対面よりも検討度の浅い方々が多く、同じリード数でも中身の濃さが違います。しかも対面でない分、コンテンツ力がより問われるようになっています。顧客理解を踏まえて、ニーズや課題感にマッチしたコンテンツを提供できるかが鍵になっていますね。

施策概要図
施策概要図

CRMを定着させるには「1つ目の成功を早く作る」

MZ:これからCRMの体制を構築したい、より積極的に進めたいと考えている企業に向けて、導入・定着のためのポイントを教えていただけますか。

多々良:私たちがご支援する際は、導入フェーズでは、1つ目の成功をどれだけ早く作るかを常に気にかけています。

 定着のためには、まず運用しているご担当者様自身が効果を実感することが重要だからです。さらに短期間で成功や手ごたえがあると、CRMに関して社内でより大きな協力が得られるようになったり、意見が通りやすくなったりしますよね。

 実際にご支援してきた企業様では、短期的な成功が、結果的に長期的な取り組みにつながり、より大きな成功を生み出すというケースが多々ありました。

 CRMの領域だけをとっても、その中でも各社の状況によってやるべき正しい手順というものは明確にあります。 短期で成果が出やすい施策と、中長期で取り組むことが必要な施策を同時並行で実施するのが理想ではありますが、まず前者で成果を出すのが近道と考えています。

MZ:短期的に成果が出た最近の事例があれば教えてください。

多々良:先ほどご紹介したヒラキ様では、トリガーメールで成功したパターンをLINEなど他のチャネルにも転用し、新しいチャネルにもかかわらずすぐに成果を挙げられていました。優先順位をつけて、成果が出やすい領域に積極的に着手し改善を図っていった、非常に良い例です。

 最初の成功を早く作るという面では、再現性のある成功パターンの知見を持つ、我々のような支援会社をぜひ頼っていただきたいです。企業様の状況を見て、1つ目の成功のためにフォーカスすべき点を見抜きます

FAXや展示会が主体の営業から、短期でシフトした例も

多々良:もう一つ、短期でデジタル主体の体制にシフトできた例として、ある下着メーカー様が展開する医療用下着のCRM構築についてご紹介します。医療用の下着ですから、看護師からカタログやサンプル送付の依頼を受け、患者さんに紹介していただくというビジネスフローとなり、コロナ禍前はFAXや展示会でのコミュニケーションが主体でした。

 施策としては弊社のCRMツール「Synergy!」を導入し、フォームからデータ収集を実施。カタログ依頼や申し込みはWeb完結できるようにしました。エクセルデータで作成していたリストも「Synergy!」に切り替え、コンタクト履歴もツール上で一括管理。データベースの項目も1つずつ事前にすり合わせました。

MZ:ツールの定着、デジタルシフトを短期で進められたポイントはどこにあったのでしょうか。

多々良:たとえば「たくさんのカタログや生地サンプルをどのようなフォーム形式で見せたら申し込みしやすく、データ管理もしやすいか?」など、現場の運用をしっかりとヒアリングした上で、ツールがどういう場面でどう貢献できるかを、かなり具体的に詰めました。デジタルを活かしてCRMを整備することで、社内外の誰にとってどんなメリットが生まれるのかを明確にできたことは、クライアント様からも評価いただいた部分です

 また、国産ツールである「Synergy!」は海外ツールと比較して、日本語表記がわかりやすいと言っていただくことが多く、こうした面もスムーズな導入に役立っていると思います。また、メールやLINEなどのプッシュ系チャネル配信機能では、配信対象者の条件設定や配信タイミング設定が柔軟に指定できることも支持されています。

これからのCRMに求められること

MZ:今後のCRMはどのように変化するとお考えですか。

多々良:コロナ禍や個人情報の取り扱いなどの社会的な変化を受けて、デジタルマーケティングは今後より一層ユーザーに寄り添うことを求められるようになるでしょう。

 今まで企業が取得してきた顧客情報というものは、キャンペーンや初回クーポンなどを理由として、しかたなしに「代償」として提供されたものも多かったと言えます。個人情報に対する社会の認識が変わる中、情報を提供いただけるような信頼関係をどのように作っていくかが問われていくと思います。

 たとえば、企業のビジョンやミッションへの共感が重要になるでしょう。その企業の「ファン」として、自らの意思で顧客情報を提供しより良い体験をしたい、と思っていただく。それによってお客様と企業の双方にメリットが生まれる、といった状況が想定されます。

 そして顧客行動や熱量は我々のシステムの中で可視化され、企業側が大切なファンに伝えるべき感謝や情報を届けることで、より良いサイクルができていく。このような世界観は、弊社の新ミッションである「Create Synergy with FAN」にも通じるものです。こういった関係を構築していくためのご支援ができると嬉しいですね。

 また、新規顧客と企業との出会いの場に関しても、熱量の高いファンの方々が新規顧客を連れてきてくれる場面も増えると思います。優良なお客様はいわゆる購買データだけで判断できなくなるのです。

MZ:たくさん購入することだけが優良顧客の指標ではなくなるということですか。

多々良:はい。SNSでの発信やシェア数など、バイラル要素も関係してきます。スポーツチームのファンクラブ会員の中には、自分自身で楽しむことはもちろん、試合を観たことがない方に試合を観てもらい、その方が喜ぶことに嬉しさを感じる方もいます。そういった方々をどう大切にしていくかは、非常に重要なポイントです。これからはファンを継続的に満足させる施策の企画や設計が、CRMとして注目されることでしょう。

MZ:CRMの最前線、御社の強みがよくわかりました。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/03 10:30 https://markezine.jp/article/detail/37546