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1億以上の楽天IDでフルファネル戦略を支援 楽天×電通デジタル「RMP - Connect」活用事例

 昨今、Cookie規制をはじめとするプライバシー保護の観点から、データを活用したマーケティングが変化を余儀なくされている。戦略策定への示唆を得るに見合うデータを見つけられるかが新たな課題だ。楽天グループでは楽天IDに基づいたデータを活用できるマーケティング基盤「RMP - Connect」を電通デジタルの支援の基で開発し、クライアントへの先行利用を開始した。両社の担当者から、現在のデータマーケティングを取り巻く環境や課題感、RMP - Connectの活用事例について詳しい話を聞いた。

幅広いプロダクトから成る楽天エコシステム(経済圏)とその専門家集団

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、お二人の業務領域やミッションなどについてお教えください。

深田:楽天の深田です。現在楽天グループでは「楽天市場」や「楽天カード」「楽天トラベル」など、およそ70以上のサービスを展開しています。楽天エコシステムの中で、ユーザー様がお買い物をしたり、何かに登録したりすることで、サービスをご利用いただいた消費行動分析データが蓄積されていきます。

 我々のミッションは、このデータを活用した広告プロダクトを企業様に提供することです。私の部署では、特に運用型広告に特化したプロダクトの開発を行っています。

楽天グループ株式会社 コマース&マーケティングカンパニー マーケティングソリューションズ事業 アドソリューションズ部 運用型広告課 Senior Manager 深田淳氏

千葉:電通デジタルでコマース部門楽天ルームに所属する千葉です。我々は「楽天エコシステムを扱う専門家集団」というミッションを掲げて、様々な取り組みを楽天グループ様とご一緒しています。

 具体的には、楽天グループ様のサービスを活用した施策をプランニングし、メーカーやサービスプロバイダーにご提案して、生活者に豊かな購買体験・ブランド体験を提供するための取り組みを進めています。また、電通デジタルのコマース部門では“お客様の購買接点に関わるすべての活動”をコマース領域と捉えており、統合的なCX設計を行っています。

株式会社電通デジタル コマース部門 楽天ルーム 事業部長 千葉健司氏

CookieではなくIDを使ったマーケティング活用を目指す

MZ:EC市場がますます広がり、オンラインにおける顧客接点が重要視されています。一方で、プライバシー保護の観点などからデータを活用したマーケティング活動が変化を余儀なくされているのも事実です。データを取り巻く現状をどのようにお考えでしょうか?

深田:楽天グループは、現時点で1億以上(2022年9月時点) の楽天IDからなる顧客基盤を抱えています。楽天エコシステムの中で多事業が有機的に連携し、One IDでつながっている点はユニークですし、デジタルマーケティングにおいても非常に価値のある特長だと思います

 もちろんプライバシー保護の観点、Cookieの利用制限に配慮する必要はありますが、我々とユーザー様との主な接点は、CookieではなくIDです。そのため、現在の市況感をある意味チャンスと捉えているのが現状です。

 一方、課題として、我々の蓄積するデータの活用方法やメリットを、これまではクライアント様に対して十分に伝えきれていなかった、「宝の持ち腐れ感」も感じています。

千葉:たとえばここ数年の動きとして、海外の大手小売店が広告配信プラットフォームを立ち上げるなど、IDに基づいた購買/行動データ、属性データをベースにしたマーケティング手法が徐々に一般化してきました

 楽天グループ様が蓄積する1億以上の楽天IDは、日本国内における代表性があるデータですので、持続可能なマーケティング手法のひとつとして、IDを活用した先進的な事例の創出に向けてご一緒させていただいています。

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出典:Rakuten Marketing Platform navi

MZ:具体的な取り組みとして、楽天グループと電通デジタルの協業により、楽天データを活用したマーケティング基盤「RMP - Connect」の先行利用が開始されたと伺いました。概要についてご教示いただけますか。

深田:楽天の広告商品に「RMP - Display Ads」というものがあります 。これは、分析した楽天データの活用をもとに、運用型広告の最適化を行うプロダクトです。

 RMP - Display Adsにおいては、広告運用からプランニング、レポーティングに至るまで、すべてを楽天内で行っているのですが、上流戦略に基づいたプランニングや課題解決の部分で、我々とクライアント様の間に距離を感じる部分がありました。

 このギャップを、電通デジタルさんの広告運用知見でご支援いただき埋めていったのがRMP - Connectです。

認知層・理解層の支援にも強いRMP - Connect

MZ:電通デジタルとして、具体的にはどのような支援をされているのでしょうか。

千葉:主に三つの部分でご支援しています。

(1)ターゲット抽出・策定

  • メーカーやサービスプロバイダーの目的に沿ったターゲット抽出を行い、顧客セグメントを可視化
  • 楽天が蓄積する消費行動分析データに基づく購買確率の算出

(2)主要プラットフォームとの連携

  • 楽天が蓄積する消費行動分析データで作成したセグメントに対して、SNSや動画配信プラットフォーム等にて広告配信
  • 各プラットフォーム事業者のデータクリーンルームを活用し、楽天が蓄積する消費行動分析データとプラットフォーム事業者データ、適正に取得した第三者データを安全に連携した各種分析・検証の実施

(3)オンライン・オフラインの効果検証

  • インターネット・ショッピングモール「楽天市場」における、広告による態度変容・購買リフト検証
  • 楽天のオフラインデータやレシート購買情報に基づく態度変容・購買リフト検証

千葉:楽天といえば「楽天市場」のイメージが強いためなのか、クライアント様が楽天に求める価値は購買検討層向けに偏りがちですが、プランニング次第では認知層・理解層向けの施策へ活用ができるという特長を伝えていきたいと考えています。

通常媒体と比較して「広告認知が23%向上」

MZ:RMP - Connectの先行利用について、実際の活用事例をお教えください。

千葉:まずは、一つ目の事例についてご紹介します。施策KPIが態度変容(ブランドリフト)の案件での検証です。

 「広告配信プラットフォーマーで設定可能なターゲティング」と「楽天データを使ったターゲティング」を比較したところ、後者のほうが広告認知はプラス23%。購入意向も2倍以上の結果となりました。広告を届けるリーチ単価では、多少高くなる傾向がありますが、ブランドリフトの視点で見ると「楽天データを使ったターゲティング」の方がコスト効率で勝る結果でした。

 二つ目の事例は「店頭での売りに繋がる、オンライン広告での訴求軸」を検証した事例です。

 これまではオンラインにて広告クリックベースで見ていく検証がセオリーでしたが、今回はオンラインでの広告訴求に対してオフラインでの購入を紐づけた検証に切り替えられたのが大きなポイントです。この施策を通して得られた示唆を、オンラインに留まらないマーケティング施策、具体的にはSNS投稿内容やPOP、対流通への営業トークなどに活かしていく見込みです。

 三つ目はターゲット抽出の事例です。

 食品や飲料、消費財などの購入サイクルが短い商品の訴求を行う際、購買データを使ったプランニングとしては「該当商品を買う人=過去に該当商品を買ったことがある人」という設計を行うのが一般的です。

 今回の事例ではもう一歩踏み込んで、「広告接触者は、他にどんな商品カテゴリに対して購買意向があるのか。その中でも広告効果が期待できそうな集団(次回施策における新たなターゲット群)はどれなのか」を可視化する検証を行いました。今回の商品の場合、日用品やカウンターフードの購買者に広告効果が見込めることがわかったので、次回施策のプランニングに活かす方向でご検討いただいています。

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ターゲット抽出の分析結果イメージ。縦軸のリフト値が高いほど広告効果が高いと期待される。横軸のベース購買率が高いほど元々の該当商材購買率が高い。バブルの大きさはボリューム(見込み)を表している

深田:「対象商品を買った人に、このようなポテンシャルがあります」というセグメントは、見えないターゲットの発見につながりますし、クライアント様へ新たな施策を提案できるメリットがあります。今後もっと積極的に取り組んでいきたいポイントと考えています。

楽天エコシステムの「内と外をつなぐ」スキームの形成

MZ:伺った事例以外に、どのような有効活用が期待できると思われますか。

千葉:不動産や学習塾など、「楽天市場」で取り扱っていない、いわゆるサービスを提供しているようなクライアント様に対して、RMP - Connectをご活用いただく切り口を考えています。

 単純なケースでいうと、資料請求や来店予約に楽天ポイントを付ける施策です。ポイントの付与だけであればキャンペーン事例はたくさんありますが、我々がRMP - Connectと掛け合わせて実行しようとしているのは、もう少し踏み込んだ分析です。

 たとえば、キャンペーンを告知する広告に接触した人の中で、「キャンペーン参加者(楽天ポイント付与者)」の特徴値を抽出して可視化することを検討しています。これにより、楽天ポイントがどんな生活者に効果的だったのかを把握するとともに、クライアント様にとっての楽天エコシステム活用方法が見えてきます。

 もう一つは、「楽天市場」で販売している商品の販促手段としての活用です。

 「楽天市場」における販促は、「楽天市場」内だったり、楽天の他サービスから「楽天市場」へ誘導したりすることで購入を促すのがセオリーです。それを、たとえばソーシャルメディアなどの外部メディアから「楽天市場」に遷移して、商品を購入してもらえる状態を作るために、高度なモデリングや最適化配信のスキームを整えています。

深田:当社の課題である「宝の持ち腐れ感」を解消できるのがまさにこの点です。

 広告が当たってから購買に至るまでのデータを活用し、広告効果を自動的に最適化するようなメカニズムを作ることで、クライアント様に継続してご利用いただけるようなソリューションにしていきたいと考えています。

市場全体を俯瞰で見るためのソリューションを目指す

MZ:RMP - Connectを通じた取り組みとして、今後の展望をお聞かせください。

深田:IDに基づく広告、マーケティングツールの一つ、というよりは、市場全体を俯瞰して見るソリューションのようなものに進化していければと思います。

 たとえば、新商品を発売する場合のプランニングとして、どの層にどの程度のポテンシャルがあるか、広告配信の結果、このセグメント、このクラスタでどの程度売り上げが上がったか、などの分析を、全体を通じて出せるようなマーケティング基盤を作りたいと考えています。

 この展望の初めの一歩、いわゆるコアの部分がRMP - Connectです。

千葉:先ほどご紹介した事例も含め、我々はRMP - Connect単体での活用ではなく、楽天エコシステムをどのように活用していくか考えた際に深い取り組みができる選択肢の一つとしてRMP - Connectがある、という位置づけです。

 深田様の仰る通り、RMP - Connectはプロダクトというよりはソリューションです。これはプランナーやアナリストの切り口次第で価値が発揮できるソリューションなので、これまで我々が培ってきた集合知を試されている感覚です。生活者へ豊かな購買体験・ブランド体験を提供するために、クライアント様や楽天グループ様と共に施策設計を行い、実現に向けて伴走するのが電通デジタルの役割と考えています。

 「RMP - Connect」を含めて弊社と楽天グループ様の取り組みにご興味を持っていただいた方は、ぜひお気軽にお声掛けください。

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この記事の著者

坂本 陽平(サカモト ヨウヘイ)

理系ライター、インタビュアー。分析機器メーカー、国際物流、商社勤務を経てフリーランスに。ビジネス領域での実務経験を活かし、サイエンス、ODA、人事、転職、海外文化などのジャンルを中心に執筆活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/06 10:00 https://markezine.jp/article/detail/40703