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MarkeZine Day 2023 Spring(AD)

忙しいBtoBマーケターこそ押さえておきたいKPIの管理方法 施策別のポイントと改善のコツ

「個別施策のKPIだけでなく全体のKPI管理で悩んでいる」「従来のKPI管理方法を再点検したい」と考えているBtoBマーケターは多いのではないだろうか。2023年3月に開催された「MarkeZine Day 2023 Spring」では、シャノン マーケティング部の村尾慶尚氏と藤井里名氏が登壇。視聴者特典の「すぐに使えるエクセルのKPIテンプレート」を用いながら、BtoBマーケティングの推進に不可欠なKPIを整理し、施策の改善方法を解説した。

まずは各種KPIの相関関係を把握せよ

 BtoBマーケターに向けてKPIの管理方法を紹介する本セッション。シャノンの藤井里名氏はまず、会社全体のKPIとして「受注」「商談」「アポイント」「応答」「フォロー数」の五つを挙げた上で、これらとマーケティング部が追うKPIの相関を数式によって整理する。

 KPIと聞くと、マーケターは申し込み率やCV率などの細かな数値を見たくなるものだが、「まずは会社全体のKPIを理解し、マーケティング部が管理しているKPIとの相関を確認する姿勢が重要」と藤井氏。同社の村尾慶尚氏は先の数式について「マーケティング部で担うことの多い『獲得リード数』というKPIが、フォロー・応答・アポイント・商談・受注に相関していることがよくわかる」とコメントする。

 次に藤井氏は、KPIの数値を改善するための方法を二つ紹介する。一つめの方法は、他部署との調整だ。

「マーケティング部の中には『商談数』をKPIに設定している担当者もいるでしょう。数式を見ればわかるように、商談数の目標値を達成するためには、自分たちの獲得リード数だけでなく、インサイドセールスのフォロー数や営業担当者のアポイント数も調整する必要があるのです」(村尾氏)

 二つめは、各施策にフォーカスして改善を進める方法だ。但し、この方法においても「他部署との調整は発生する」と藤井氏。たとえばマーケティング部門が施策の見直しによってリード獲得数を改善したとしても、インサイドセールスのフォロー数が増えなければフォロー率は上がらない。周りを巻き込むためにはどうすれば良いのか。藤井氏は「商談獲得単価」という共通指標の有用性を提唱しつつ、施策別の具体的な改善方法を紹介する。

問い合わせと資料請求のフォームを明確に分ける

 まずはWeb施策の改善方法について。藤井氏は前段として、Web施策のKPIを「集客」「接客」「送客」のプロセスに分けて整理する。集客がうまくいっているかどうかはアクセス数で、接客がうまくいっているかどうかはコンバージョン率/数で判断でき、コンバージョンが次のフェーズに引き上がっているかどうかはフォロー数・応答数・アポ数などに着目すれば判断できるわけだ。

 集客において「指名検索数」を課題に挙げるマーケターは多いが、藤井氏はコンバージョン率から改善することを強く勧める。その理由は「既にWebサイトへ来訪している人の中に、取りこぼしている人が紛れているから」だという。

「BtoBの購買プロセスによくあるパターンとして、上司から情報収集の指示を受けた部下がWebサイトを来訪しているケースが挙げられます。このケースが指示型です。部下の方の多くは『製品を深く知りたい』ではなく『資料をクイックに入手して社内に展開したい』というモチベーションでサイトを訪問しています」(藤井氏)

 指示型の人を取りこぼさないためには、どうすれば良いのか。藤井氏は「問い合わせフォーム」と「資料請求フォーム」を明確に分けることを提案する。なぜなら、具体的な内容を問い合わせたい人と、ただ資料を請求したい人のモチベーションは異なるからだ。シャノンでは問い合わせフォームと資料請求フォームを分けたことにより、問い合わせ件数の約4倍にあたる資料請求数を獲得できたという。

Webサイトの改善が165万円相当の価値を生む

 問い合わせフォームと資料請求フォームを分けた後は、資料請求フォームに続く導線の見直しを行う。チェック項目は「サイトのグローバルナビに資料請求のボタンがあるかどうか」「サイトのファーストビューに目立つ導線があるかどうか」だ。藤井氏は導線に加え、フォーム自体の見直しにも言及。共通の資料請求フォームの必要性を次のように語る。

「複数の製品を展開している企業のサイトを訪問すると、資料請求ボタンを押した後に『この製品の資料はこちら』というボタンが表示され、希望する資料の請求までにさらなるアクションを要することがあります。訪問者の離脱を防ぐためには、ボタンの先にフォームを設置しましょう。共通の資料請求フォームは、複数製品から訪問者が興味のある製品を選択することができるため、おすすめです」(藤井氏)

 藤井氏は数式を用いて、Webサイトのフォームおよび導線の改善がもたらす費用対効果を試算する。

 村尾氏は商談獲得単価という指標に基づき、Webサイトの改善がもたらす価値を次のように評価する。

「商談獲得単価を15万円だと仮定すると、11件の商談を獲得するのに165万円がかかる計算になります。Webサイトの改善で165万円分の価値が出ると考えれば、改善に取り組む意義も理解できますね」(村尾氏)

配信停止率が低い2種のセグメントメール

 続いて藤井氏はウェビナーの改善方法を紹介する。ウェビナーもWeb施策と同じく、集客・接客・送客のプロセス別にKPIを整理することができるようだ。

 藤井氏はウェビナーのよくある悩みとして「申し込み数の少なさ」を挙げ、改善策として「メール集客の強化」を提案。通常のメルマガに、配信対象者を絞ったセグメントメールを追加することを強く勧める。

「1年以内にWebアクセスがある人に絞り込んで単独メールを送ってみてください。その際、メールの文面を集客したいウェビナーのタイトルとキービジュアル、ボディー部、CTAのボタンというシンプルな要素で構成することがポイントです」(藤井氏)

 また、ウェビナーのLPを来訪しているにも関わらず申し込みをしていない人に対象を絞り、開催前日に再案内するセグメントメールも有効だという。

「メールが増えると配信停止につながるのでは」と村尾氏が指摘したところ、藤井氏はシャノンの実績値を紹介。全配信のメルマガよりも、単独メールや直前再案内メールのほうが配信停止率は低かったことを示す。

 メール経由の集客を100%とした場合に、そのうち55%がセグメントメール経由であった点にも言及。配信停止のリスクを押さえながらも集客が強化できる可能性を強調する。

 ここで「おすすめの配信タイミングがある」と藤井氏。会期の2週間前に全配信のメルマガを送り、1週間前に対象者をセグメントした単独メールを、前日に再案内のセグメントメールを配信するスケジュールがおすすめとのことだ。

 藤井氏は数式を用いて、ウェビナーの改善がもたらす費用対効果を試算する。

「商談獲得単価を15万円だと仮定すると、1回のウェビナーで45万円分の価値がもたらされることになります。ウェビナーを月に複数回開催する場合は、さらに高い費用対効果が得られるはずです。このように試算した数字を、社内の協力を得る際の説得材料に使うと良いでしょう」(藤井氏)

メルマガはリードナーチャリングの土台

 メールの改善方法についても、藤井氏はテンプレートを用いて解説。「メルマガ」「単独」「直前再案内」の用途に分けた上で、集客・接客・送客のプロセス別にKPIを整理していく。

 藤井氏は「王道の改善ポイントはメルマガのクリック率」と強調。メルマガのクリックがWebサイトの回遊を生み、Webサイトの回遊がセグメントメールの対象者増やウェビナーへの誘導にもつながることを考えると、「メルマガはリードナーチャリングの土台と考えても良い」と村尾氏も賛同する。

 メルマガのクリック率を上げるにはどうすれば良いのか。藤井氏はA/Bテストを提案。より効果的なメルマガのタイトルを見つけるため、シャノンが実際に行ったA/Bテストの内容を紹介する。

A:フレームワークで基礎を固める!BtoBマーケティング再入門

B:【チェックシート付】BtoBマーケティング再入門

 上記2種のタイトルでメールを出し分けたところ、Aのクリック率を100%とした場合にBは182%だったそうだ。

「ウェビナーを数多く開催する中で、事後アンケート特典としてチェックシートを用意すると、回答率が高くなるというファクトが元々ありました。このファクトから『特典に着目する方が多いのでは』と仮説を立て、メールタイトルに反映した結果、クリック率が向上したのです」(藤井氏)

多忙なマーケターこそ購買フェーズ別の管理を

 ここまで様々な施策の改善方法を紹介してきたが、すべてを一気に解決することは難しい。そのため「そもそもどのフェーズのどの施策から改善するのか、当たりをつけていく必要がある」と藤井氏。比較・検討、関心、興味、認知のフェーズごとに、顧客を定義していくのだという。

 具体的には接点と期間を掛け合わせて定義を行う。たとえば、3ヵ月以内に資料請求をした人や、製品ウェビナーを視聴して3ヵ月以内の人は、比較している可能性が高いと考えられるだろう。そのためこの人たちを「比較・検討フェーズにいる人」とする。このように、顧客一人ひとりが位置するフェーズを管理していくのだ。

 マーケティングフェーズを管理することに、どのようなメリットがあるのか。たとえば「比較・検討フェーズの獲得数に対して引き上げ数が少ない」「広告経由のリード獲得に依存していて費用対効果が悪くなっている」など、課題箇所の特定ができるようになるという。村尾氏は「忙しいマーケターにこそ必要な管理方法」と語る。

 最後に藤井氏は次のメッセージを述べ、講演を締めくくる。

「マーケティングオートメーションを導入しても、すぐに顧客のフェーズが見えるわけではありません。そのため、直近3ヵ月で比較・検討、関心、興味、認知フェーズ別に該当する顧客の数をカウントしてみてください。その数字を見れば、ボトルネックとなっている施策が見えてくるはずです。施策の改善については当社がお力になることもできるため、ぜひご連絡いただければと思います」(藤井氏)

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社シャノン

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/19 10:30 https://markezine.jp/article/detail/41879