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今知っておきたいマーケティング基礎知識

時代別の購買行動モデルを紹介!AIDMAやDECAXなど比較解説


 消費者の購買プロセスを理解したうえで最適な施策を行うことは、マーケティングの成果を高めるためのポイントです。そこで活用したいのが「購買行動モデル」です。消費者の思考や行動の移り変わりを理解すると、成果につながるマーケティングを展開できます。  本記事では、時代によって変化していく購買行動モデルについて、AIDMAやAISAS、DECAXなどの代表的なものを紹介しています。ぜひマーケティングの参考にしてください。

購買行動モデルとは

 購買行動モデルとは、消費者が商品・サービスを認知してから購入するまでの一連の購買プロセスをモデル化したものです。

 すべての商材や消費者に当てはまるわけではありませんが、一般的な傾向を把握するのに役立ちます。

購買行動モデルを理解する重要性

 消費者は購買プロセスによって、ニーズや求めている情報が異なります。たとえば、商品・サービスを認知したばかりの消費者は「○○という課題を解決できるだろうか」「料金はいくらだろう」という思考です。一方、商品・サービスに対しての理解が深まり購入したいと思っている消費者は「他社商品との違いを知りたい」「実際に導入している顧客の声は?」といった情報を知りたいと考えます。

 このように、購買プロセスにおいて思考やニーズは変化していくため、企業は変化に応じたアプローチが必要です。購買行動モデルを理解できれば、適切なタイミングでアプローチできるようになります。

 また、購買行動モデルに沿って自社顧客の購買データや商材の売上データなどを分析すると、自社のボトルネックを把握できることも。たとえば「集客できているが、商品購入につながらない」という場合は、自社商品に関するコンテンツを充実させたり、SNSで口コミを発信してもらうための仕組みを作ったりする必要があると言えるでしょう。

購買行動モデルは時代に合わせて変化する

 時代が変化すると消費者のニーズや行動も変わるため、購買行動モデルも変化していきます。特に、マスメディアが台頭していた時代からインターネットが普及した時代へ変化するタイミングと、その後にSNSが台頭してきたタイミングでは、購買行動モデルも大きな変化を遂げています。

 マスメディアが大きな影響力を持っていた時代は、情報は企業から一方通行で発信されており、消費者が情報収集できるチャネルが限られていました。

 それが、インターネットで情報収集できるようになり、消費者の購買行動は変化しました。今までは企業からの一方通行の情報を受け取るのみだったのが、自ら必要な情報を検索して入手できるようになったのです。

 その後、SNSが普及したことで、情報自体はWebサイトのほかにSNSからも簡単に収集できるようになりました。SNSによって双方向のコミュニケーションが可能になり、企業と消費者の間でのコミュニケーションだけでなく、消費者と消費者同士のコミュニケーションもできるようになっています。

 また、SNS時代は感想や不満などをSNSに投稿して共有できるようになりました。購入後の共有・共感を促すことで新たな顧客獲得にもつながるようになり、単に「商品を購入して終わり」ではなく、購入後のプロセスも重要視されています。

 時代に合わせて購買行動モデルも変化してきたため、本記事でも「マスメディア時代」「Web時代・インターネット時代」「SNS時代」の3つの時代に分けて代表的な購買行動モデルを紹介していきます。

マスメディア時代の購買行動モデル

 マスメディア時代は、テレビやラジオ、新聞などのマスメディアの影響力が大きく、企業は各メディアの広告やCM、チラシなどで情報を発信していました。また、店頭の販売員の説明やPOPの説明書き、カタログ、パンフレットなども主な情報源でした。

 消費者が自分から情報を検索・収集する方法はほとんどなく、企業から発信される情報を受け取るしかない、一方通行的なコミュニケーションが一般的な時代です。そのときに提唱された代表的な購買行動モデルを紹介します。

AIDA(アイダ)

 「AIDA」は、1990年代前半に提唱されたもっとも古典的な購買行動モデルとして知られています。

 AIDAは、消費者の購買行動プロセスを以下の4つに分けています。

  • Attention(注意、認知)
  • Interest(興味、関心)
  • Desire(欲求)
  • Action(行動)

 最初にテレビやラジオなどで「こんな商品・サービスがあるのか」と知り、興味を抱いて「ほしい」という気持ちになり、実際に店頭で商品を購入したりサービスを契約したりするという流れです。

 古典的な購買行動モデルですが、今の時代でもこのようなプロセスで購買する消費者は珍しくないため、現代でも通用すると言えるでしょう。

AIDMA(アイドマ)

 AIDAをもとにして派生したのが「AIDMA」です。AIDAでは、消費者は広告で得た情報ですぐに購入に至ると考えられていますが、実際には一時的に商品・サービスのことを記憶してから購入するという考えのもとで作られました。

 AIDMAの購買行動プロセスは、以下の通りです。

  • Attention(注意、認知)
  • Interest(興味、関心)
  • Desire(欲求)
  • Memory(記憶)
  • Action(行動)

 企業は、ただ単に広告を出稿するのではなく、印象的なデザインやキャッチフレーズなどを駆使して、消費者の記憶に残ることが重要だとしています。

AIDCAS(アイドカス)

 AIDMAからさらに派生したのが「AIDCAS」という購買行動モデル。不動産や自動車など高額商材に当てはまると言われています。

  • Attention(注意、認知)
  • Interest(興味、関心)
  • Desire(欲求)
  • Conviction(確信)
  • Action(行動)
  • Satisfaction(評価、満足)

 AIDMAの「Memory」がなくなり、「Conviction」と「Satisfaction」が追加されています。「ほしい」と思った商品・サービスに関して、「自分にとって必要だ」と確信できることで購入へと至るとされています。また、購入後に使い心地や効果などに満足して評価し、リピーターとして再び購入してくれるフェーズまで組み込まれているモデルです。

Web時代・インターネット時代の購買行動モデル

 1990年代以降は、インターネットが普及してオンラインで情報を検索できるようになりました。この時代はWebサイトやブログなどが主な情報源で、消費者はWeb上にあふれている膨大な情報から自身にとって価値のある情報を見つけ出し、商品・サービスを購入するかどうか判断していました。

 消費者が自ら情報にアクセスできるようになったことで、購買行動プロセスも大きく変化した時代です。この時代の主な購買行動モデルを紹介します。

AISAS(アイサス)

 「AISAS」は、AIDMAをベースにして2004年に電通が提唱した購買行動モデルです。企業からの一方通行のアプローチをもとにしたAIDMAとは異なり、「Search(検索)」と「Share(共有)」といった消費者が主導する行動が加わっています。

  • Attention(注意、認知)
  • Interest(興味、関心)
  • Search(検索)
  • Action(行動)
  • Share(共有)

 消費者は興味を抱いた商品・サービスについて、インターネットで検索して詳しい情報を入手します。そうした情報をもとにして購入を決め、さらに購入後に感想や要望などをインターネット上で共有するのがAISASです。

 商品・サービスを利用した消費者に口コミサイトやSNSなどでポジティブな意見を発信してもらうと、新たな顧客獲得につながります。また、ネガティブな意見があってもマイナスに捉えず、サービスの改善や新商品の開発に活かすことが可能です。

AISCEAS(アイシーズ)

 「AISCEAS」は、AISASをベースにして「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」をプロセスに追加した購買行動モデルです。具体的には、以下のフェーズで購買行動が移っていきます。

  • Attention(注意、認知)
  • Interest(興味、関心)
  • Search(検索)
  • Comparison(比較)
  • Examination(検討)
  • Action(行動)
  • Share(共有)

 認知して興味を抱いた商品・サービスをインターネットで検索して、詳細な情報を入手するまではAISASと同じです。その後、インターネット上で競合他社の商品・サービスと比較し、営業担当者との商談や無料トライアルなどを通じて「本当に自分にとって必要だろうか」と十分に検討してから、購入に至るという違いがあります。

 市場が成熟して商品・サービスがあふれている日本では、競合製品だけでなく類似製品や代替製品などが多く存在し、消費者にとっての選択肢は多岐にわたります。比較・検討のフェーズで勝ち残るために、企業は商品・サービスの価値を高めるだけでなく、多様なマーケティング施策や質の高い営業対応など、幅広いアプローチが求められるのです。

DECAX(デキャックス)

 「DECAX」は、電通がコンテンツマーケティングに対応した購買行動モデルとして提唱した理論です。

 コンテンツマーケティングとは、消費者にとって価値の高いコンテンツ(情報)を作成・提供し、企業と消費者の関係性を構築していくマーケティング手法を指します。コンテンツと一口に言っても、オウンドメディアの記事コンテンツや動画コンテンツ、ホワイトペーパー、メールマガジンなど多様な種類があります。

 コンテンツマーケティングは、今や多くの企業で当たり前のように実施されていますが、DECAXが提唱された2015年前後あたりから日本で広まってきました。

 DECAXは、以下のような購買行動モデルです。

  • Discovery(発見)
  • Engage(関係作り)
  • Check(確認、注意)
  • Action(行動)
  • eXperience(体験と共有)

 コンテンツをきっかけに商品・サービスについて発見し、さまざまなコンテンツを通じて企業は消費者と関係性を構築していきます。そして、コンテンツの情報の真偽や正確性、価値を消費者が注意深く確認したうえで、自分にとって価値のある商品・サービスだと判断できたら購入します。さらに、商品・サービスを購入したあとも、使い方ガイドや事例集などのコンテンツを活用しながら商品・サービスの利用体験を重ねていき、利用した感想をSNSや口コミサイトなどで共有するのが、DECAXの流れです。

ZMOT(ズィーモット)

 「ZMOT」とは「Zero Moment of Truth」の略で、消費者は店舗を訪れる前にすでに何を購入するか決めているという理論です。消費者はインターネットで事前に商品・サービスについて詳しく調べて、購入すると決めてから店舗に訪れているため、コンテンツマーケティングをはじめとする施策で魅力やベネフィットを訴求することが重要だとされています。

 ZMOTが広く知られていますが、関連する購買行動モデルも紹介します。

FMOT(エフモット)

 FMOT(First Moment of Truth)は、消費者は店頭で商品・サービスを見てからわずか数秒間で購入するかどうか決めるという理論です。数秒間で消費者が納得できるような魅力的な訴求が必要となります。

SMOT(エスモット)

 SMOT(Second Moment of Truth)は、商品・サービスを利用した消費者は使い勝手や品質などの良し悪しを判断して、次回も購入するか決めるという理論です。商品・サービスの質はもとより、クーポンや利用継続割引なども活用してリピート購入を促しましょう。

TMOT(ティーモット)

 TMOT(Third Moment of Truth)は、何度も商品・サービスを使っていくうちに愛着がわき、ファンになるという理論です。リピート購入や利用継続をしてくれる消費者をいかに増やすかが、企業の成長に大きく影響するでしょう。

SNS時代の購買行動モデル

 SNSの利用率が高まるにつれ購買プロセスも変化していき、今までの購買行動モデルが当てはまらなくなってきました。情報の収集や共有をSNSメインで行うようになり、購買行動モデルもSNS中心の理論が提唱されています。

VISAS(ヴィサス)

 「VISAS」は、SNSの口コミをきっかけに購買プロセスが始まり、最後にはその消費者自らも口コミを発信するという購買行動モデルです。具体的には、以下の流れになっています。

  • Viral(口コミ)
  • Influence(影響)
  • Sympathy(共感)
  • Action(行動)
  • Share(共有)

 消費者はSNSの口コミを見て商品・サービスについて認知し、その口コミによって影響を受けて興味を抱きます。そして口コミに共感して「自分もほしい」と思うようになり、購入へと至ります。さらに購入した商品・サービスについての口コミをSNSで発信し、感想を共有するという流れです。

 SNSの台頭により、消費者は商品・サービス自体の魅力だけでなく、第三者の口コミにも大きく影響されるようになっているという特徴があります。そのため、インフルエンサーとタイアップしたり、投稿コンテストなど口コミを発信しやすいキャンペーンを開催したりするなどの工夫が求められます。

SIPS(シップス)

 「SIPS」は、SNSの情報に共感することから購買プロセスが始まるモデルです。

  • Sympathy(共感)
  • Identify(確認)
  • Participate(参加)
  • Share&Spread(情報の共有・拡散)

 他の購買行動モデルにはよく入っている「Action(行動)」は含まれていないのが特徴です。商品・サービスの購入だけでなく、SNS投稿への「いいね」などのアクション、イベントやコミュニティへの参加などを「Participate(参加)」という広い視点で捉えています。

 SIPSでは、SNSでたまたま共感できる投稿を見つけ、その情報について検索して詳しく確認します。そして多岐にわたるアクションで参加し、その参加体験をSNSで共有することで、新たな消費者へと拡散していくという理論です。

ULSSAS(ウルサス)

 「ULSSAS」は、UGCをきっかけにして始まる購買行動モデルです。

 UGCとは「User Generated Content」の略で、ユーザーが生成したコンテンツを指します。具体的には、SNSや口コミサイトの投稿などを指し、企業やインフルエンサーが発信する情報ではなく、ユーザーが能動的に発信する情報です。そのため、消費者にとって信頼性のある情報だと言えるでしょう。

 ULSSASの具体的な流れは、以下の通りです。

  • UGC(ユーザー生成コンテンツ)
  • Like(好印象)
  • Search 1(SNSでの検索)
  • Search 2(検索エンジンでの検索)
  • Action(行動)
  • Spread(拡散)

 UGCが投稿され、その投稿を見た消費者が好印象を持ち興味を持ちます。興味を持った商品・サービスについてSNSで検索してさらに関心を深め、さらに検索エンジンで商品・サービスの価格や購入できる場所などを検索します。そして商品・サービスを購入し、感想をSNSに投稿して拡散していくという流れです。

 「Spread」で投稿されるのはUGCのため、またULSSASのサイクルが循環していくという仕組みになっています。膨大な広告費やコンテンツ作成費をかけなくても、豊富なUGCがあれば自走していける点がメリットと言えるでしょう。

購買行動モデルを利用する際の注意点

 購買行動モデルはマーケティングの参考になりますが、利用する際には注意しなければならない点もあります。

 購買行動モデルは多くの消費者に当てはまると言えますが、絶対的なものではありません。特にインターネットで膨大な情報にアクセスできる現代では、消費者の行動も多様化しています。必ずしも購買行動モデルに当てはまらない場合もあるため、固執しすぎると自社のターゲット層のニーズや行動の傾向が見えにくくなるでしょう。

 また、商材によっても購買プロセスは異なります。たとえば、高単価商材の場合は購買プロセスが長期化したり、BtoB商材の場合は意思決定に多くの人が関わるため購買プロセスが複雑化したりします。

 そのため、購買行動モデルに固執しすぎず、自社の顧客の購買行動を分析して最適なモデルを柔軟に応用するのも一つの手です。

まとめ

 購買行動モデルは、消費者の思考や行動を理解し、最適なタイミングでアプローチするために役立ちます。

 時代によって消費者の行動は変化しているため購買行動モデルも次々と新しいものが登場しますが、AIDMAやAISASが古いからと言って必ずしも現代に当てはまらないとは言えません。自社の商材やターゲット層を分析し、最適なモデルを選定してマーケティングに活かしましょう。

 また、商材やターゲット層によっては購買行動モデルが当てはまらない場合もあるため、多様なマーケティング施策を展開して効果を測定していくことも重要です。

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この記事の著者

マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/02/26 10:10 https://markezine.jp/article/detail/47211

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