メディアとは
メディアとは、直訳すると「手法・手段、媒体」という意味です。そして、マーケティングにおけるメディアにも広告や販促の媒体としてのメディアと広告の手法の意味も含まれたメディア、2通りの使われ方があります。
前者の媒体としてのメディアには、マスメディア、Webメディア、ソーシャルメディアなどがあり、「どこに広告を出すか」「どのメディアで販促をかけるか」といった、広告や販促を展開する場を表します。
一方で、媒体の意味を持ちつつも広告手法としてのメディアはトリプルメディアと呼ばれ、マーケティング活動を行う企業と消費者の接点に着目し分類したものです。
広告手法としてのメディア「トリプルメディア」
トリプルメディアは日本で生まれた考え方です。SNSが誕生し、消費者同士がつながるソーシャルメディアが確立。これまでのような、企業から消費者への一方向のみのマーケティング活動やメディア戦略では、情報を効果的に発信したり、消費者ニーズをつかんだりすることが難しくなりました。
そこで、マーケティング活動をするうえで欠かせない消費者との接点別に「ペイドメディア」「オウンドメディア」「アーンドメディア」と分類するようになったのです。
では、「ペイドメディア」「オウンドメディア」「アーンドメディア」とはどのようなものなのか。詳しく紹介していきます。
ペイドメディアとは
ペイドメディアは、支払いを意味する「Paid」と「メディア」を組み合わせたもの。企業が広告枠を買い取って情報を発信する、従来どおりの手法といえます。
代表的なペイドメディア
ペイドメディアというとわかりにくいように感じますが、実際にはマスメディアへの広告やWeb広告などこれまでどおりの広告展開を指し、なじみ深い広告・販促手法です。
代表的なものには、テレビ、新聞、雑誌、ラジオの4大メディア、バナー広告（ディスプレイ広告）やリスティング広告、動画広告といったWeb広告を展開できるWebメディア、SNS広告があります。
＜代表的なペイドメディア＞
- 4大マスメディア（テレビ、新聞、雑誌、ラジオ）
- Web広告（バナー広告、リスティング広告、動画広告）
- SNS広告
- イベントスポンサー
- セールスプロモーション広告
広告を出稿できるWebメディアには、1次メディア、2次メディアといった種類があります。1次メディアは、自ら発信・取材した情報を扱うメディアで、主に新聞のニュースサイトを指します。2次メディアは1次メディアの情報を独自にまとめて配信するメディアです。Yahoo!ニュースやLINE NEWSなどのほか、各種まとめサイト、キュレーションサイトなども2次メディアに当たります。
このほか、イベントのスポンサーなどもペイドメディアに分類されるほか、POPや折込チラシ、ダイレクトメール、交通広告といった4大メディア以外を活用したセールスプロモーション広告もペイドメディアです。
ペイドメディアのメリット
ペイドメディアには大きく分けて4つのメリットがあります。
幅広いターゲットにリーチでき、認知拡大を狙いやすい
ペイドメディアは、すでに利用者が多数いるメディアに広告を出すため消費者に届きやすく、多様な層にアプローチが可能です。自社を知らない層にも知ってもらいやすく、認知拡大が狙いやすいといえます。
幅広いターゲットにリーチできますが、出稿する媒体を選ぶことである程度のターゲットの絞りこみもできます。マスメディアやWebメディアなど、それぞれの特徴を生かしたマーケティングが可能です。
即効性があり、Web広告は効果検証がしやすい
1つめのメリット同様に、多くの利用者がいるメディアで広告を展開するため、広告が表示されてからは早い反応が期待できます。テレビCMや雑誌広告であれば放映・掲載までの準備期間が必要となるものの、ひとたび公開されれば多くの人の目に留まりやすいためです。
また、Web広告の場合は広告の制作期間をテレビCMや雑誌広告より短くすることもできるほか、広告のクリック数などのデータを取り、効果の確認・検証ができます。
予算に応じて出稿量を柔軟に調整できる
予算にあわせて広告展開の規模が決められます。高価なイメージのあるテレビCMでもスポットと呼ばれる回数を決めたパターンや、ローカルテレビを選択すると、さらに検討しやすくなります。
Web広告であれば、さらに柔軟な調整が可能です。リスティング広告は1日の予算を決めることができ、表示されるごとに費用が発生します。予算に達した段階で出稿が止まるなど、予算管理もしやすいのです。さらに、広告の効果を計測して改善を繰り返しやすく、PDCAを回しやすいともいえるでしょう。
広告内容や発信内容を自社で決められる
基本的にCMや広告、バナーは企業が制作会社に依頼して作成し、それらを出稿します。自分たちで盛り込みたい内容を表現できるため、情報量や内容をコントロールしやすいのもメリットです。
ペイドメディアのデメリット
ペイドメディアならではのデメリットもあります。
企業→消費者への一方向のコミュニケーション
ペイドメディアで展開する広告は、企業から消費者に向けた情報発信、情報提供です。消費者はその情報を受けとるだけの、一方的なアプローチになります。テレビCMや雑誌広告などは消費者の意見や反応の確認はむずかしく、Web広告であっても好評な理由を探ることはなかなかできません。
それだけに、広告制作時や出稿時のターゲティングを慎重に行う必要があります。
Web広告は競合が多く、差別化が難しい
Web広告の中でも検索画面に表示されるリスティング広告は競合が多く、人気のキーワードは入札価格が高く設定されています。それなりの結果を出すには、広告予算がある程度必要です。また、同じキーワードで表示される競合他社との差別化が難しい点も留意しておきましょう。
ペイドメディアの活用ポイント
ペイドメディアには、それぞれメリットとデメリットがありますが、キャンペーンなどの短期間に認知拡大を狙いたい場合には適しているメディアです。
実際にペイドメディアを活用する場合には、2つのポイントを押さえておきましょう。
ターゲットを明確化し、最適なチャネルを選択する
幅広いユーザーにリーチできる一方で、狙いたいターゲットにピンポイントにアプローチするのは難しいペイドメディア。出稿の目的を明確にし、ターゲットをより具体的に絞り込むと、広告の内容や出稿するチャネルがおのずと絞られてきます。高齢者であれば新聞広告の影響力は大きく、10代から20代であればWeb広告やSNS広告との親和性が高いといえます。さらに、カジュアルなファッションに興味がある10代女性などとターゲットのペルソナをつくることで、絞り込みが可能です。特にWeb広告やSNS広告であれば、閲覧履歴や購買履歴などから、よりターゲットに近い人に広告を見てもらえます。
オウンドメディアやアーンドメディアなどほかのメディアとも連携する
限りある広告枠の中ですべての情報を伝えることは不可能に近いものですが、ペイドメディアは認知拡大に力を発揮するため、より詳しい情報への誘導が可能です。ペイドメディアは集客用やブランディングと位置づけ、後述するオウンドメディアやアーンドメディアと連携すると費用対効果を最大限に発揮できます。
オウンドメディアとは
オウンドメディアは、所有を意味する「owned」と「メディア」を組み合わせたもの。トリプルメディアのうちのひとつとして使う場合は、自社で保有するメディアの総称となります。
一方で、公式サイトとは異なる企業の情報発信サイトの呼称でもあります。たとえば、健康食品を扱う企業による健康・美容の情報サイトなどがこれにあたります。その場合、自社製品の名前を出した宣伝はせずに、健康や美容全般の情報提供に務めるのが一般的です。また、自社の商品の開発背景などを開設するブログなどもオウンドメディアのひとつです。長い時間をかけて自分たちでつくり、育てていくメディアともいえます。
代表的なオウンドメディア
自社サイトに加え、広義には会報誌やパンフレットなどもオウンドメディアに含まれます。なお、自社サイトも近年では、コーポレートサイトとブランドサイトで分ける企業が増えており、複数のオウンドメディアを持つ企業も多いのです。
＜代表的なオウンドメディア＞
- 自社の公式サイト
- 自社が展開する情報提供サイト
- ブログ
- 広報誌、会報誌
- パンフレット
オウンドメディアのメリット
オウンドメディアは大きく3つのメリットがあります。
貴重な資産になる
オウンドメディアは立ち上げ後すぐは、認知されるまでに時間がかかります。しかし、有用な情報を発信するサイトとしてユーザーに認知されてサイトの価値が上がれば、検索サイトからの自然流入が見込めるようになります。つまり、ペイドメディアを利用しなくとも集客ができるようになるのです。アクセス数が増えれば、オウンドメディアを活用してアンケートを実施するといったマーケティングにも利用できるようになります。
また、コンテンツを蓄積していくため、メディア自体が貴重な資産となり、結果として費用対効果が高いメディアであるといえるでしょう。
自社の潜在顧客、見込み客にアプローチできる
もともと自社の商品やサービスを利用している、または興味を持っている人が訪れてくれることが多いオウンドメディア。すでに顧客であるユーザーはもちろん、見込み顧客の取り込みが狙えます。
ブランディングが強化され、差別化や顧客ロイヤリティが高まる
サイトの企画、デザイン、コンテンツ、サービス内容を自社で決めてコントロールできるため、ブランディングを確立しやすいのがオウンドメディアです。コンテンツ次第では、競合ブランドとの差別化も可能です。ユーザーと双方向のコミュニケーションを図ることも可能で、顧客ロイヤリティの向上にも貢献してくれるでしょう。
オウンドメディアのデメリット
小さなデメリットはいくつかありますが、一番気を付けたいのは効果がすぐに見えてこない点です。
効果がでるまでに時間がかかり長期的な運用が必要
オウンドメディアはゼロからつくり、育てていくメディアです。最初は知名度がないためペイドメディアと組み合わせて流入をはかるなど、制作・運用費とは異なる予算も必要です。ユーザーに飽きられずに定期的な訪問をしてもらうには、魅力的な記事やコンテンツを提供し続けなければなりません。ライティングを外部に依頼すると制作に関するランニングコストが発生し、内部で行う場合は継続的に更新し続けるためのしくみづくりなども必要となってきます。
オウンドメディアの活用ポイント
多くの企業がなんらかのオウンドメディアをすでに持っています。ゼロからつくるだけではなく、既存サイトの改善を図ることも重要です。
良質なコンテンツを定期的に配信し、長期的視点で運用する
オウンドメディアはブランドを育てていくのと同様に、長期的な視点、計画での運用が求められます。まずは、顧客ロイヤリティの向上など最終的な目標を明確化し、具体的な数値とともにユーザーの変化といった目に見えにくい効果もあわせてマイルストーンを設置して進めていくとよいでしょう。
ユーザーファーストを意識する
自社が発信したい情報を提供できる点がオウンドメディアのメリットのひとつですが、大切なのはユーザーファーストの視点です。ユーザーに繰り返し訪れてもらうことでブランドのファンになってもらうには、ユーザーが求める情報が何であるか、どのようなデザインや構成が見やすいのかといったユーザー視点が欠かせません。
アーンドメディアとは
アーンドメディアは、獲得を意味する「earned」と「メディア」を組み合わせたもの。InstagramやXなどのSNS、商品比較サイトやレビューなど消費者自身が情報を発信するメディアや、マスメディアなどに報道や記事として紹介してもらう場合も含まれます。特にSNSをはじめとした個人による情報発信は、自社の商品やサービスを見たり利用したりした消費者が自由に感じたことを発信するため、企業側でのコントロールはできません。しかし、ときに爆発的な情報拡散力を発揮します。
なお、アーンドメディアは後述する「PESO」という現在主流になりつつあるメディア概念においては、意味合いが限定的となります。ここでは、トリプルメディアにおけるアーンドメディアの解説をします。
代表的なアーンドメディア
SNSを中心としたアーンドメディアの中でも、InstagramやXなどが日本人の利用率が高くなっています。このほか、食べログやGoogleMapなどのレビューサイトや口コミサイト、はてブなどのソーシャルブックマークや、YouTubeなどの動画投稿サイトもアーンドメディアとして活用されています。
- 各種SNS（Instagram、X、LINEなど）
- 個人のブログ
- 口コミ、レビューサイト
- 動画投稿サイト
アーンドメディアのメリット
アーンドメディアには3つのメリットがあります。
情報の拡散力があり、伝達スピードが速い
SNSの主な特徴に、いいねやリプライなどのおすすめ機能があります。ほかの人の投稿内容を気軽に他者にすすめることができるため、情報が一気に拡散されるなど認知拡大が期待できます。うまく情報を拡散できれば、非常に費用対効果の高い施策となるでしょう。
ユーザーとコミュニケーションがとれる
アーンドメディアは誰でも情報が発信できるしくみがあり、ダイレクトメッセージやコメント機能といった相互にコミュニケーションをはかれる機能を持つものが多くあります。企業自らがSNSの公式アカウントを持つことで、ユーザー（消費者）は気軽にコメントを付けやすくなり、お客様窓口やアンケート調査だけでは得られない本音に触れられる可能性があります。
信頼を得やすい
ペイドメディアやオウンドメディアで発信される情報は、企業側からの一方的な情報です。一方で、アーンドメディアの情報は企業とは利害関係のない第三者が発信しているため、情報を信用してもらいやすい土台があります。情報発信者の中には専門的な知識を持つ人や、好きが高じてさまざまな商品やサービスを試したうえで紹介する人もいます。フォロワーを1～100万単位で抱えるインフルエンサーもおり、アーンドメディア上の評判が購買意欲を刺激することも多々あるのです。
アーンドメディアのデメリット
アーンドメディアには、気を付けておきたいデメリットもあります。
情報のコントロールができない
情報の拡散はユーザーが主体のため、企業側でのコントロールはできません。そのため、ベストなタイミングで集客に成功するかどうかはわかりません。ときには、正しくない情報やネガティブな情報が広がってしまう「炎上」の懸念があることも注意しておきたい点です。
効果が出るまで時間がかかる
アーンドメディアは第三者による高評価の獲得が必要です。しかし、高く評価してくれた人がSNSなどで情報を発信してくれるとは限りません。情報発信をしたくなるような仕掛けが必要であり、その結果が出るまでに時間がかかることもあります。
また、企業側からSNSを立ち上げたり、インフルエンサーとコラボレーションしたりして情報発信をする場合も、オウンドメディア同様に長期的な視点が必要です。
アーンドメディアの活用ポイント
「炎上」という企業として避けるべきリスクがあるアーンドメディア。活用のポイントは、炎上対策になります。
発信する情報は、内容、表現などを慎重に確認する
情報や拡散のコントロールができないアーンドメディアでは、ネガティブな印象が広がる「炎上」は避けなければなりません。ネガティブな発言を見かけたら、大きな話題になる前に対処することが肝要です。
また、情報を発信する場合は、誤解を生むような表現ではないか。正しくない情報ではないか。SNS担当者には、ITリテラシーとともに研修を行うなど、企業としてのフォローが求められます。加えて、炎上してしまった場合の対策なども事前に検討しておくとよいでしょう。
新基準のPESOについても知っておこう
トリプルメディアは日本国内で通用するマーケティング用語であり、英語圏ではそれぞれ3つの頭文字とメディアの「M」を組み合わせた「POEM」と呼ばれています。そして現在は新基準の「PESO」が登場しています。
PESOとは
PESOとは、トリプルメディアに「シェアード（Shared）」を追加し、「Paid」「Earned」「Shared」「Owned」の頭文字からとったものです。現在、アメリカなどではマーケティングにおいてPESOの考え方が主流となっています。
注意したいのは、PESOで追加されたシェアードメディアが、トリプルメディアでいうアーンドメディアである点です。トリプルメディアで解説したアーンドメディアの概念とは変わっているため、混乱を招きやすくなっています。
PESOで使うシェアードメディアとは
PESOのひとつである「シェアードメディア」。トリプルメディアから新しく追加されたメディアで、PESOにおいては共有・拡散ができるメディアを指します。つまり、InstagramやX、YouTubeなどのSNSのことです。
前述のアーンドメディアの項目では、SNSは口コミサイトやブログなどとひとくくりでアーンドメディアとなってしましたが、PESOでは独立したメディアとして扱われます。
PESOで使うアーンドメディアとは
PESOにおいて、トリプルメディアから意味合いが変わるのがアーンドメディアです。
獲得を意味する「earned」には「第三者からの信頼を獲得する」という意味合いが含まれています。アーンドメディアからSNSが抜けたことで、より公平性・報道性の高いメディアからの評価獲得に特化されました。
たとえば、マスメディアなどに報道として情報を扱ってもらう、特集コーナーや編集記事といったパブリシティーで取り上げてもらうなどです。この場合、広告とは異なりメディアの担当者が数ある情報の中から情報を選び、改めて紹介をしてくれます。その番組を見た人は、信頼するメディアからの紹介として、情報を受け入れやすくなるのです。この心理はマスメディアに限らず、レビューサイトや口コミサイト、個人のブログなどにも当てはまりますが、口コミがアーンドメディアなのかシェアードメディアなのかは意見が分かれているようです。
どちらにしても、トリプルメディアにおけるアーンドメディア、PESOにおけるシェアードメディア同様に、企業側で情報発信のコントロールをすることは困難です。企業としては、プレスリリースなどを最適なタイミングで発行するなど、各媒体の特色に合わせた積極的な働きかけが大切です。
それぞれを組み合わせたマーケティング活動を
トリプルメディアおよびPESOは、単体で取り組むのではなく、組み合わせることで効果がさらに高まります。
各メディアを組み合わせるときは、最終的に呼び込みたい軸となるメディアを決めるとよいでしょう。多くの場合は、自社サイト＝オウンドメディアとなります。このとき、ブランドの公式サイトなのか、コーポレートサイトなのか、販売サイトなのか。集客するオウンドメディアの種類はマーケティングの目的によって異なってきます。
たとえば、キャンペーンを行うのであればキャンペーンの特設サイトをつくるだけではなく、ペイドメディアで周知を図り、流入数を増やすことも必要です。このときに、キャンペーン専用のSNSアカウントをつくり、アーンドメディア（シェアードメディア）とも組み合わせができます。
それぞれのメディアの特徴、メリット・デメリットを知り、目的に合わせたメディア選択をしていきましょう。
