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MarkeZine Day Premium O2O Special(AD)

企業のマーケティング活動にO2Oの視点は不可欠な時代へ
カギはブランド体験の提供とクラウドサービスの活用

 7月25日(水)に開催されたMarkeZine Day 2012 Premium O2O Specialは、タイトルの通り、急激に活況を呈しているO2Oをクローズアップ。早い段階でこれに着目し実績を上げている日本コカ・コーラ、強力なソリューションで時代に応じた企業のマーケティング活動を支援するNTTコミュニケーションズ、そしてWebマーケティングに本腰を入れ始めた第一興商による講演が行われた。

O2Oを単独で捉えず全体のコミュニケーションプランに組み込む

 「“オンラインtoオフライン”の概念自体は以前からあったが、言葉としては世界では2008年ごろから広がった」と日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング&ニュービジネス iマーケティング&システムイノベーション バイスプレジデント 江端 浩人 氏。日本では今年になって急激に広がった感があるが、この理由について江端氏は、スマートフォンの拡大を第一に挙げる。

日本コカ・コーラ株式会社
マーケティング&ニュービジネス iマーケティング&システムイノベーション バイスプレジデント
江端 浩人 氏
日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング&ニュービジネス iマーケティング&システムイノベーション バイスプレジデント 江端 浩人 氏

 「GPS機能などはフィーチャーフォンにも備わっているが、常にオンラインに接続している状態を実現し、処理能力も明らかに高いスマートフォンがO2Oを後押しする力は大きい

 2つ目の理由は、“ゲーミフィケーション”という概念の理解と浸透だ。「単にWebから店舗に誘導するのではO2Oの実現とは言えない。オンラインとオフラインを行き来する仕組み自体が楽しいものにこそユーザーが集まる。また、その楽しい体験をユーザーがSNSで発信し、他者を巻き込んで広がっていく構造も重要」と江端氏。さらに、ビッグデータの有用性に注目が集まっていることも、ユーザー動向データを多く得られるO2Oに企業が関心を寄せる要因だ。

 だが、O2O施策を単独で検討するのは薦めない、と江端氏。「O2Oの概念をキャンペーン全体の一要素として捉え、全体の効果を大きくするためにどう取り込むかという視点で考える方が成果が大きい」。

 具体的にコカ・コーラでは、キャンペーンを次のようなステップで考えている。目的に応じて、まず自社でコントロールできるオウンドメディアを整備し、それがSNSを中心とするアーンドメディアでどう広げられるかを見通す。足りない部分やさらに影響力を大きくしたい場合はペイドメディア、いわゆる広告で補う。加えて、O2Oを“シェアードメディア”での施策に取り入れている。これは、同社の商品が小売店や飲食店を通して生活者に届くことから、それらの店舗を各社とシェアするメディアとして捉える同社ならではのコンセプトだ。

 実際に、直近では同社商品を扱う日本マクドナルド、およびJリーグとタッグを組んだ施策「マイJプログラム」を実施。会員1,000万人を擁するコミュニティサイト「コカ・コーラ パーク」内の「Jリーグサポーターズパーク」にて好きなチームを登録すると、試合の勝敗に応じてマクドナルドで使えるクーポンが得られる仕組みだ。勝敗というリアルな事象を絡めたことで、ユーザーに期待感と共に利用され、3社とも手応えのある結果を得ているという。

 「O2Oの大きな落とし穴は、単純に値引きというインセンティブで集客すると、顧客の質が下がり、マーケティング原資が磨り減る結果を導いてしまうことだ。オンラインでブランドを体験し、店舗ではロイヤルティが上がる施策を全体のコミュニケーションプランに組み込むことが重要」と、注意点も述べられた。

 他にも、上記の注意点を踏まえた企画「からだ巡茶 汚れたプリンセス診断」(※クーポン配布は終了)や、新たなソーシャルサービスとして広がりつつあるLINEを使ったオリンピック応援企画、アメリカ・ショップキック社の来店客にアプローチするサービスなど多数の事例が紹介され、マーケティング施策の立案に活かせる示唆に富んだ講演となった。

顧客がO2Oをシームレスに行き来するなら企業もそれに対応すべき

 続いて、NTTコミュニケーションズ株式会社 アプリケーション&コンテンツサービス部 マーケティングソリューション部門 部門長 塚本 良江氏より、スマートフォンとソーシャルで実現するO2Oマーケティングについて、同社がサポートした事例を踏まえて解説された。

NTTコミュニケーションズ株式会社
アプリケーション&コンテンツサービス部 マーケティングソリューション部門 部門長
塚本 良江 氏
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 アプリケーション&コンテンツサービス部 マーケティングソリューション部門 部門長 塚本 良江 氏

 同社では高い技術力と豊富なソリューションで企業のオンラインマーケティングを支援しているが、塚本氏は特に同社が「Bizマーケティング」と呼称している、クラウドベースで提供する様々なレイヤーでのマーケティングサービスを担当。O2Oというと、狭義ではターゲティングメールやクーポンなどのインセンティブでオンラインからリアルの世界へ誘導することを意味するが、塚本氏によると同社では大きな概念として、オンラインとオフラインの両方に集客することだと捉えているという。

 「江端氏も述べられたが、スマートフォンとソーシャルメディアによって生活者自身が2つの“O”をシームレスに動くようになっている。企業のマーケティングは顧客がいる場所を見つめなければいけないのだから、顧客がそのように行き来するなら企業もそうするべき」と塚本氏は指摘する。

 「事実、スマートフォンは爆発的なスピードで普及が進んでいる。メディア接触時間を見ても、2010年から2011年にかけてはPCさえ接触時間が減る中でスマートフォンとタブレット端末は倍以上に伸びている(※参照:アスキー総合研究所「戦後最大のメディアのイス取りゲームが始まっている」)。また、スマートフォンが確実にオンラインへの接触のハードルを下げていることもあり、ソーシャルメディアの接触時間も大幅に増大している。こうした変化を踏まえると、特にスマートフォンを介して顧客と効果的に接触を図ることが、今後のマーケティング施策の大きなポイントになる」

 まだO2Oという言葉が使われ始める前、2007年にローンチした事例として、塚本氏は日本マクドナルドとNTTドコモが合弁会社を設立して取り組んだ「かざすクーポン」を挙げる。システム構築を中心に延べ300億円が投下され、今や会員は2000万人に上りOne to Oneマーケティングも可能になっているが、当然ながらどの企業も真似できる規模ではない。

 だが、前述のように今や企業はそのマーケティング活動にO2Oの視点を取り入れざるを得ない。そこで、同社ではそうした状況に即し、数万円単位と非常に安価で取り組めるクラウドO2Oサービス「モバイルウェブ」の提供を開始している。

数万円単位でO2O施策に着手できるクラウドサービス「モバイルウェブ」

 スマートフォンを介したWeb接触で顧客を捉える、と一言で表しても、企業の担当者が施策を検討するのは、簡単にできることではない。ノウハウがない点も、企業が関心を持ちながらも着手に躊躇する部分だ。

 その点を、「モバイルウェブ」では様々な取り組みを管理サイト上の簡単な操作で行えるように整備している。例えばスマートフォンサイトを作成したり、QRコードや空メール、店頭に据えたカードリーダライターなどのタッチ端末を介して会員を集めたり、さらにメルマガのターゲティング配信のコントロールも可能だ。クーポンやポイントの発行、さらにソーシャルメディアとの連携もサポートしている。

 こうした施策は、単発で終わらせないことが肝要だ。それを踏まえたモバイルウェブの特徴として、塚本氏は「マーケティングシナリオに応じた施策を実施できる」ことを挙げる。クーポンやポイント付与は使いようによってロイヤルカスタマー化を促すことができるが、あるユーザーが店舗で端末に触れた、クーポンを使ったなどの情報が蓄積されていくため、優良顧客化のシナリオを描き、属性や行動別に配信を切り替えて、効果的にCRMを行えるのだ。

 モバイルウェブと併せて、購買行動に大きな影響を及ぼしているSNS上の口コミを分析し、効果的にマーケティングに活かせる仕組み「CoTweet」も導入企業に好評だという。企業のSNS活用の目的について、塚本氏は「集客と対話の2種類がある」と指摘する。前者は短期的なプロモーション目的、後者は時間をかけて顧客との関係性を構築する目的だ。

 同社が米国企業と提携して支援している、健康志向のスーパー「ホールフーズマーケット」では、以前の1アカウントで一方的な発信をしていたTwitterを改め、全米270店舗、5万人の従業員を擁する規模を活かして、現在では顧客との対話を重視して150ものアカウントを運営している。

 直接的に購買を促すよりも、地域に溶け込み、対話を通して信頼を勝ち取ろうという考え方にシフトした結果、こうした施策に至った。「実際に、投稿の85%が顧客との会話。料理のレシピや健康に関する質問など、多様な問いかけに答えることで親近感が増し、売上も上がっている。今、特にアメリカでは企業のSNS活動が対話型にシフトする傾向にある」と塚本氏。また、SNS活用の成功事例として各メディアで目にする機会が多いデルタ航空では、顧客の投稿内容に応じて適切な担当がすばやく対応できる機能を活用し、成果を上げているという。

 「今やほとんどの施策でデジタルデータが取れるので、履歴を分析すれば、O2Oを行き来しながら顧客とのエンゲージメントを構築することができる。スマートフォンとソーシャルの浸透によって、ベタかもしれないが真摯なコミュニケーションが今後のマーケティングの中心になるのではと考えている」と、塚本氏は展望を語った。

資料ダウンロード

 NTTコミュニケーションズ株式会社の塚本氏、株式会社第一興商の小田切氏の講演資料ダウンロードが可能です。ダウンロードはこちらからどうぞ(※クリックすると別サイトへ遷移します)。

さらなる飛躍を目指しWeb戦略に本腰を入れた「ビッグエコー」

 最後に、わずか1年ほどで大きな成果を上げているというカラオケ店「ビッグエコー」のO2O施策をテーマに、第一興商 執行役員 店舗事業本部副本部長の小田切一央氏が登壇した。

株式会社第一興商
執行役員店舗事業本部 副本部長
小田切 一央 氏
株式会社第一興商 執行役員店舗事業本部 副本部長 小田切 一央 氏

 ビッグエコーや通信カラオケシステム「DAM」、15業態にも及ぶ飲食事業などを通して生活者に親しまれている第一興商。特に全国300店舗を展開するビッグエコーは、競争の激しい業界ながら、長らく高いシェアを誇っている。

 だが、実は昨年まで、同社はビックエコー独自のWebサイトを持っていなかったという。企業としては多岐に渡る事業を展開しているため、自社サイトの中の一事業としてカラオケ事業に関するページを設けていた。しかし、多くの人が日常的にWebに接触している現状や、競合企業の取り組みを踏まえ、「一番後発になってしまったがWebへの投資は不可欠」(小田切氏)と判断、昨年7月にオープンした。

 ビッグエコーは、旗艦ブランドであるアルファベット表記の「BIG ECHO」に加え、手ごろな料金設定で親しみやすさを重視したカナ表記の「ビッグエコー」、そして特に激戦区の繁華街でお得感を打ち出している「ビッグエコー25」の計3ブランドを運営している。小田切氏によると、カラオケを利用するシチュエーションは、学校帰りや飲み会後などに駅前の看板やネオンを見渡し、知っている店舗に入るというケースが多いことから、看板やマス広告などでブランドが知られていることが重要だという。

 言い換えれば、これまで同社は認知度の向上に集中投下していたので、Web施策に着手しなくても業績を伸ばすことができたわけだ。「だが、特に若年層のスマートフォンを中心とするオンラインへの接触状況を見ると、今後のさらなるシェア拡大にはWebを活用した継続的な関係性の構築が必要だと考えた。また、この数年で“お一人様”利用が急激に増加し、色々な顧客利用シーンが増えてきている。こうした変化に対応するためにも、より多くのチャネルで顧客に接することが欠かせないと判断し、Web施策に大々的に着手した」。

“ビッグエコーマン”の話題でマス広告やSNSから店頭へ誘引

 単なるWebサイトの立ち上げだけでなく、スマートフォンを介した店舗への誘引などオンラインとオフラインを行き来する包括的なプロモーション施策の実現も加味し、同社はWeb戦略のパートナー選択に際して4つの条件を設けたという。コスト、サポート体制、セキュリティ、そして信頼性だ。この4点のバランスを考慮し、6社を比較検討した結果、NTTコミュニケーションズへの依頼を決定した。

 まずWebサイト、次いでモバイルサイトを開設し店舗検索や予約システムなどを整備。NTTコミュニケーションズのソリューションにより、情報の更新やSEO対策などに手間がかからないながらもPVはほどなく以前の10倍に。Web予約は新たな収入源となった。

 モバイルサイトの開設・運営には、「スマホ集客ソリューション」と「モバイルウェブ」を導入。効率的なメルマガ配信により、会員数は1年で56万人にも達し、これを介した売上は月間3,000万円以上に。また、スマートフォンを会員証とする制度を導入したところ、予想以上に会員化が進んでいる上に、利用率が既存のカード会員の7%に比べて20%と高く、常に携帯しているスマートフォンならではの事例となった。

 「特にモバイルに関しては社内にノウハウがなく、担当者も一人という厳しい状況でメルマガやスマートフォン対策に一気に着手するのは懸念が大きかった。効果の見込みも半信半疑だったが、ここまでの結果が得られていることに手応えを感じている」と小田切氏は語る。

 個別の施策に関しては約1年の運用を通して改善を続けており、モバイルクーポンの利用率も開始時は0.08%だったが直近では1.29%と、確実に向上している。同時に、属性ごとの利用状況を次のキャンペーン内容に反映させている。

 サイトを整備した後、昨年11月に同社はオンラインでのユーザー動向を加味した本格的なキャンペーンに着手。タレントのローラ、オリエンタルラジオの藤森慎吾らが出演するテレビCM上で、彼らとともにカラオケを楽しむビッグエコーのキャラクター“ビッグエコーマン”への注目を促したのだ。狙い通り、SNS上では誰が扮しているのかが話題になり、店頭で放映する動画で正体を明かしたことから、店頭への集客に効果を発揮したとともに話題にもなった。

 今後の目標は、早期にメルマガ会員100万人を達成し、Web施策による年間売上の底上げを目指すことだという。この春から開始したFacebookとTwitterの運用を通して、ソーシャルメディアを介したファン作りにも力を入れていく。小田切氏は「生活者がオンラインとオフラインを行き来する今、店舗を軸にマス広告やキャンペーンなど様々な接点で顧客とのコミュニケーションを創出し、サイトやSNSなどのオンラインを介してまた店舗への誘導を促していくことができる。新たなメディアが加わることで、さらなる店舗への流入を見込んでいる」と語り、講演を締めくくった。

資料ダウンロード

 NTTコミュニケーションズ株式会社の塚本氏、株式会社第一興商の小田切氏の講演資料ダウンロードが可能です。ダウンロードはこちらからどうぞ(※クリックすると別サイトへ遷移します)。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2012/08/27 14:01 https://markezine.jp/article/detail/16159