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統括編集長インタビュー

全役職を撤廃、The Media Growth Partnerを目指す
サイバー・コミュニケーションズ新澤社長、小林副社長インタビュー


 Yahoo! JAPANの「爆速経営」をはじめ、多くの企業が従来組織のあり方に疑問を感じ、組織改革に取り組んでいる。今年3月、サイバー・コミュニケーションズは大規模な組織改革を発表。そのねらいについて、新澤社長、小林副社長にインタビューを行った。

"The Media Growth Partner"を目指して

サイバー・コミュニケーションズ
代表取締役社長 最高経営責任者
新澤明男氏

新澤:サイバー・コミュニケーションズ(cci)は今年で第19期を迎えます。日本のインターネット専門の広告会社としては、おそらくデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムと並んで古い会社だと思います。

 そうした歴史の中で、昨年、私が社長に就任することになり、新たに"The Media Growth Partner"という経営方針を掲げました。メディアの収益源としての広告には今後もコミットメントしていきますが、メディアがさまざまな環境変化に直面する中で、我々がやるべきことも変化していると感じています。"The Media Growth Partner"は、「メディアの成長そのものを支えるパートナー」を目指していくというメッセージなのです。

― そのために、組織再編に踏み切ったと。

新澤:18年間という時間の中でピラミット型の組織構造となり、このままでは構造改革が必要になったときに多くの混乱が生じるだろうということが予測できました。そこで、今後も起こるであろう変化に対応するため、組織を柔軟に組み替えられるようにしたいと考えたのです。

― 具体的にはどのような組織構造になったのでしょうか。

新澤:cciには約700名の社員がおり、18個の本部がある、きわめて縦割りの組織でした。これを機能ごとに整理し、新たに「ディビジョン」という単位で人員を割り振っていきました。

 「メディア・ディビジョン」という組織に、メディアに対してコンサルティングを行なう人員を多く配置しています。cciは、自社開発のプラットフォームも持っていますが、総合的に見てどれが最適かをコンサルティングする体制にしていこうとしています。

 「セールス・ディビジョン」は、広告主と一緒にKPI達成に向けて戦略を作っていきます。「プランニング・ディビジョン」はきわめて内勤に近い組織で、セールス・ディビジョンが得たクライアントの要望をもとに、広告のプランニングや運用品質の担保のために、データを使ってどう回していくのかを戦略的に考える立場にあります。

若いネット広告業界のキャリアパスを考える

新澤:今回は役職制度の廃止も行いました。いわゆる執行役員や本部長、部長といった役職を完全になくしたのです。

― 役職全廃ですか。それは大胆ですね。

新澤:組織を機能させるのにポストは必要ですが、それによって、なかなか組織を大胆に変えられないケースがあると思います。“チームのキャプテン”といった役割としてのポジションはありますが、それはあくまでも「役割」であって「役職」ではないという考えのもと、組織を再編しました。

― 役職によって硬直化していた体制を、ラベルをはずすことで、柔軟でフレキシブルな対応ができるような組織にしたということですね。

新澤:もうひとつ大事な点は、この業界は非常に若いということ。おそらくネット系の広告会社の部長クラスは、大体30代前半ぐらいでその職に就いている方が多いと思います。現場の最前線にいた人財が、いきなり「あなた部長職ですよ」と30歳ぐらいで言われる。ビジネスパーソンとしての人生の初期の段階でそういった役職につくと、そこからマネジメントしかできなくなってしまう。それは極めてもったいないこと。役職というのを一度なくすことによって、彼らが長くこの業界で働けるようなキャリアパスを作るというのも、ねらいのひとつにありました。

― 社内の反応はどうだったのでしょうか。

新澤:部長や本部長として指揮する立場から、現場に戻って業務を行っている者も多く存在します。実際に彼らの話を聞いてみると、今はいろいろな思いもあるようですが、現場を楽しんでいる部分もあると思います。その一方で、役職というのは仕事するうえでのモチベーションの源泉でもあります。そのために、いま社内の人事制度や評価制度を変えようとしています。小林は副社長としてcciの戦略部門を見ていましたが、4月から「ストラテジー・ディビジョン」の責任者として、全社の経営課題の戦略とともに人財戦略も担当しています。

サイバー・コミュニケーションズ取締役副社長 最高戦略責任者小林千秋氏
サイバー・コミュニケーションズ
取締役副社長 最高戦略責任者
小林千秋氏

小林:今まではビジネスの成長とともに会社の規模も拡大していき、ポジションも増えていく構造でした。今は、この規模で回していくのが適切だろうという規模感が次第に見えてきたところです。

 社員がキャリアアップし、長く働いていけることも視野に入れ、実力を発揮できる役割を社が用意するとともに、社員自らも生み出していけたらと思います。また、新たなビジネス・サービス開発や最先端のテクノロジーなど、チャレンジしたい人がチャレンジできる柔軟な構造を作っていこうとしています。

 もうひとつはサステナビリティですね。今後50年100年といった部分を見据えた組織構造、人財育成、キャリアプランを考えるうえでの最初のスタートと考えています。

― ネットビジネスが成熟期にあり、ネット広告も一般的に定着し始めている中で、業界としても黎明期とは異なる体制を整える流れにあると言えるのでしょうか。

新澤:運用型広告、いわゆるプログラマティック・バイイングが台頭してきて、オペレーションの構造的な改革が迫られています。広告主からの要請はますますROIに対して厳しくなっていくので、今までのように人を増やして数字を上げるというよりも、オペレーション効率を最大化し、生産性を上げていくことが求められています。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/04/23 22:42 https://markezine.jp/article/detail/19711

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