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従来比120%の成約率を実現!カゴメが取り組む、通販事業「つぶより野菜」のオフライン販促成功事例

 多彩な野菜加工品を展開する大手総合食品メーカーのカゴメでは、自社通販「健康直送便」で展開する通販専用商品の販促にエクスペリアンジャパンの消費者セグメンテーションデータ「Experian Mosaic Japan」(エクスペリアン モザイク ジャパン)を活用しています。2015年4月に行った野菜飲料「つぶより野菜」の新規顧客獲得を目的としたオフライン施策である「折込チラシ」では、配布エリアの最適化に貢献。メインターゲット層へ効率的にリーチすることができました。

健康ニーズの高まりに応え、通販による直販でオリジナル商品を展開

カゴメ株式会社 マーケティング本部 通販事業部 原浩晃氏
カゴメ株式会社は、1899年の創業以来、トマトを中心に、トマトケチャップや野菜ジュースなど自然の恵みがもつ価値を活かした様々な商品の開発・提供を通じて、人々の健康的な食生活の実現に貢献しています。1998年には「カゴメの通信販売 健康直送便」をスタート。健康志向の強い層に向けて、市販品にはないこだわりを凝縮させた商品を開発・販売しています。

 1970年頃にはじまり、そのときどきにより形を変えながらも続く「健康ブーム」。1990年代前半には、野菜の栄養効能に対する関心が高まり、その栄養を継続し摂取する方法の一つとして野菜ジュースの市場が急成長しました。カゴメ株式会社(以下、カゴメ)は、1995年に野菜果実ミックスの「野菜生活」を発売。「健康にいいものは不味い」とされがちだった野菜飲料を、毎日続けられる “おいしいもの”へと転換し、誰もが手軽に摂取できる“国民健康飲料”として普及・浸透させてきました。

 同社ではさらに1998年、独自の通信販売チャネルである「カゴメの通信販売 健康直送便」をスタート。以来、「自然の恵みにあふれた本物を、お客様に直接お届けしたい」という思いのもと、市販商品とは別に、素材にこだわった独自の飲料やサプリメントなどの商品を提供しています。通販事業部で販促を担当する原浩晃氏は次のように語ります。

「カゴメの通信販売 健康直送便」

 「通販事業が開始された当時の思いは、今も脈々と受け継がれています。生活の多様化やインターネットの普及などもあり、通販の果たす役割は今後ますます大きくなると考えています。また、市販商品との差別化のためにもこだわっているのは“独自性”。たとえば、野菜素材の産地や品種、味や食感、風味づくりなどにこだわることで、健康志向の強いお客様のニーズにも応えられる独自の商品につながっていると思います。私たちの課題は、このこだわりの内容をしっかり伝え、その価値について “特定の顧客層”にいかに気づいていただき、いかに続けていただくかということですね」

素材や食感にこだわった野菜飲料「つぶより野菜」と特徴的なターゲット像

 2014年6月、「健康直送便」では新商品としてサラッとした飲み心地の「毎日飲む野菜」に加えて、スムージーのような独特の食感を楽しめる野菜飲料「つぶより野菜」を発売しました。

 「数年前からのスムージーブームもあり、『もっと野菜感のあるジュースが欲しい』というお客様の声をもとに生まれた、『健康直送便』でしか買えない、こだわりの自信作です。価格は他の商品に比べても高いですが、お客様の満足度は高く、定期お届けコースにお申し込みくださる方も増えています。もともとご自身で野菜ジュースを作っていた方から『この商品に出会えてから、ジュースを作る手間と時間から解放された』との声もいただいています」

 カゴメによる独自データの分析では、「健康直送便」の定期購入者は最も健康に関心の高い50~70代。子育てが一段落し、経済的にも余裕が生まれた一方で、自身の体力の衰えや親世代の介護を通じて健康の重要性を強く実感している世代であり、食自体も細くなる中で「量より質」を優先したいと考えているといいます。これに加え、「つぶより野菜」を選ぶ人に特徴的なのが、教育水準が高く、旅行やスポーツ、園芸、習い事にも積極的で知的好奇心が強いこと。つまり、食についても、おいしさだけでなく、栄養や健康効果を知識として理解し、価値があると判断したものについては多少高価でも購入する。そんなアクティブで知的なシニア層であるということです。

 「ややコンサバティブな傾向があり、ソーシャルメディアはもちろん、ECサイトについてもインターネットの活用をあまり好まず、さらにテレビ視聴についてもニュースや教養番組以外はあまり観ないということから、この層にリーチするためにはオフライン、それも新聞や折込チラシなどの紙媒体を有効活用することが重要であると考えました」

顧客分析により、折込チラシ施策の成約率向上を目指す

 従来、「健康直送便」では商品のプロモーションにおいて、新規顧客獲得の施策に全体の販促予算の多くを投入。テレビCM、新聞の広告、新聞への折込チラシ、Web広告を展開してきました。Web広告は比較的若い層に、折込チラシなど他のメディアはその他の世代へと、メディアを連携させたプロモーションを行っています。特に、オフラインにおける販促では「こだわり」を詳しく紹介する新聞広告をメインに展開し、節目にはテレビCMで広く告知し、翌日の折込チラシで誘引し申し込みを促す、という組み合わせで着実に購入者を増やしてきました。しかし、新聞は部数が減り続け、かつ首都圏ではテレビCMとの連動型販促施策のCPAが以前より下がってきていたこともあり、より効果を上げるための手段について模索していたといいます。

 「CMには大きな費用がかかり、頻繁に打てるものではありません。テレビCMで『翌日の折込チラシで』というからには複数紙に広範囲で折込チラシを入れる必要があり、大きな出費になっていました。結果として必ずしもターゲットではない世帯にも配布されてしまうために、効率の悪化が生じていました」

 コスト削減の必要性も相まって、効率性を高めることは必須課題となっていました。そこで今回の施策では、顧客層のプロフィールやライフスタイルの特徴から、今までのようなテレビCMとの連動ではなく、新たにピンポイントでリーチできる折込チラシのみでトライすることに踏み切ったといいます。

 「そうはいっても、事業規模として申込件数は確保する必要がありますし、効率だけ上がっても数がとれなければ意味がないので、折込チラシの成約率を高める方法を模索することにしました。施策を考えるにあたっては、再び『つぶより野菜』の顧客層のプロフィールに立ち戻ることを意識しました。そして、所得やライフスタイル、ライフステージ、価値観など、再度見つめ直す中で、ターゲットとなる顧客層は『居住エリアに如実に表れるのではないか』という仮説に至ったのです」

(図1)Experian Mosaic Japan のセグメント例

 こうした仮説の検証から実際の地域セグメンテーション、そして配布地域の策定のために採用したのが、郵便番号など顧客の居住地をもとに「ライフスタイル」によるセグメントが可能な「Experian Mosaic Japan」です。「Experian Mosaic Japan」は国勢調査をもとにした人口や年齢、配偶者の有無や居住年数などの「基本データ」に加え、通販やブランド品購入などの「購買行動データ」、住宅・土地活用データなどの推計からの「年収階級別推計世帯数」など、日本の全町丁目レベルで14グループ、52タイプ、220のセグメントに分類されています。(図1)こうした細かなターゲット分析が可能な点が採用の決め手になったといいます。

「Experian Mosaic Japan」データの活用で、潜在顧客層の多い地域を抽出

 導入にあたっては、まず「つぶより野菜」の発売から半年間で蓄積された「健康直送便」の独自データをもとに、申込者の中から「15本お試しセットのみで終了した層」と「定期購入コースを利用している層」のそれぞれの特性を分析。次は「Experian Mosaic Japan」地域特性データと照らし合わせ、それぞれの顧客層の特性別にどのような地域に住んでいるのかマッピングを行い、その結果を「Mosaic Profile Report」としてまとめました。

 「Mosaicデータに当社の顧客層がマッピングされたこの『Mosaic Profile Report』を見た時、今まで肌で感じていた『つぶより野菜』の購入層について、パッと可視化された感じがしました。また、既存のプロモーションをほぼ偏りなく展開していたこともあって『15本お試しセット』利用者は比較的まんべんなく存在したものの、『定期購入コース』利用者はある沿線やエリアなどに集中していると感じていたのですが、それがMosaicタイプとぴったり重なりましたね」

 こうして「つぶより野菜」のお客様データ分析結果をもとに現状の広告効果が高く、定期購入へ転換する人が多いグループをピックアップし、郵便番号を手がかりに「Experian Mosaic Japan」と付き合わせて潜在顧客層の多いと思われるエリアを抽出。さらにそれを首都圏近郊の実際の新聞の販売店エリアに重ねて、配布対象エリアを確定し、2015年4月に折込チラシ配布を展開しました。

オフラインによる販促施策で成約数120%を達成

 今回の「Experian Mosaic Japan」を利用したターゲットの分布地域を特定しての折込チラシ配布の実施について、原氏は次のように語ります。

 「いただいたレポート(図2)ではエリア情報が可視化され、全体的なイメージを持ちながら施策を計画・実行できました。どのエリアの顧客獲得可能性が高いのか、低いのか感覚的に把握することができるので、ターゲットとする見込み顧客数が想定でき、反応予測も立てやすかったですね。GISツールを使えば、もっと柔軟に仮説を立てたり、調整したりが可能になると聞いています。ネットの世界では、こうしたツールによる可視化はかなり進んでいるようですが、オフラインでもできるようになるのは心強いです」

(図2)「Mosaic Profile Report」

 慣れ親しんでいた折込チラシという既存のプロモーションに絡めてMosaicを活用することで、効率性向上だけでなく、施策をスムーズに展開し、短期間で新規顧客獲得が従来比で120%という成果につなげることができたことに満足しているといいます。

 「これまでは、このエリア別に顧客が多そうだなと思っても仮説にとどまり、効果を検証したり、ましてオフラインのプロモーション施策にまで落とし込んだりすることは現実的にハードルが高いものでした。しかし、『Experian Mosaic Japan』なら、とても細かい粒度で地域と潜在顧客の関係性について検証ができ、効果についての予測が立てられ、さらにはリアルのネットワークにまで結びつけることで具体的な施策を考えることができる。私たちの場合は、それが折込チラシであり、新聞販売店だったわけですが、郵便番号で紐づけてこれだけ細やかに属性分布図が作れるのなら、他にも様々な方法やネットワークを用いた施策を考えることができそうです」

新たなオフラインメディア開発とデータ活用による効率化を模索

 「オフラインにおいては新たなメディア開発が大きな課題だと認識しています。そこにいかに『Experian Mosaic Japan』のような分析データを活用し成果を上げていくか。今後もエクスペリアンの皆さんの協力を得ながら考えていきたいと思っています」

 メディアに代わりうる新たな要素として、特定のメンバー・サービスを対象とした会報誌などとの同送・同封、ダイレクトに自宅に届くポスティングチラシなどにチャレンジしていきたいと原氏はいいます。

 「これまでのように、マスメディアで一網打尽に集客する時代は終わり、手間はかかってもユーザーに合わせたメディアを探すこと、そして、今回のようにリーチする対象に合わせたターゲティングで効率を上げること。その積み重ねが大切なのではないかと考えています」

 「つぶより野菜」、そしてカゴメの販促施策はネットにおける施策とともに、効率性を高めるためにも、オフラインにおけるデータ活用もこれからますます増えていくでしょう。その先鞭をつけ、ノウハウを蓄積していくことで将来に向けた優位性へとつながることは間違いありません。

消費者セグメンテーションデータ活用の最新事例を学ぶ!無料セミナー開催

今回の記事で、カゴメが折込チラシ施策の最適化に利用した「Experian Mosaic Japan」の詳細を紹介する、エクスペリアンジャパンによる無料セミナーが、2015年11月26日(木)に開催されます。今回の記事でお話いただいた、カゴメ マーケティング本部 通販事業部の原浩晃氏には、特別ゲストとしてご登壇をいただき、より詳細な活用事例についてお話いただきます。消費者セグメンテーションデータを活用し、オフライン施策の最適化・効率化を図りたいと考えている方は、ぜひご参加ください。お申し込みはこちらから!

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウマミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2015/10/30 11:00 https://markezine.jp/article/detail/23210