ガートナージャパンは、日本国内における最高マーケティング責任者(以下、CMO)に関する調査結果およびIT投資をめぐる組織への影響についての見解を発表した。調査の結果、日本企業においてCMOもしくはそれに相当する役員を社内に有する企業の割合は、2015年11月時点で39.9%となり、2014年調査の29.8%から増加した。
この結果はデジタル・マーケティングに代表されるように、デジタルの勢いが国内におけるマーケティング業務の変革を促進し、専門特化した組織と責任者の必要性が強く認識されるようになった結果と考えられる。
一方で、ガートナーが実施した別の調査からも、これまでITを活用してCRMなどの顧客関連施策に取り組んできた担当者は「ITとマーケティングの組織的連携や役割分担の明確化が最重要課題である」と考えていることが明らかとなっている。
ガートナーは、こうした必要性や課題の背景として、マーケティング業務にデジタル・テクノロジを採用する際に、予算の確保や実装・運用方法などをめぐって部門間での摩擦が起こるようになっているとみており、ガートナー ジャパンのリサーチ部門 主席アナリスト川辺謙介氏は次の見解を示している。
「CMOというポジションが多くの日本企業の組織体制になじまないと考えられたため、設問に『役員クラスのマーケティング最高責任者』とただし書きを加えた結果である点にも留意が必要です。
よって、欧米企業における『CMO』とは、厳密な意味で同じとはいえないかもしれません。しかし、CMOあるいはそれに相当する役員を設置する企業の着実な増加は、マーケティング業務を組織的に編成した、つまり独立した業務としてのマーケティングの必要性の高まりを反映した結果であるとみています。
これは、昨今の市場の劇的な変化・多様化および競争激化に対する各企業の対応策と考えられますが、デジタルがもたらす影響抜きには考えられません。すなわち、一般消費者を含む顧客の行動がデジタルの普及によって激変している点と、マーケティング手法にデジタル・テクノロジを取り入れて成果を上げようとする機運が高まっている点の両方に起因するということです。
そして、新たなマーケティング組織が独自かつ活発にテクノロジへの投資を行うようになり、IT部門が従来の形で投資・提供するテクノロジとの重複や整合性が課題として顕在化しています。マーケティング施策に必要なテクノロジが高度化すればするほど、顧客の取引履歴や商品の情報など、IT部門がつかさどる基幹システムとの連携が必要になってきます。マーケティング部門とIT部門の密接な連携なしには、ビジネスの成長を支える発展的なマーケティングを実現することが難しくなっていきます」
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