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JALのレスポンシブメール対応を導いた、エクスペリアンジャパン「開封エンゲージメントサービス」の実力

 JALにとって、メールマガジンはお客さまとのコミュニケーションに欠かせないツールで、デジタルマーケティングの根幹を担う。そのJALが、2016年秋からメール配信の一部をレスポンシブメール形式へ切り替える。背景には、エクスペリアンジャパンの「開封エンゲージメントサービス」によってもたらされた、モバイル対応の最適化を巡る決断があった。そこでJAL、エクスペリアンジャパンそれぞれのキーパーソンに、その狙いについてうかがった。

「開封エンゲージメント」で従来のメルマガ分析の不安を解消

 日本航空(以下、JAL)では、マイル実績を確認できる「JMBサイバーフラッシュ」という月1回の定期メールをはじめ、お客さまのニーズに合わせた号外メールなど、多種多様なメールマガジン(以下、メルマガ)を配信している。JALにとっては、お客さまとのコミュニケーションの観点からメルマガが占めるデジタルマーケティングでのウェイトは大きい。

 2016年秋からJALのメルマガは、レスポンシブメール対応へと切り替わる。その背景には、エクスペリアンジャパンがメール配信業界に先がけて導入した「開封エンゲージメントサービス」を駆使し、モバイル対応に関わる精緻な分析結果を得られたことが大きな決め手となっている。ここでは同サービスを活用し、JALがエクスペリアンジャパンと共に、時代のニーズを捉えてメールマーケティングのモバイル対応を推進してきた軌跡に迫っていく。

4名集合写真
左から、日本航空株式会社 Web販売部 1to1マーケティンググループ 塚本正憲氏、同 高山裕基氏
エクスペリアンジャパン株式会社 マーケティングアウトソーシング部
事業推進グループ ビジネスアーキテクト 吉澤和之氏
エクスペリアンジャパン株式会社 コンサルティング部 小山翔太朗氏

 そもそも、JALがメルマガのレスポンシブ化を進める決断ができたのは、メールマーケティングに関わるデータ分析に積極的で、一定の問題意識をチームで持ち続けていたことが関連する。

 「JALにとってメルマガは、私たちからお客さまに訴求できる数少ないツールです。ブランドの顔であり、ニーズに合わせてお客さまのもとに届けたい。だからこそ、長年メールマーケティングの知見を貯めてきました」(塚本氏)

 では、開封エンゲージメントサービスの導入を開始した2014年に遡ろう。当時、抱えていた課題は何だったのだろうか?

 「当時からメルマガの分析は定期的に行っていました。一方で、社内に専門家がいるわけでもなく、『私たちのメルマガに対する認識は本当に正しいのか』『そもそもいま見ている分析結果は本当に正しいのか』といった状況でした。

 そこで、メールマーケティングに関する豊富な知見を持つエクスペリアンジャパンに相談したところ、開封エンゲージメントサービスを紹介してもらいました。このサービスはメルマガの開封結果だけでなく、滞在時間や閲覧端末なども取得でき、示唆まで得ることができます。今までできなかった、より精緻な分析調査ができると思い、そこに魅力を感じました」(塚本氏)

メールの滞在時間から受信者の行動心理を分類

 最初にJALが開封エンゲージメントサービスを利用したのが2014年3月。市場ではモバイル対応という課題が表面化したタイミングであり、JALにとってその課題とどう向き合うかを早急に考えなければいけない時期と重なった。

 「このサービスは、エクスペリアンがグローバルで展開しているメルマガ分析サービスです。主に取れる指標が、開封したメーラーやデバイス情報とメール滞在時間。特に滞在時間分析が特徴的で、これらを掛け合わせるとさまざまな気付きを得ることができます」(小山氏)

 開封エンゲージメントサービスの場合、開封後のメール滞在時間が取得できる特徴を活かして、ユーザーの状況を3つのクラスに分けている。

メール開封後の閲覧時間を秒数でカウント。
ユーザーがどのような状態であるかを類推できるようにしている

 2014年を皮切りに、JALは2年間で3度の定点調査を実施。その結果を踏まえて、メルマガのレスポンシブメール化を決断する。

初回調査で得られた示唆とは

 最初の結果は、おおむねJALが予測していた内容を補強する結果であった。モバイルに特化した対応をするには、現段階では時期尚早であるという結論に至った。

 「1度目は、まずは使ってみよう、という実態把握の段階でした。2014年当時、メルマガのモバイル利用比率が上がってきているのはサイト分析から類推できていたので、その裏づけになればと思っていました」(塚本氏)

 また、塚本氏によれば、旅行や航空業界のメルマガは他の業界と比べ、エンゲージメントが比較的高いとされているという。実際に試した結果、他の統計値と比べても滞在時間が長く、それが証明できたことは大きいという。

 同時に、スマートフォンやタブレットなどのモバイルによる閲覧比率が想像より高いという結果は出ながらも、根本的な改善が必要なほど割合を占めているわけではないことも判明した。

エクスペリアンジャパンの「開封エンゲージメント」の仕組みについて
開封エンゲージメントサービスのレポートイメージ ※JALの調査結果ではない
精緻なレポート結果によって現在のメルマガ受信者の開封エンゲージメントを類推できる

 そこで同社は、2回目のサービス利用まで、やや期間を置くこととした。

 「すでに無視できない数字にはなっていましたが、JALという企業規模全体で対応することを考えると、タイミングには注意を払いたい。今と違い、当時はまだモバイル決済を選択するお客さまは少数派で、メルマガの中身をしっかり読んでいただいている、JALからの情報に関心が高いお客さまはモバイルよりPCを優先的に利用していたデータも出ていたからです」(塚本氏)

 「1回目の調査から、モバイルユーザーのエンゲージメントがPCより高いという結果は出ていましたが、費用対効果を考えると、この時点で一気にモバイル最適化を視野に入れた大きな改革を行うにはまだ早かった。ただ、こうした判断材料が見えてきて、今後を見据えたマーケティングプランが立てられるのも、開封エンゲージメントサービスならではの特徴です」(吉澤氏)

モバイル対応の改修を後押し

 それから1年と9ヶ月。市場ではモバイルファーストという機運が熟しはじめ、2回目は年末を控えた2015年12月配信のメールで開封エンゲージメントサービスを利用した。すると、モバイルによる閲覧者が前回より10%以上も上昇する結果が出てきた。

 「他にも、PCとモバイル両方を見て購入しているお客さまもかなりの割合で増えてきていることもわかってきていました。また、滞在時間をみても、PCよりモバイルユーザーのほうがエンゲージメントが高く、これからはモバイル対応も必要だろうという判断に至りました」(高山氏)

 プロジェクトはいよいよ本格的な判断を下す時期となり、3回目の分析は、そのわずか3ヵ月後の2016年3月配信のメールで実施した。

 「JALさんにとって、最もメルマガ利用の動きが活発となるこの時期に、再度分析を実施し、デバイス/キャリア別、エリア別などのセグメントに応じたクロス集計など、検証を深めていきました。結果は、2回目をさらに補強するデータばかりが集計されました」(小山氏)

 「3回目では、さらに考察を深めるために、デバイスに応じてメールデザインを出し分けるクリエイティブのA/Bテストも実施しました。モバイルと特定できるお客さまに対して、モバイルファーストなデザインと従来のPCデザインで出し分けた結果、前者のエンゲージメントが高かったため、いよいよレスポンシブメールに対応する必然性がデータとして明確に揃ったのです」(吉澤氏)

データに基づき、メルマガのレスポンシブデザイン導入へ

 2016年秋、客観的なデータが出揃い、いよいよレスポンシブメールの導入へと踏み切っていく。

 「今までは不可能だった調査ができるようになったことで、根拠や裏づけを持って判断できることが大きいですね。運用を大きく変えることにもなりますし、新たなクリエイティブを用意することにもなります。社内で立場の異なる部門や部署と協議をする上でも、そのような論拠を持ち、それによってもたらされる利益は何かを明確にできるという点も大きいですね」(塚本氏)

 「特にJALさんの場合、モバイルの中でもiPhoneの比率が高く、iPadユーザーも比較的多いという特徴があります。開封エンゲージメントでは、このように“どのデバイスに注力すべきか”というところまで細かく把握することができます。意識すべきデバイスを特定しながらレスポンシブメール対応を行えるよう、データに基づく理論的な観点でクリエイティブを検証できるのが、このサービスのメリットです」(吉澤氏)

 JALほどの企業規模となれば、メルマガユーザー数も非常に多く、1通のメルマガに対する売上のインパクトやブランドへの影響力は大きい。当然、レスポンシブメールを導入するにあたっても、注意深く、一つひとつデータを分析して検証を繰り返す必要があるだろう。開封エンゲージメントサービスは、まさにその作業を手助けする救世主となった。

開封エンゲージメントサービスで未来を描く

 以上のように今回の事例では、JALのメールマーケティングに対する意識の高さと、開封エンゲージメントサービスの分析精度の高さが見事に調和し、データドリブンなマーケティング施策が実現した。

 「モバイルファーストなメールを配信することで、さらにクリック率が上がり、コンバージョンもあがっていくという好循環が期待できます。モバイル決済が浸透してきた今日に合わせて、その循環に対応することがレスポンシブメール化の最大の目的です」(高山氏)

 取得したデータを活かし、メールマーケティング第二章を歩み出したJALは、今後どのような未来を描いているのだろうか?

 「私たちJALは、“世界で一番お客さまに選ばれ、愛される航空会社になる”をスローガンに企業活動を行っています。理想は国内にいらっしゃるみなさま一人ひとりに営業担当者がつくこと。実際は難しいですが、技術が進歩することで少しでもその理想に近づけることができればと考えています。メールマーケティングが、その基点の一つとなるよう今後も改善していきます」(塚本氏)

4名集合写真
左から、日本航空株式会社 Web販売部 1to1マーケティンググループ 高山裕基氏、同 塚本正憲氏
エクスペリアンジャパン株式会社 マーケティングアウトソーシング部
事業推進グループ ビジネスアーキテクト 吉澤和之氏
エクスペリアンジャパン株式会社 コンサルティング部 小山翔太朗氏

 各ユーザーのライフスタイルにかなったメールを届けられなければ、登録が解除されることもある。だからこそ、開封までに至る開封“率”とともに、開封する環境やデバイス、開封後のユーザーの行動心理を検証できる開封エンゲージメントサービスは、今後のメールマーケティング施策にとって大きな鍵となる。

 「通常の標準レポートサービスでも十分な知見を得ることができますが、JALさんのように他の分析データと掛け合わせてさらに深い分析をすることも可能です。いずれにしても、開封エンゲージメントサービスは定期的に定点観測を行い、ユーザーの動向を中長期のスパンで把握することをおすすめします」(吉澤氏)

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この記事の著者

遠藤 義浩(エンドウ ヨシヒロ)

 フリーランスの編集者/ライター。奈良県生まれ、東京都在住。雑誌『Web Designing』(マイナビ出版)の常駐編集者などを経てフリーに。Web、デジタルマーケティング分野の媒体での編集/執筆、オウンドメディアのコンテンツ制作などに携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/11/11 19:54 https://markezine.jp/article/detail/25478