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上島珈琲店が導入/楽天が提供する、モバイルオーダー&ペイメントソリューションとリアル店舗のCX向上

 キャッシュレス時代の到来により、日本でもモバイルオーダー文化が息吹き始めている。そして、2019年12月20日、楽天は小売店や飲食店をはじめとするリアル店舗の顧客体験の向上を支援する「Rakuten Ready」をリリースした。これにより、リアル店舗の顧客体験はどう変化するのか? 楽天の梅本悦郎氏と、「Rakuten Ready」を導入している上島珈琲店を運営するユーシーシーフードサービスシステムズの橋本吉紀氏に、そのインパクトと見据える未来について聞いた。

2019年は日本における「モバイルオーダー元年」

 近年、マーケティングにおいて、「顧客体験(Customer Experience/以下、CX)」という概念が重要視されるようになり、その向上に取り組む企業が増加している。それを支援するツールやテクノロジーも登場しているが、オンラインにおけるCX改善に閉じているものも多い。そんな中、楽天は2019年12月20日に、リアル店舗のCX変革をサポートする、事前注文・決済サービス構築のためのITソリューション「Rakuten Ready」をローンチした。

自分のスマホで事前に注文・支払いを完了。お店ではスマートに商品を受け取れる

 2019年は、実は日本における「モバイルオーダー元年」と言われている。日本マクドナルド(2019年4月より)やスターバックス コーヒー ジャパン(2019年6月より)をはじめ、飲食店を運営する大手各社が顧客自身のスマホで事前に注文・支払いを済ませ、店舗ではスマートに商品を受け取れるサービスの提供を開始している。

 日本フードサービス協会によると、外食産業の市場規模は約26兆円(「平成30年外食産業市場規模推計(PDF)」より)で、テイクアウト市場は約8兆円。一方、米国では2015年から大手各社がサービスを開始し、5年でモバイルオーダー経由の売上が10%にまで伸びている。ここから試算すると、2025年には、日本でも外食産業市場のモバイルオーダー経由の売上が9,710億円まで拡大すると予測されている。

 「『Rakuten Ready』で実現するモバイルオーダーは、従来のテイクアウトの体験とはまったく異なるアプローチになります。モバイルオーダーの文化は日本では芽吹いたばかりですが、それを根付かせていきたいと考えています。導入企業様のオンラインからリアル店舗への送客の実現を支援していきます」(梅本氏)

楽天 メディア&スポーツカンパニー マーチャンクラウド事業 Rakuten Ready GM 梅本悦郎氏

米国ではスーパーや百貨店も導入。「Rakuten Ready」の技術的優位性

 「Rakuten Ready」はもともと、Appleで位置情報の責任者として活躍していたJaron Waldman氏が2013年に創業したCurbside(カーブサイド/現・Rakuten Ready)が提供しているテクノロジーが基盤になっている。2018年に楽天が買収し、この度の日本でのサービスリリースに至った。メインのテクノロジーはモバイルオーダーサービスを提供する「CONNECT」と、顧客の店舗への到着時刻を予測する「ARRIVE」の2つだ。

 「Rakuten Ready」を導入することで、高いコストを要する自社でのシステム開発を行うことなく、自社サイトで事前注文・決済サービスを構築、さらにスマホアプリへの導入の場合には、予め顧客の同意を得た上で位置情報から到着時刻を予測して店舗に通知する機能も提供できる。これらが「Rakuten Ready」の技術的優位性の肝となっている。

 米国では既に、スーパーマーケットチェーンのKroger(クローガー)や、ドラッグストアチェーンのWalgreens(ウォルグリーン)、高級百貨店のNordstrom(ノードストローム)をはじめ、4,000店舗以上の大手の小売・飲食事業者で導入されている。

 そして、もう一つの優位性として、オプションでPOSとの連携が可能である点にも注目したい。「Rakuten Ready」の導入企業は、店舗データと商品情報を提供し、楽天側ではクラウド上に、受注機能や注文情報の管理システムを構築する。

 「実際のオペレーションとしては、顧客が自身のモバイルで注文・決済すると、店舗側では設置したタブレットを介してそのオーダーを受けとり、顧客の到着時間に合わせて商品を用意します。『Rakuten Ready』はPOSと連携させ、クラウド上からキッチンへオーダーデータを自動で送ることができます。店舗側で別途レジを打たなくても、売上計上が自動でできるようになれば、店舗側の負担は大幅に軽減されます。日本の飲食店や小売店に、モバイルオーダーサービスを普及させていくためには、非常に重要なポイントになってきます」(梅本氏)

リアル店舗の収益改善とコスト削減を同時に解決

 モバイルオーダーのサービスを導入することにより、具体的にリアル店舗はどう変化するのだろうか? 既にモバイルオーダーサービスが普及している米国では、「収益性向上」と「コスト改善」の2軸で、実際に大きな効果が出ているという。

 たとえば米国のある飲食店では、実店舗との注文単価と比べて、モバイルオーダーの客単価が約1.2倍になった例もある。またRakuten Readyの調査によると、待ち時間が2分以内の場合、約7割の顧客がリピーターになるという。待ち時間の短さと再購入率には、明らかな相関関係があるのだ。

 日本では、軽減税率の導入にともないテイクアウト市場が拡大し、またキャッシュレスへの対応、深刻化する人手不足など、実店舗を運営する企業は様々な課題に直面している。それらの課題を解決する手段として、モバイルオーダーの導入を検討している小売店や飲食店も多いことだろう。

 「モバイルオーダーの導入により、店舗のオペレーションの効率化だけでなく、売上の純増を期待できます。テイクアウト需要を取り込むことで、今まではイートインだけだった売上を拡大できます。そして新規顧客の獲得だけでなく、スムーズな受け取りが可能になり、顧客満足度をあげることでロイヤルユーザーに対する効果が期待できるのです」(梅本氏)

 実際に店舗にシステムを導入するとなると、変化への対応を迫られるのは、現場の店舗スタッフだ。顧客に向き合う小売店や飲食店の現場では、どんな反応が起きているのだろうか。

 「まさにその課題は想定していました。店舗の現場スタッフの方たちは、単に新しいシステムを利用するだけでなく、新たなオペレーションの構築を求められます。モバイルオーダーの導入により、たとえば顧客の導線やキッチンスタッフのオペレーションも変わります。システムを提供して終わりではなく、一緒に検証しながら新しい店舗のオペレーションを構築していくことが、我々の重要な役割だと考えています」(梅本氏) 

「モバイルオーダー文化」を日本に根付かせたい

 米国で市場が拡大しているとはいっても、日本の消費者はモバイルオーダーの文化を受け入れられるのだろうか?

 「私たちはただソリューションを提供するだけでなく、モバイルオーダーの文化を日本の店舗や消費者に根付かせていきたいと考えています。そのために、約1億の楽天会員基盤をベースに、楽天スーパーポイントを活用したキャンペーンを実施するなど、新たなモバイルオーダーの利用者を増やすためのデジタルマーケティングを仕掛けていきます。2020年は、楽天の持つ様々なアセットを最大限に活用して、モバイルオーダーという文化を、日本の消費者に浸透させていく契機を作っていきます」(梅本氏)

 実際、「Rakuten Ready」はどのように小売店や飲食店で導入されているのだろうか? 梅本氏によると、楽天グループのJクラブ「ヴィッセル神戸」のホームスタジアムである兵庫県のノエビアスタジアム神戸において、12月21日に開催した天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会の準決勝で、検証プロジェクトを実施したという。

©️VISSEL KOBE

 「1日限定で、スタジアム内のフードショップで検証プロジェクトを実施しました。スタジアム内のフードショップでの行列は、誰もが経験したことがあるかと思います。これを、観戦中にご自身のスマホで事前にオーダーして、できあがりの連絡を受けて商品をピックアップしてもらうことで、無駄な待ち時間を解消することができます」(梅本氏)

 また、「天丼てんや」を展開するテン コーポレーションが運営する浅草の「とんかつおりべ浅草店」でも、12月20日より導入。そして同日より、都内にも多数店舗を有する、ユーシーシーフードサービスシステムズが運営する「上島珈琲店」でも、既に4店舗で先行導入が始まっている。

 ここで、モバイルオーダーの取り組みで、実際にどんな目的や課題があったのかを、ユーシーシーフードサービスシステムズ 営業本部 上島珈琲店営業部 部長 橋本吉紀氏に聞いた。

上島珈琲店が挑む、リアル店舗におけるCX変革

――リアル店舗でのモバイルオーダーサービスを提供する企業は増えていますが、その動向を橋本様はどのように捉えていらっしゃいますか?

橋本:2019年10月の増税にともなう軽減税率の導入により、テイクアウト需要の高まりに対応するためにも、モバイルオーダーの導入は有効と考えていました。加えて、オフィス立地店舗の朝の通勤時間や昼の ピークタイムのレジの行列を見て、利用を断念されるお客様の離反防止にも役立つのではないかと思い、対応する必然性を実感していましたね。

上島珈琲店のモバイルオーダーのアプリ画面。注文から決済まで数タップで完了する

――モバイルオーダーを支援するサービスは他にも存在しますが、「Rakuten Ready」を選び、導入した理由は何だったのでしょうか?

橋本:「Rakuten Ready」は、モバイルオーダーの仕組みだけでなく、「楽天スーパーポイント」が付与されることで、約1億の楽天会員の利用促進につながる点も魅力に感じています。上島珈琲店のお客様層は、楽天会員の方々との親和性も高いと思います。

――「Rakuten Ready」の導入により、どんな効果と変化を期待されていますか?

橋本:モバイルオーダーの導入により、行列に並ばずに購入することができるので、一人でも多くのお客様に、上島珈琲店こだわりのコーヒーやフードを提供することができます。

 また、これまでレジに並ばれてテイクアウトを利用されていたお客様も、「Rakuten Ready」を使ったモバイルオーダーに切り替えることで、レジの行列そのものを緩和することもできます。同時に、店内利用のお客様にとっても、レジでお待たせすることなくご案内が可能となります。テイクアウトを利用するお客様だけでなく、すべてのお客様にとってメリットがあるのです

 将来的には、利用者の位置情報から到着時刻を正確に予測して店舗に通知するソリューション「ARRIVE」の導入を予定しています。テクノロジーの活用によって、できたての商品をタイムリーにお客様に提供できるようになり、より高いCXの実現につながると信じています。

――先ほど橋本様がお話しされたように、「Rakuten Ready」は「楽天スーパーポイント」の付与など、楽天IDと連携することで、約1億の楽天会員基盤と連動させることができます。楽天が提供するサービスだからこそのメリットを、どのように捉えていらっしゃいますか?

橋本:楽天が持つ消費行動分析データなどにより、仮想のお客様像を分析することができますよね。よりお客様の層に合ったサービス設計、マーケティングアプローチを実現するためにも、ここは大きな魅力だと捉えています。

お店ではスマホの画面を見せるだけで、待ち時間なしで商品を受け取れる

――リアル店舗は、お店に滞在するからこそ、体験できるサービスがあると思いますが、その一方でモバイルオーダーサービスを提供する意義を、どう捉えていらっしゃいますか?

橋本:お客様のその日の状況により、店内でゆっくりお過ごしいただく日もあれば、店外で楽しんでいただくこともあるかと思います。お客様の多様化するライフスタイルに対応し、快適なサービスの多様性を担保するために、モバイルオーダーの導入は役立つと信じています。

――「Rakuten Ready」を導入することによって、増加する店舗収益やリターン目標をどのように描いていらっしゃいますか。

橋本:まずは、レジでの待ち時間解消によってお客様の満足度を上げて、長期的な視点でCX向上によるリピート率改善を目標にしています。

――実現したいCXの在り方について、ご教示ください。

橋本:「Rakuten Ready」を利用するお客様は、待ち時間なくスムーズに受け取りが可能になる上、「楽天スーパーポイント」の獲得などによって、できたての味をお得に楽しんでいただけます。同時に、イートインのお客様はよりゆっくりと店内で過ごしていただくことができます。

 同じ一人のお客様でも、シチュエーションによって、お店に求める快適な顧客体験は変わります。たとえば出勤前の朝や仕事の合間は、コーヒーをテイクアウトで即座に受け取りたい、一方で週末は家族や友人と一緒に店内でゆっくりと過ごしたい、などですね。テクノロジーの活用も柔軟に取り入れながら、お客様のシーンに合わせて最適な顧客体験を提供できるように尽力していきます。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/27 15:00 https://markezine.jp/article/detail/32602