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MarkeZine Day 2021 Autumn(AD)

購入者数増・解約防止…最新の国内事例で知る、サービスグロースの鍵を握る「プロダクト解析」

 2021年9月7~8日にかけて実施された「MarkeZine Day 2021 Autumn」では、長年企業のWebやアプリのサービスグロースを支援してきたDearOneの石黒智基氏が登壇。「グロースマーケティング」をテーマに、ユーザー行動分析ツールを使って得られる示唆や実際の改善施策とその効果を紹介した。

顧客との関係強化に不可欠なグロースマーケティング

 あなたが属するマーケティング組織のミッションは何だろうか。

 多くの場合、新規顧客獲得であったり商品購入がゴールで、それに向けて施策を検討・実行していると予想される。というのも、これまで日本のマーケティングは、「認知」から「興味・関心」「検討」を経て「購入」に至る、いわゆるトップファネルにフォーカスした活動になっているからだ。

 しかしながら、DearOneではボトムファネルを重視したマーケティング活動、「グロースマーケティング」こそビジネス成長に欠かせないものとして、その支援を行っている。

 「グロースマーケティング」とは、企業・事業・製品・サービスの持続成長にフォーカスしたマーケティング活動を意味する。マーケティングファネルを“トップファネル”と“ボトムファネル”に分けたとき、グロースマーケティングはボトムファネルの活動だ。商品購入後の顧客の行動、「初回体験の向上」「ロイヤル化」「LTV/リテンション向上」といった、サービスを使い続けてもらう、選び続けてもらう関係強化を狙う。

 グロースマーケティングのプロセスは大まかに、①ユーザー行動データの蓄積、②データ分析によるユーザー理解、③個別コミュニケーションに分けられる。それを素早く繰り返すことで顧客のロイヤル化を促進していく。DearOneが支援するのは、②と③の部分だ。

「アクセス解析」と「プロダクト解析」の違いとは

 ユーザー行動分析の肝となるのが、「アクセス解析」と「プロダクト解析」だ。

 シリコンバレーのスタートアップアクセラレータであるY Combinatorによれば、製品ローンチの最初期(最小限機能の製品ローンチの段階)に、この2つを解析するツールを導入することを推奨している。

 アクセス解析は、Webやアプリに訪れるユーザーの閲覧行動や特性を分析するもので、多くの企業が行っているだろう。では、プロダクト解析とはどのようなものか。石黒氏は「プロダクト解析とはユーザーの行動を知ってサービス改善をし、ロイヤリティを高める取り組み」と話す。

 もう少し詳しく説明すると、プロダクト解析はユーザー行動をベースに、データを集めることで見えてくる特徴量を分析したり、マジックナンバー(ユーザーが特定のアクションを規定回数以上行うとサービスの継続率や収益などの重要指標が飛躍的に向上する数字)を知って、顧客エンゲージメントやリテンション、コンバージョンを高める機会を発見し、サービス改善へつなげられるヒントを解明することだという。

サービス成長を加速させる行動分析ツール「Amplitude」

 「サービス改善や顧客のロイヤリティを高めるには顧客の行動を理解することが必要不可欠」と石黒氏は強調する。

 まずデモグラやサイコグラフィック情報でユーザー像がぼんやりと浮かんでくる、さらにその人たちがどこから来訪し何を閲覧しているかがアクセス情報で見えることで、その姿がもう少し見えるようになる。そして、「継続利用するユーザーの行動」や「購入単価の高いユーザーの行動」などのユーザー行動情報や特徴量を得ることで、ユーザーに求められていることやサービスを継続的に利用してもらうために何をすべきかが明確になるといった具合だ。

 サービス成長における行動を分解したフレームワークAARRR(アー)モデルでは、獲得(Acquisition)、活性化(Actibation)、継続(Retention)、紹介(referral)、収益(Revenue)のステップごとに課題を抽出し、解決していく。プロダクト解析は主に活性化・継続・紹介・収益での課題解決を担う。

 しかし、アクセス解析と比べ、より深い洞察を得る必要があるプロダクト解析は時間がかかる。その問題を解決する手段として、石黒氏はユーザー行動分析ツール「Amplitude」の導入を挙げる。

 Amplitudeの大きな特長に、特徴量やマジックナンバーを簡単に抽出できてサービス改善の示唆を出すことが可能な点がある。加えて、SQLが不要なため専門の分析チームがなくても利用でき、数日~数週間かかっていた分析が数分で完結する。外部ソリューションとの連携も簡単で、ロイヤルユーザーリストを作成してMAツールや広告へ自動連携することも可能だ。

 「明確な改善示唆が従来の何倍ものスピードでできます。そのため、分析から施策を打つところまでかなりスムーズになり、サービスの成長を加速させられるのです」(石黒氏)。

 なおAmplitudeはGAFAMの内3社を含めた、全世界で4万サービスの導入実績があり、米国のユニコーン企業として非常に注目が高まっている。米国市場では、このAmplitudeをプロダクト解析ツールに、アクセス解析(GoogleアナリティクスやAdobe Analyticsなど)、BIツール(ビジネス指標集計)の3つの分析ツールを使うのがスタンダードになっているのだという。

 セッションでは、Amplitudeを使ってデモンストレーション形式でプロダクト分析の手順を教えたあと、4つのグロース事例が紹介された。

事例1:「購入者数を増やす」ファッションEC

 1つ目のファッションECを運営するストライプデパートメントは、収益増のため購入者数を増やすことを目的にAmplitudeを活用した。

 まずはペルソナ分析で、購入経験のあるユーザーを4つのクラスターに分類。その中で2回以上購入するユーザーを多く含んでいたクラスターA(=ロイヤルユーザー)は、閲覧履歴の利用が他のクラスターに比べ圧倒的に多かった。

 そこで、閲覧履歴をより使ってもらうと購入回数が増えていくと仮説を立て、ユーザージャーニー分析で閲覧履歴に至る行動を見ていくと、48%が閲覧履歴の前に商品詳細を閲覧していることがわかった。一方、そのページから閲覧履歴へのリンクがなかったため、導線強化が施策案として浮上した。

 さらに、購入経験のあるユーザーの利用する機能も比較。具体的には閲覧履歴とお気に入り機能を比較したところ、利用者数、購入率ともに閲覧履歴で高い有効性が証明された。加えて商品詳細ページ下部のメニューにある「お気に入り」を「閲覧履歴」に変更したA/Bテストを実施。

 その結果、閲覧履歴リンクの方が、カート投入率、CVR、購入者数などいずれの数値においても良い数字があらわれた。

 「いまは分析結果をもとに、どうサイトを改善するか検討しているところです。驚くべきは、今回行ったクラスター分析だけでもSQLを使うと通常2~3週間かかるところ、Amplitudeを使って結果を出すまで15分ほどで終えられた点です。PDCAのPの部分をかなり短縮できました」(石黒氏)

事例2:「定着ユーザーを増やす」会員向けアプリ

 2つ目の事例は、クレジットカード会員向けアプリのリテンションを増やす示唆を探ったもの。アプリ利用者の行動傾向を知るために利用者を行動別に4つに分類すると、アプリ内のポイント獲得ゲームの利用が多いクラスター(クラスターC)が最もアプリ利用サイクルが短く、利用頻度が高いことがわかった。

 さらにライフサイクルとリテンションも分析したところ、クラスターCが継続率、リテンション率ともに圧倒的に高かった。そこで、クラスターCがどのようなタイミングでゲームをしているか確認することにした。

 するとクラスターCの9割が「アプリを起動して3分以内にゲームを開始」していることがわかった。これをリテンションのマジックナンバーに定め、アプリ初回起動時のチュートリアルでゲーム説明をするなど、ゲーム利用を促すUI/UX改善を検討している。

事例3:「初月無料期間での解約抑止」書籍系サブスクアプリ

 サブスクモデルの書籍系アプリの例では、初月無料期間での解約抑制が課題となっていた。

 そこでまずユーザーの初月利用状況を確認すると、66%のユーザーが初月で解約しており、そのうち3割弱が利用開始から1時間以内で解約する実態がわかった。思ったものと違ったと感じたユーザーがすぐに解約したと考えられる。

 反対に、1時間以内に解約しなかったユーザーの行動を調べると、初日に2回以上お気に入り登録をすると初日の解約率が激減する傾向が見えた。初日のお気に入り登録が一つの重要な指標になるといえる。

 他にも継続ユーザーと解約ユーザーの機能利用傾向を比べると、継続ユーザーは「カテゴリー検索」機能を利用する傾向が高いことが見て取れ、さらにライフサイクルにも違いがあった。また、サービス利用を4日に1回の利用サイクルにすることで継続率が上がる可能性が見えた。これらをまとめると、分析結果から次の示唆を得られたことになる。

事例4:「課金ユーザーを増やす」ゲームプラットフォーム

 この例ではアプリへの訪問はあっても、ゲームプレイや課金をしない非アクティブユーザーの多さが課題となっていた。そこで新規来訪ユーザーをアクティブ化し、ARPUを高める取り組みを実施することに。

 ユーザーに5つのミッションクリアでインセンティブをプレゼントするキャンペーンを企画・実行した。

 上から3つのミッションは、もともとdゲームの重要KPIとして定めていたもの。下2つはロイヤル化につながるユーザー行動を分析し、LTVを伸ばすために有効だと判断したものだ。各ミッションの回数も分析からマジックナンバーを割り出し設定された。

 最終的にキャンペーンへのエントリーユーザーのARPUは、キャンペーン前の360倍に。新規来訪ユーザーのARPUが前月比の2.5倍、新規来訪ユーザーの売上2倍と、マジックナンバーの効果を実感する結果となった。

 また、マジックナンバー分析から施策実行、評価までをデータエンジニアやアナリストに依頼することなくマーケターのみで1ヵ月で実現したことも、大きなインパクトだったという。

 石黒氏は「ユーザーの行動を知るプロダクト解析を行うことによって、次の一手が手に取るようにわかるようになります。Amplitudeはその分析を効率化、高速化するツールです。PDCAのスピード化が可能になるので、継続的に打ち手を増やし成長が加速します。その導入、グロースマーケティングの支援をDearOneはお手伝いしていければ」と語り、セッションを終えた。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/25 18:08 https://markezine.jp/article/detail/37377