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オートバックスとCCCMKホールディングスが進めるリテールメディア「AUTOBACS Ads」とは?

 CCCMKホールディングスとオートバックスセブンの両企業が設立した「ABTマーケティング」は、自動車ユーザーの膨大なデータを活用したリテールメディアの実現に取り組んでいる。MarkeZineDay 2023 Springでは、CCCMKホールディングスの荒木裕次氏が「AUTOBACS Ads」の構想を紹介した。

ABTマーケティングが進めるリテールメディア

 インターネットユーザーが残したクッキーを広告表示に利用する、いわゆる「サードパーティクッキー問題」への対応が各社で求められている。そこで、改めて価値の見直しが行われているのが、ユーザー自身がデータ使用を許諾して提供する「ファーストパーティデータ」だ。

 年間アクティブユーザーが約7,000万人にもなるという「Tカード」を運用するCCCMKホールディングスの荒木裕次氏は、その重要性について次のように話す。

 「年々、個人情報に関する規制が強化される今、ファーストパーティデータの価値も日増しに高まっています。中でも、その活用場所として海外で最も注目を集めているのが『リテールメディア』です」(荒木氏)

CCCMKホールディングス株式会社 メディアソリューションDivision アカウントマネジメント第二Unit ユニットリーダー 荒木 裕次氏
CCCMKホールディングス株式会社 メディアソリューションDivision アカウントマネジメント第二Unit ユニットリーダー 荒木 裕次氏

 荒木氏が所属するCCCMKホールディングスとオートバックスセブンは、2017年に新会社ABTマーケティングを設立。同社は独自のビッグデータ収集とその解析により、売上の拡大と効果的な戦略立案を得意としている。そんな同社が近年注力しているのが、この「リテールメディア」だという。

 先述の通り、CCCMKホールディングスの「Tカード」の年間アクティブ数はかなりの人数におよび、Tポイント連携先の購買情報に基づく370項目以上ものライフスタイル傾向データが収められている。一方のオートバックスセブンが保有するデータは、直近3年以内に取得した1,300万人の会員購買データと会員保有車両データだ。

 これらの両社のデータを掛け合わせることで、より精度の高いターゲットアプローチ策が提供できるという。もちろん、ABTマーケティングが保有する顧客データとクライアントの自社データを合わせれば、アプローチユーザー数をさらに増加させることも可能だ。

乗り換え補足台数は300万台超、膨大なデータベース

 CCCMKホールディングスとオートバックスが持つデータはそれぞれどのようなものか? 荒木氏は特徴を紹介する。

 オートバックスのデータベースは、「カーライフデータ」だ。住所、性別、年齢、メールアドレスといった基本属性データに始まり、全国約600店舗のオートバックスにおける購買履歴、車検満了月、所有するメーカーや車種などの車両データからなる。

 一方、CCCMK ホールディングスのデータベースは「ライフスタイルデータ」。Tポイント提携企業の購買履歴や、顧客DNA情報(Tカードの利用履歴から、機械学習によって会員の志向性をスコアリングしたデータ)からなる。そこには、マイカー乗り換え前の車種や、検討中の車種といったアンケートデータも含まれる。

 国産車のデータは、主要メーカーのすべてを網羅し、車種数は700を超えるという。台数にして1,000万台超だ。また、輸入車も主要メーカーすべてを網羅し、700車種弱の約50万台分を登録しているという。乗り換え補足台数は300万台超、車検時期を補足する台数は約1,000万台にもおよぶ。

 これらの膨大なデータベースを活用してABTマーケティングが取り組むのが、メディアアプローチだ。その内訳は、上述したデータの掛け合わせから割り出す「ターゲティング」と、メディア同士の掛け合わせによる「セールスプロモーション」からなる。

ABTマーケティングのメディアアプローチ

 「セールスプロモーションは、リアルメディアとデジタルメディアを使って行われます。リアルメディアはDMや店頭メディアなどを指し、デジタルメディアは、ターゲティングメールやTカードクーポンなどの販売促進ツールと、Yahoo! JAPANやGoogleなどとのデータ連携からなります」(荒木氏)

新規顧客に対して「既納客」に近いアプローチが可能

 これらのデータベースを活用した同社のソリューションは、「分析ソリューション」と「メディアソリューション」の2通りある。分析ソリューションとして、荒木氏は「既納/未納客によるペルソナ分析」と「車型/車種によるペルソナ分析」を紹介する。

 「自動車メーカーの場合、基本的にはディーラーが保有する『既納客』へのアプローチがメインになります。そこで、課題になるのは他ブランドの車に乗る『未納客(新規見込み顧客)』に対してどうアプローチするかです」(荒木氏)

 ABTマーケティングが保有するデータベースを活用することで、未納客に対しても既納客に近いイメージでアプローチすることが可能になるという。「既納/未納客によるペルソナ分析」では、たとえば「人となり」「現在車両」「過去車両」の3項目でターゲティングするとともに、データの掛け合わせでより対象を拡張することができる。

既納/未納客によるペルソナ分析のイメージ

 荒木氏は、これらのセグメントに対して、ファミリー層なら同居する子どもの年齢や人数、ライフスタイルなら食生活や喫煙の有無、貯蓄額などを加えることで独自のカテゴリー分析ができると説明する。

 「たとえば、顧客DNAを『ファミリー』『丁寧な生活』『マイルドヤンキー』としてそれぞれを座標軸にとり、そこに全車種をマッピングしてみます。これにより、自分たちが狙いたい顧客像に対して車種によるアプローチが可能になります」(荒木氏)

 もう1つの分析ソリューションである「車型/車種によるペルソナ分析」について、荒木氏はトヨタの「VOXY」と「アルファード」を例に挙げる。どちらも大型の車だが、分析していくとユーザー属性に違いが見られるという。

 「データを通して年齢層や男女比、年代構成比などの特徴を掴むことができます。訴求したい車種のターゲット像を知りたい時も、我々のデータを有効に活用していただくことができるはずです」(荒木氏)

事前分析から購買後の検証をカバーする「循環型マーケティング」

 「メディアソリューション」はその名の通り、ABTマーケティングが持っているデータを活用することで、デジタルメディアを用いて販促を実施する取り組みだ。荒木氏はデジタルメディアの優位性を次のように説明する。

 「オートバックス会員および、T会員の大規模データを活用することで、今までのYahoo!広告やGoogle広告ではできないOMO施策が可能となります。また、事前ペルソナ分析から配信後の購買までを検証できる『循環型マーケティング』を実現可能にしました」(荒木氏)

 現在、Yahoo! JAPAN、Googleのプラットフォームと同社の利用者データを連携して広告配信を行っている。Yahoo! JAPANならYDA(Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)で3,500万人規模での配信が可能。GoogleならYouTubeで1,000万人規模の配信が可能だという。

車検データを活用して新車訴求、CPC約2倍を実現!

 これらのデータとソリューションを活用し、具体的にどのような成果が出ているのだろうか? 荒木氏は自動車データターゲティングを実施した事例を紹介する。

 車検データ、車両データ、カー用品購買履歴などの車両情報をセグメント化することで、自動車メーカーや自動車ディーラーといった広告主が直接ユーザーへアプローチできるようになっているという。

 ある自動車メーカーは、新車訴求の施策を実施。車検まで1年以内の車両保有者を対象セグメントに設定し広告を配信した。結果、他社で行った施策でのCPCと比べ約1.2倍の効果が出たという。見込み顧客の発掘も含め、対象ユーザーにしっかりと新車の訴求を行えた例だ。車検のデータは「自動車メーカーでも活用が進んでいない領域」だと荒木氏。車検満了月を1ヵ月単位で補足し、乗り換えの時期から鑑みたアプローチをすることが可能だという。

 また、カー用品メーカーで行った「車用Wifiルーター」の販売促進施策では、カーエレクトロニクスの購入履歴がある人を対象に広告を配信。結果、CPCは約2倍の成果が出て、リピート受注にもつながった。

リテールメディア「AUTOBACS Ads」とは?

 続いて荒木氏は同社の「AUTOBACS Ads」モデルの構想を紹介する。ABTマーケティングのデータを活用した広告配信による「店外訴求」、広告効果を来店ベースで可視化する「来店計測」、サイネージなど店舗内のメディアと連動したアプローチを通した「店内訴求」、そして、購買分析による「効果測定」によって、デジタル広告とリアル購買の連動を実現し、確実な売上効果の検証を行うことを目指すモデルだ。

AUTOBACS Ads構想
AUTOBACS Ads構想

 たとえば、オートバックスに商材を卸すカーライフ系企業が、ABTマーケティングのデータを活用してセグメントされた対象者へ広告を配信。広告配信を見たターゲットがオートバックスの店舗に送客され、サイネージや棚周りなどの店舗内メディアに接触。彼らの購買履歴がオートバックスからCCCMKへ蓄積される。そのデータと広告接触したセグメントのデータを掛け合わせ、ふたたび広告配信セグメントとして抽出する。

 つまり、IDに広告接触データを付加することでCCCMK内の購買データと連携し、広告接触の有無によるリアル購買検証が可能になるわけだ。さらに、来店率や購買率などの事前シミュレーションを行うとともに、セグメントごとに広告の表示回数から来店数、購買金額まで一気通貫したレポートを提供する予定だ。

レポートのイメージ
レポートのイメージ

 最後に荒木氏はリテールメディアに対する同社の姿勢を語り、講演を終えた。

 「リテールが保有するファーストパーティデータの活用はこれまで難しいとされていました。しかし、海外ではリテールメディアがデジタル広告業界で席巻しつつあります。おそらく日本でもこの流れが加速度的にやって来ると考えています。そして、我々は先んじて取り組みを進めていきます」(荒木氏)

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:CCCMKホールディングス株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/14 10:00 https://markezine.jp/article/detail/41783