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担当者に聞く! 成功キャンペーンの裏側

華よりも実を取った訴求で新しい価値を伝える
Adobe Acrobat Xキャンペーンの裏側

 アドビ システムズ社の主力製品の一つ「Adobe Acrobat」。2009年、Acrobat 9リリース時に人気マンガ『島耕作』とのコラボレーションキャンペーンが話題になったことを記憶している読者も多いのではないだろうか。しかし、最新バージョン「Acrobat X(アクロバット テン)」では一転して、より堅実な印象を受けるキャンペーンを展開をしている。一見地味になったようにも思えるキャンペーン展開だが、実は確固たる戦略に基づいて設計され、前バージョンを上回る成果に結びついているという。単なるPDF作成・編集ソフトというユーザーの固定観念を覆し、新しい価値をどう訴求しているのか。同社の取り組みを紹介していこう。

“PDF作成ソフト”という固定観念が新規顧客獲得の障壁に

 「○○と言えば××」。イメージが定着することで得られるメリットもあるが、逆に先入観が広まることで生まれる弊害もある。これはAdobe Acrobat(以下、Acrobat)においても同様。PDF作成ソフトとして広く認知されているが、そのイメージが強すぎて、新たな価値を訴求しにくくなっている。「根強く残っている固定観念を、何年も打ち破れずにいるというのが正直な状況です」とマーケティング部の藤田氏は長年向き合っているAcrobatの課題を明かす。

 Acrobatには、文書ファイル/紙書類/HTMLなどをPDFに変換する機能以外に、企画書や文書をチーム内で共有レビューしてコメントできる機能、文書や画像以外にHTML/Flash/動画などもまとめてPDFにできる機能、スキャンした文書のテキストをOCR処理する機能など、さまざまな機能が備わっている。うまく活用すれば職場の業務効率を改善できるが、そもそも「業務効率の改善に使えるソフトだ」という認知が広まりにくく、新規顧客を取り込めずにいたという。

 “PDF作成ソフト”ではない“業務効率改善ソフト”という新たな価値。どうすればその価値を多くの人に気付いてもらえるのか。アドビ システムズのマーケティングチームは、どのような取り組みを続けてきたのだろうか。

アドビ システムズ株式会社 マーケティング本部
キャンペーンマーケティングマネージャー 藤田恵子 氏(左)
フィールドマーケティングスペシャリスト 鈴木依子 氏(右)
アドビ システムズ株式会社 マーケティング本部キャンペーンマーケティングマネージャー 藤田恵子 氏(左)/フィールドマーケティングスペシャリスト 鈴木依子 氏(右)

過去の反省を踏まえたコンセプトは“代弁者”

「ターゲットにしているのはミドルマネジャー層。課長・係長・プロジェクトリーダーとして現場を率いている人たちです」(鈴木氏)

 数年前に、媒体との協力でアンケート調査を実施したところ、業務効率改善ソフトとしてのAcrobatを求める層として、そんなユーザー像が浮かび上がってきた。加えてアンケートで顕著な差が表れたのは、自分自身だけではなく“グループ全体”の業務効率を上げることへの意識。Acrobatに興味を持ってくれた人では、「自分がいるチーム全体を良くしよう」という意識が強かったのだ。

 そこでアドビ システムズは、Acrobat 8のリリース時には架空のプロジェクトチームの事例を紹介。現在困っている仕事上の課題を、Acrobatで解決していくストーリーをサイト上で見せた。続くAcrobat 9では、人気マンガのキャラクターである島耕作を起用。『別冊島耕作』と銘打ち、来訪者自身がマンガに登場し、Acrobatを活用しながら島耕作の右腕を目指すといった、非常にリッチなサイトやクリエイティブを準備した。

「島耕作のキャンペーンは、ブログなどでたくさん取り上げていただけました。キャンペーンの1つのやり方としては成功だったのかもしれませんが、製品自体に触れられていることは少なかった。『プロモーションサイトとして良くできている』という評価をいただけても、本意ではないのです。これでは違うなと」(藤田氏)

 そんな反省を踏まえ、2010年11月に発表したAcrobat X(アクロバット テン)のキャンペーンでは、実際のAcrobatユーザーの活用事例を豊富に紹介できるようにした。コンセプトは“advocate”(代弁者)。『こう使っているよ。ここが良いんだよ』というユーザー自身によるコメントを紹介するようにした。

「今回、『どんなお客様にアピールしたいか』とあらためて考えました。島耕作もビジネスシーンではありますが、幅が広過ぎました。もっと現場のビジネスに近いところで訴えようと。これまでは事例を見せたとしても、1つ1つの機能の話に落とし込んで訴求してしまっていました。今回意識したのは、『Acrobatで何が実現できるか』ということ。当社側の視線ではなく、ユーザー側の目線で語るようにしました」(鈴木氏)

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この記事の著者

中嶋 嘉祐(ナカジマ ヨシヒロ)

ベンチャー2社で事業責任者として上場に向けて貢献するも、ライブドアショック・リーマンショックで未遂に終わる。現在はフリーの事業立ち上げ屋。副業はライター。現在は、MONOistキャリアフォーラム、MONOist転職の編集業務などを手掛けている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2011/03/04 11:00 https://markezine.jp/article/detail/13436

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