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【特集:Datorama活用】選ばれる理由、成果に迫る(AD)

その施策、本当に必要? Sansan×ヤプリの「Datorama」活用に学ぶ、データ分析の極意

 2018年9月、マーケティング・インテリジェンスのプラットフォームである「Datorama(デートラマ)」は、セールスフォース・ドットコムの傘下に入った。本連載では、Datoramaによって複雑化、多様化するデジタルメディア運用を成功させた事例を紐解いていく。今回は、導入企業であるSansanとヤプリの取り組みを紹介する。複雑さを増すBtoB企業のマーケティング活動において、データ分析の課題とその解決策とは? 両社の実践事例からヒントを探る。

属人的なデータ分析を改善し、精度の高い意思決定を実現

 法人向け・個人向けに名刺管理ソリューションを提供するSansanと、アプリの開発、運用、分析をワンストップで提供し、アプリを通した「体験」を変革するアプリプラットフォームYappli(ヤプリ)。いずれも様々なプレーヤーがひしめくBtoB企業の中でも、急成長を続ける注目企業だ。

 Sansan事業部のマーケティング副部長を務める福永和洋氏は、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」のリード獲得をミッションとしている。オンライン広告をはじめとして、展示会・自社セミナーなどのオフライン施策、ホワイトペーパーやランディングページの企画制作まで取り仕切る。それに加えて、毎年開催されている「Sansan Innovation Project」という大規模な自社カンファレンスの統括も行っている。

 一方、ヤプリの執行役員 兼 CMOである山本崇博氏は、同社のオン・オフすべてのチャネルを統合したマーケティング活動および、ナーチャリングを重視したインサイドセールス活動を統括している。

(写真左)Sansan Sansan事業部 マーケティング部 副部長 福永和洋氏、(写真右)ヤプリ 執行役員 兼 CMO 山本崇博氏
(写真左)Sansan Sansan事業部 マーケティング部 副部長 福永和洋氏
(写真右)ヤプリ 執行役員 兼 CMO 山本崇博氏

 Sansanが、一つのダッシュボード上にあらゆるマーケティングデータをまとめて分析することができる「Datorama(デートラマ)」を導入したのは、2年半前のこと。福永氏は導入の理由を「オンライン広告とオフラインでの活動、商談、契約のデータをすべて統合したかったため」と話す。

 「当社では展示会などで得た名刺データをまずSansanに取り込み、そこでデジタル化した情報をMarketoに取り込んで、さらにSalesforceと連携しています。Salesforce上では獲得したリードがどれぐらい商談化し、契約へ向けた検討段階に入ったのかという各案件の進捗管理をしています。こうしたデータと、オンライン広告の出稿効果を連携する時に、データを統合してすぐPDCAを回せるようなソリューションを探していたところ、Datoramaが最適だと考えました」(福永氏)

 それに加えて、データを抽出する際に、メンバーごとに抽出基準や集計方法がまちまちで属人的になっていたことも課題の一つとなっていたという。そこで、一つのダッシュボード上でデータの抽出条件を定義・統一し、正しくデータを分析処理して、精度の高い意思決定を行いたいと考えた。

マーケティング×セールスデータを統合的に分析

 一方ヤプリでは、2020年1月にDatoramaを導入。山本氏はその背景には「商談までのリード期間が長いBtoBにおいて、リード獲得から商談までを、一気通貫で管理するための指標設計が必要なことと、それに合わせてマーケティング部とインサイドセールス部を1つの本部内で統括する必要があった」と同社の戦略と組織体制があると話す。

 「私の統括するマーケティング本部では、珍しいとよく言われるのですが、マーケティングとインサイドセールスを同じ本部で管理・運営しています。そのため、チェックすべき施策の幅も広く、展開した広告施策から、どれぐらいリードが獲得でき、そのリードから、どれぐらいインサイドセールスがアポイントを獲得して、商談に繋がったかを網羅的に把握しなければなりません。商談にならないもの、なりにくいものは、ナーチャリング対象として管理を行いますので、データは量も多く、細かい。オンライン広告、オフライン広告、インサイドセールスのデータを連携する複雑さの問題がありました」(山本氏)

 こうした複雑な問題を解決するためには、データ連携がしやすくダッシュボードが使いやすいことに加えて、データのフォーマットを整えられ、ローデータからの分析処理も後々しやすいDatoramaが不可欠だったという。

 また、同社はマーケティング活動をインハウスで行なっている割合が高く、GoogleやYahoo、Salesforceなど様々なツールの管理画面を横断してチェックし、それぞれのデータを分析してレポートを作成するにも時間がかかりすぎていたことも課題となっていた。

複雑化する施策の貢献状況を「見える化」

 こうした課題を、両者はDatoramaを通じてどのように解決していったのだろうか。Sansanの福永氏は「当社ではSmall、Middle、Enterpriseと顧客の規模別に営業チームが分かれています。各チームから獲得して欲しいリード数のリクエストが来ていたものの、どの施策がどの規模の顧客に効いているのか見える化できていませんでした。Datoramaを導入したことによって、各施策の事業規模別の貢献状況がわかるようになりました」と話す。

 営業チームやインサイドセールス、マーケティング部のマネージャー陣が一堂に会する会議でも、細かく日次、週次、クォーターベースなどで区切って施策ごとのリード獲得数を同じダッシュボード上で見ることができるようになった。

「Datorama」ダッシュボードイメージ
「Datorama」ダッシュボードイメージ

 「どの施策がどれぐらいリード獲得に貢献できているのかを、細かい施策単位で正確にチェックできるようになりました。そのおかげでマーケティング活動の精度が上がったと感じています」(福永氏)

部門間連携を強化するため、データ分析チームを新設

 ヤプリの場合は、Datoramaを導入した2020年1月にアナリティクス&テクノロジー室という部署をマーケティング本部の直下に新設。運用体制を試行錯誤している真っ最中だ。

 「それまでは各部門の担当者がそれぞれエクセルを加工したり、パワーポイントで資料を作ったりと、データの見方、取り方、フォーマットがすべてバラバラの状態でした。そこでアナリティクス&テクノロジー室を組成し、データを整備、データ分析のバックアップを行うと共に、ある部署で行われているノウハウを隣の部署にシェアするなど、情報(データ)の流通を促進していくことが狙いです」(山本氏)

 アナリティクス&テクノロジー室を立ち上げてよかったことがもう一つあると山本氏は続ける。各部署からデータ分析に関する課題意識が上がってくるようになり、無駄な作業が可視化されたのだという。

 「アナリティクス&テクノロジー室を作ることで、施策実施者だと気がつかない、『この指標はそもそも見るべきなのか?』『実はこの見る必要のないデータを加工するのにすごく時間がかかっているのではないか?』という本音が見えてきて、業務プロセスの改善に繋がりました」(山本氏)

KGIを基点に“必要な施策”の取捨選択が可能に

 Datoramaを導入したSansanとヤプリではどのような成果が上がっているのだろう。Sansanではレポーティング業務にかかる手間と時間を大幅に削減することができたと福永氏はいう。

 「これまでレポート作成にかかっていた日数が大幅に減りました。社内で経理状況を報告するマンスリーレビューという会議に出る際、従来レポートを作成するのに3~4日ほどかかっていましたが、今では1日で終わります」(福永氏)

 それだけでなく、必要な施策の取捨選択をしやすくなったと福永氏は考えている。

 「それまで各施策の担当者がそれぞれ『自分が担当するこの施策は絶対に必要なんです』と、資料を作ってプレゼンをしていたんです。Datoramaを取り入れたことで、『その施策がなくてもKGIは達成できるからやめよう』とか『新しい施策に取り組みたいなら、KGIを達成してから言って』など、KGIを基点にメンバーと会話できるようになりました」(福永氏)

本当に必要なデータ、そのために必要なことが見えるように

 ヤプリの山本氏は、欲しいデータを得るためには実施していなかったことがわかるようになったと話す。

 「逆説的なのですが、『欲しいデータを得るために必要なことを行っていなかった』ことがわかるようになりました。Datoramaを使っていると、ときどき『このデータが見られない?』という疑問が湧くことがあって。その要因を詳しく見ていると、そもそもデータ化していなかった場合と、必要な施策を行っていなかった場合の2パターンあることがわかりました。これまで見えているようで見えていなかったことがクリアに可視化されるようになった手応えを感じています」(山本氏)

 こうしてBtoB領域でDatoramaを活用してオンラインにおけるマーケティング活動を推し進めている両者。これから先、マーケティング活動にどのような展望を抱いているのだろうか。

 「サイトに来訪したもののコンバージョンせずに離脱したアノニマスデータに関しても可視化できたらと考えています。当社の場合、テレビCMをたくさん放映しているため、CMのスペシャルサイトへの来訪者数は多い。とはいえそれをコンバージョンにまで繋げるのはなかなか難しいと感じています。CMの成果は短期的に見えるものではありません。半年後、1年後のコンバージョンにテレビCMが寄与していたことまで追えれば、CMの効果測定にも有効になると思います」(福永氏)

 「プロダクト開発チームやカスタマーサクセスチームも含めて社内全体に、いかに重要な情報を“流通”させていくかを大切にしていきたいですね。私は社内にどれだけ気付きのある情報が“流通”しているかどうかで、格段に成果が変わると思っています」(山本氏)

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

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MarkeZine(マーケジン)
2020/05/26 15:30 https://markezine.jp/article/detail/33268