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リゾームマーケティングの時代

NHK電波返上とコロナ不況の影響 電通「2019年日本の広告費」に潜む「UXインテリジェンス」の課題

 「BBCが電波を返上するという噂がある。NHKの同時配信も電波返上への準備に過ぎないという人もいる」。電通総研のラウンドテーブルという会議後の立ち話だった。この噂を私が耳にしたのは、2018年。その後、業界関係者に聞いた話によると「BBCに関する噂は事実である。もちろん、『今すぐに』ということではなく、2034年をターゲットに据えて同社のDistribution & Business Developmentという部署で検討を進めている」らしい。テレビ局は、なぜ、電波を返上しなければならないのか? いくつかの理由があるようだが、私の知る限りでは、電波帯域が逼迫するからだ。

必要不可欠な産業に電波を譲る

 日本政府は「Society5.0」を掲げている。

「Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)ですべての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します」(出典:内閣府

 要するに、IoTが社会を覆い尽くす。5G回線、さらに、6G回線を使って大量のデータがネット経由でやり取りされ、社会を支える基盤・インフラになる。その基盤をベースにして、さらなる経済成長を目指していく。スマートシティ、スマートカー、スマートグリッド、スマート農業、遠隔授業、遠隔医療、遠隔介護など。社会の至るところで、電波が必要になってきた。

 一方で、テレビ業界は斜陽産業とされ、成長余地の低い業界と認識されている。かつ、AbemaTVやNetflix、Huluなどネット経由で充分に楽しむことが可能になった。だから、多くの人が素朴に思う。「テレビ局もネットで流してくれたら便利なのにね」と。

 テレビ局は技術的に電波を必要としなくなったのだ。そして、国家戦略的には、テレビ局に電波を割り当てる論拠がなくなりつつある。なぜなら、ネットでも流せるからだ。もはや、放送免許があってもなくても構わない。ネットで流してしまえばいい。

 だから、日本政府としては、より成長余地があり、かつ、今後の社会インフラとして必要不可欠な産業に電波を優先して提供したい。今の放送事業が始まった頃、つまり、戦後すぐの日本にとっては、ラジオ・テレビ放送は国家戦略的に必要不可欠な産業であったし、成長見込みも高かった。だが、時代は変わったのだ。

 特にコロナ不況下では、遠隔授業や遠隔医療、遠隔介護など「エッセンシャルワーカー」が働いている業界を優先して、もし必要であれば、電波を割り当てるべきだ、と。

 テレビ局の中には、当然、動き出している人たちがいる。この逆境で、テレビ局自身が積極的に日本の経済成長に貢献するには、どうしたらいいのか? それは、他の成長産業に電波を譲ることではないのか?

 「どんなテレビを、我々は望むのか?」「どんなテレビが理想的なのか?」「地上波に依存しないネットテレビのビジネスモデルは、どうあるべきなのか?」

 まだ決して多数派ではない。しかし、テレビ局には器の大きな人間たちがいる。他の産業に電波を譲るのだ。日本経済の成長の為だ。そして、苦渋の決断を迫られる日が来る前に、テレビ局自身が電波返上の強い意志を持ち、放送免許に依存しない、新しいビジネスモデルを作るのだ。

 電通「2019年 日本の広告費」では、ネット広告費が初めて2兆円を超え、テレビ広告費を上回った。人口減少やテレビ離れなどで、もともと、地上波では成長できないことはわかっていた。だが、電通の「日本の広告費」で実際に、その事実を突きつけられた。

 さらに、文字通りの追い討ちとして、オリンピックが延期になった。「今年は、オリンピックでなんとか切り抜けられる」。そんな言葉は吹き飛んでしまった。電通もそうだが、テレビ局にも激震が走った。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2020/05/15 08:00 https://markezine.jp/article/detail/33334

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