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日本郵便「デジタル×アナログ」実証実験プロジェクト(AD)

非対面・非接触時代の“飛び道具” DM活用のススメ【2020年のDM実態調査データを読み解く】

 非対面・非接触のライフスタイルを余儀なくされて1年。コロナ禍は企業活動にも個人の暮らしにも大きな影響を及ぼしている。店舗型ビジネスはEC型へとシフトし、営業活動にはオンラインツールが活躍している。その中で、郵送で顧客の手元に届くDMはどのような役割を果たしているのか。会えない、出かけられない時代に、クリエイティビティあふれる郵送のDMが手元に届くことの意味を、最新調査から読み解いた。

対面とEメールの間を埋める手段として

――本日は日本ダイレクトメール協会の椎名さん、日本郵便の松本さんにお話をうかがいます。最近、企業のDM活用の現状・生活者のDM閲読状況に関して調査を実施したそうですね。まず、企業がどのような目的でDMを活用しているかお教えいただけますか?

松本:当社では2020年11月に、DMを実施している企業を対象に「DM実態調査」を行いました。企業がDMを実施する目的として最も多かったのが「継続的に商品・サービスを利用してもらうため」で約50.8%、続いて「優良顧客にアプローチするため」が39.8%です。CRMの要素が強く、特定のセグメントされたユーザーとの関係構築を目的としている企業が多いのが特徴的です。

【日本郵便「DM実態調査」 調査概要】
調査方法:インターネットリサーチ
調査時期:2020年11月
調査地域:全国
対象者条件:男女15~69歳 かつ 郵便ダイレクトメール関与者

DMの実施目的DM実態調査報告書より(クリック/タップで拡大)
DMの実施目的
DM実態調査報告書より
(クリック/タップで拡大)

松本:なぜDMを活用したのかについては、「セグメントしたユーザーに送付できる」「多くの情報を提供できる」「行動を喚起できる」といった内容が多いですね。情報を届けたいユーザーに、しっかりと届けられる点にメリットを感じていただいているようです。

 また、EメールやSNSでは伝えきれない温かみ、丁寧さなどを伝える手段と考えている企業も増えています。対面とEメールの間を埋める手段とも言えるかもしれません。

DMの実施理由DM実態調査報告書より(クリック/タップで拡大)
DMの実施理由
DM実態調査報告書より
(クリック/タップで拡大)

――DMのもつ強みが見えてきて興味深いですね。DMの受け取り手である生活者側の動向も気になります。

椎名:生活者への調査は当協会が手掛けています。2020年12月、「DMメディア実態調査2020」を行い、手元に届いたDMの開封率や読了状況、読後の行動変容などを2週間に渡って調査しました。この調査は8年間毎年続けてきたもので、DMの効果をファクトとして記録し、データを蓄積することを目的としています。

【日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2020」 調査概要】
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:男女20~59歳
調査地域:関東エリア 1都6県(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬)

 2020年版ではまず、新型コロナウイルスによる生活者の意識変容を調べました。その結果、7割の人が「ショッピングやイベントなどには行きたいが、多くの人が集まりそうなところは避けたい」と回答。次いで45%の人が「物を買う時には店舗や百貨店よりも通販やネットショッピングを利用することが多くなった」と答えました

 また、コロナ禍の1年を過ごしてみて「仕事や付き合いで、ネット経由のコミュニケーションでは不十分だと感じる」と思った方も多いようです。

松本:企業側も店舗型ビジネスを展開している企業では、コロナ禍で通販型のビジネスにシフトしはじめるなど、動きをみせていましたね。

(左)一般社団法人 日本ダイレクトメール協会 専務理事 椎名 昌彦氏(右)日本郵便 郵便・物流営業部 担当部長 松本 俊仁氏
(左)一般社団法人 日本ダイレクトメール協会 専務理事 椎名 昌彦氏
(右)日本郵便 郵便・物流営業部 担当部長 松本 俊仁氏

DMはどの程度開封される?Eメールとの比較

――では、生活者側のDM受け取り状況について教えてください。

椎名:1週間のDM受け取り平均件数は7.0通で、ほぼ例年通りでした。各メディアの閲読状況も聞いているのですが、全体回答としてDMでもっとも多かったのは、「ほとんど開封して目を通す」で52%でした。一方、Eメール・メルマガについては「タイトルを見て読むかどうか決める」が、最多の42%でした。特に、既婚子供ありの層は、DMについて「ほとんど開封して目を通す」割合が高く、逆にEメール・メルマガでは「ほとんど開封せずに削除する」がやや多いという結果でした。

DM閲読状況メディア実態調査2020よりグラフは性別や年代等の属性で分けられており、ピンク色が「ほとんど開封して目を通す」、オレンジ色が「タイトルを見て読むかどうか決める」、黄色が「差出人や企業名を見て読むかどうか決める」、青色が「ほとんど開封せずに捨てる、削除する」(クリック/タップで拡大)
DM閲読状況:DMメディア実態調査2020より
グラフは最上部が「全体」、その下は性別や年代等の属性ごとの回答
ピンク色が「ほとんど開封して目を通す」、
オレンジ色が「タイトルを見て読むかどうか決める」、
黄色が「差出人や企業名を見て読むかどうか決める」、
青色が「ほとんど開封せずに捨てる、削除する」 (クリック/タップで拡大)

椎名:また、知らない企業・団体からのDMはなかなか開封されません。利用・購入経験のある企業・団体からのDM受け取り意向は76.5%ですが、取引のない会社からのDMについては20.5%。閲読意向に3倍以上の開きが出ていたのです。個人情報の取り扱いに対する警戒感がうかがえます。

QRコードでWebに集客、ライブ配信広告と組み合わせ…クロスメディアの最新動向

――DM閲読後の行動については、いかがでしょうか。

椎名:2019年は16.3%の人がDMを受け取った後に店舗へ出かけたり、商品を購買したりと行動を起こしたそうですが、2020年は15%程度と微減しています。新型コロナウイルス感染症の影響でイベントや店頭などリアルな場へ出かけられないことが、行動喚起率にも影響したといえるでしょう。

 一方、Webサイトの閲覧についてさらに絞り込んだ調査をしてみると、おもしろい結果が見えてきました。たとえばQRコードとの組み合わせを見てみると、6~7割の生活者がQRコード付きのDMを受け取ったことがある、と回答していて、3~4割の方は実際にQRコードを経由してWebサイトを閲覧したことがあると答えています

松本:たとえば住宅展示場などではリアルな場に集客することができなくなって、QRコードを用いてWeb上に集客するケースも増えているようですね。

――昨今オムニチャネル戦略に力を入れる企業も増えていますが、DMはメールマガジンや電話など他のメディアなどとどのように組み合わせて活用されているのでしょうか。

松本:多種多様な施策が組み合わせられていますが、多いのは、ポスティング広告、SNSでの広告、店内・店頭の広告やPOPなどですね。特にポスティング広告とSNS広告については、新規顧客を獲得する目的で、DMと組み合わせられているケースが多いです。

DMと組み合わせる目的DM実態調査報告書より(クリック/タップで拡大)
DMと組み合わせる目的
DM実態調査報告書より
(クリック/タップで拡大)

松本:続いて、企業に施策実施の満足度を聞いたところ、DM×通販カタログ、DM×ラジオ広告、それからDM×ライブ配信サービスの広告(ツイキャスなど)が高い結果となりました。特にライブ配信サービスとの組み合わせは、8割以上の企業が、施策の実施に関して「満足」と答えています

 今回用意した設問の多くがいわゆるプッシュ型の広告だったため、さらに詳細な分析が必要ですが、新しい傾向として興味深いです。

椎名:たとえば自社メディアやオウンドメディアといったDM送付後の「受け皿」となるような施策と組み合わせて調査してみると、また違った傾向が見られるかもしれませんね。

松本:そのような調査も行いたいですね。私たち日本郵便はこれまで、Eメールとの組み合わせのベストプラクティスについて特に力を入れて発信してきましたが、今後はより多様なチャネルとの組み合わせについても分析し、みなさまに発信していきたいと考えています。

組み合わせにおける悩みは?

――様々なチャネルとの組み合わせが見えてきましたが、施策を行う上で難しいのはどのような点なのでしょうか。

松本:今回の調査では、「複数の媒体・ツールから得られたデータの活用ができていない」が最多の20.9%、続いて「効果検証方法がわからない」が19.5%で僅差でした。

DMとの組み合わせにおける悩みDM実態調査報告書より(クリック/タップで拡大)
DMの実施目的
DM実態調査報告書より
(クリック/タップで拡大)

椎名:DMの悩みは、効果測定の難しさに尽きますよね。QRコードやメールマガジンをはじめとするデジタルメディアとの組み合わせの設計によって、DMの開封率を測ろうと工夫はしているものの、生活者へのアンケート調査頼みになってしまう側面はあります。

 クリティカルな解決策はなかなかないのですが、まずDMから何らかのデジタルプラットフォームへ誘導することで解決していく体制を整えることが先決だと思います。その点、現場でデジタルとアナログについて、部署を越境して横串で見る役割の人が必要なのではないかと思います。

コロナ禍でDMを増やした業種も “飛び道具”としての活用ヒント

――コロナ禍の影響でDMの活用が増えている業種はありますか。

松本:通販や通信、保険、金融などの分野は、2020年、DMの活用が増えています。その背景には、お客さまにおいてはリアルな店舗への来店が難しくなったり、企業側においては対面営業ができなくなったりしていることがあげられます。また、BtoBビジネスにおいては、DMでセールス活動を補完している例が見られ、この活用方法は今後増えていくのではないかと思います。

――最後に、これからのDM活用について、どのような展望をお持ちですか。

椎名:当協会では毎年定点で生活者にリサーチしていますが、思ったより新型コロナウイルスの影響がなくてよかった、というのが正直なところです。

 松本さんからお見せいただいた企業向け調査で興味深かったのは、新規顧客開拓にもDMを活用しようという機運が高まっていることです。従来、DMは既存顧客へのフォローで活用している企業が多かったので、DMが新たな役割を果たし始めていることを感じました。

 デジタルメディアでは新規顧客を大量に、かつ精度高く取り込むのはなかなか難しい。お客さまが来てくれるのを、受け身の姿勢で待つことになってしまいがちです。一方、郵送で届くDMなら、リッチなクリエイティブを作りこんで、新規顧客獲得の「飛び道具」として攻めるための大きな武器にできるのではないでしょうか。

松本:非対面のコミュニケーションが求められる中、様々な企業が試行錯誤しながらコミュニケーション施策に取り組んでいるのを感じます。そのような中で、これまでDMを利用していなかった企業の方々にも、DMの活用をご検討いただけると嬉しいです。

 シナリオ設計については、例年、当社主催で実施している「全日本DM大賞」から多くのヒントが得られるでしょう。また、効果測定に関しても当社が産学連携で実施してきた実証実験の結果が、アーカイブサイトで公開されています。ぜひご活用ください。

デジタル×アナログの事例&研究成果をアーカイブサイトにて公開中! 閲覧はこちらから!

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/23 11:00 https://markezine.jp/article/detail/35663