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アクションにつながる「CxOレター」の秘訣を解説!データでわかる、開封率を高める「外側」の工夫とは

 デジタル全盛の時代にこそ有効なインサイドセールスの手法として注目される「CxOレター(手紙営業)」。だが、アナログ施策であるがゆえに「開封率やアクションにつながったかの検証・評価が行いにくい」といった特有の課題もある。CxOレターの代行・支援事業を行うletableでは、手紙の送付条件によるアクション率の違いを調査するテストを実施。得られた結果を踏まえ、CxOレターの効果を上げるポイントについてletable代表取締役・髙橋直也氏に聞いた。

CxOレターは他の施策で接点を持ちにくい企業へもアプローチ可能

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、最近注目を集めている「CxOレター(手紙営業)」という営業手法の概要および御社の事業についてご紹介ください。

髙橋:CxOレターとは、企業の役職者に向けて送付する手紙のことを指します。DM施策と類似していますが、宛先を特定したうえで一定のカスタマイズをしたアプローチができる、という点で異なります。これにより、CxOレターではリードや商談の獲得につなげやすくなります。

 弊社ではCxOレター施策における一連のフローを、まるっとお受けしています。以前の記事でもお話しさせていただいた通り、具体的には送付先リストの作成から商材の特性を把握したうえでの文面の作成、宛名書きや封入・封緘に至るまでの手紙そのものの作成と送付。さらにご意向によっては、送付後のフォローのお電話までさせていただきます。

株式会社letable 代表取締役 髙橋直也氏
株式会社letable 代表取締役 髙橋直也氏

MZ:セールス・マーケティングツールのデジタル化が進む中、アナログ施策であるCxOレターが持つ強みはなんでしょうか。

髙橋:テレアポやインバウンドのマーケ施策では、どうしても接点を持てる企業数に限界があるというお話をよくいただきます。それに対してCxOレターは、担当者のバイネームでお送りできるので、接点が持ちにくい企業にもアタックすることができます。

 特に大手企業では受付より先に電話がつながりにくく、なかなか担当者とお話しできないという傾向がありますが、手紙だとそこを抜けて担当者の手元に届けることができます。CxOレターの最大の強みはこのような形で接点を持ちやすいところであり、弊社がお客様から評価いただいているのもこの「担当者に直接届く」ことが一番大きなポイントだと思います。

一企業ではデータが足りず、PDCAを回しづらい

MZ:CxOレターによるアプローチを導入した企業が直面する、手紙ならではの課題はありますか。

髙橋:昨今はエンタープライズ営業においてCxOレターをメインツールとされるスタートアップ企業が増えています。ただ、CxOレターを内製しようとするとかなり手間がかかってしまいます。そのため、リソースのないスタートアップではまとまった数を作成できず、結果的にデータが足りないため送付後の検証が上手くできません。

 加えて、メールなどのデジタルツールとは違い、手紙を開封したかどうかなどの行動データも把握しづらいのがCxOレターです。したがって、社内だけでは適切なPDCAが回しづらい、というのが課題になると思います。

 弊社では、年間6万通のCxOレター送付から得られたデータや知見に基づき、“開封やその先のアクションにつながりやすい手紙の最適解”を見つけています。今回、私たちが導き出した最適解の効果を検証しデータとして得るため、テストを実施しました。

「手書き宛名」は「印刷宛名」の2倍のアクションを促す

MZ:どのようなテストを実施されたのでしょうか?

髙橋:今回は、「封筒」や「切手」といった手紙の外見部分を変えることで数字がどう変わるかを見るテストをしました。条件としたのは宛名書き、封筒サイズ、封筒デザイン、切手の4つです。

 今回はテストの精度を高めるため、Webサービス/アプリやWebマーケティングを行う30から300名規模の企業様にセグメントを絞って、発送タイミングも統一して実施しました。また、前述の通り手紙は開封したかどうかを計測するのは不可能です。そのため、個人情報の入力なしでダウンロードできる資料QRを封入しておき、そのダウンロード数でリアクション率を計測しています。

MZ:まず、宛名書きの項目の結果はいかがでしたか。

髙橋:宛名書きは「手書き」と「手書き風印刷」「一般的なフォント(游明朝体)での印刷」の3種類で、テストを実施しました。

 結果は想像に難くないところですが「手書き」が最も数字が良く、「手書き風印刷」の1.5倍、「一般的なフォント(游明朝体)での印刷」と比べると2倍以上高いアクション率となりました。開封後の資料ダウンロード数で2倍の差が出るということは、おそらく開封率で見るともう少し大きな差が出ているのではないかと考えています。

宛名書きのイメージ(左から手書き、手書き風印刷、一般的なフォントでの印刷)
宛名書きのイメージ(左から手書き、手書き風印刷、一般的なフォントでの印刷)

CxOに届きやすい手紙の共通点とは?

MZ:次に、切手の項目の結果についてご説明いただければと思います。

髙橋:切手は「手貼り」と「後納郵便」の2パターンで実施しました。一般的に販売されている切手を人の手で一つずつ貼ったものと郵便局のスタンプのみとでは、見た目としてはかなり違います。テスト結果としても、手貼りが2倍以上のアクション率となりました。

切手のイメージ(左から手貼り、後納郵便)
切手のイメージ(左から手貼り、後納郵便)

MZ:なぜこのような結果になったのか、髙橋さんのこれまでのご経験に基づく見解や分析も併せてご教示ください。

髙橋:企業の代表取締役や役員宛に手紙を送ると、会社の総務部や秘書の手元にまず届きます。この秘書の対応が数字に表れやすくなっているわけです。代表者宛の手紙や郵便物はすべて渡す方もいれば、中身を確認して必要そうなものを選り分ける方もいて、後者の理由から秘書のところで手紙がストップする企業が多いです。

 よって、秘書から宛先の方に渡していただく確率を上げるための工夫が、施策の成功率に大きく影響するポイントです。今回の宛名書きや切手という観点で見ると、手書きや手貼り切手はビジネス文書ではあまり見かけない形式です。そのため、より個人的な文書だという印象を与え、秘書が開封したり勝手に捨ててしまったりしづらくなります。ですから秘書でストップせずに、そのまま宛先の方まで届きやすかったのではないかと思います。

MZ:残りの2項目(封筒サイズ・封筒デザイン)については、まだ統計的に有意な差は見られていないとのことでした。これらの結果については、どう見られていますか。

髙橋:封筒サイズは、「長3」と「長4」でテストをしましたがほぼ差分が出ず、今後継続しても差は出ないと考えています。

 封筒デザインは、「縦書き和紙」「横書き白」「横書き黄色」の3パターンでテストを実施しました。まだ十分な有意性の検証はできていないのですが、実測値としては一番数字が高い「横書き黄色」と一番低い「縦書き和紙」では約1%の差分が出ています。こちらは数を増やすことで、より正確な数字が出てくると思います。

 
封筒デザインのイメージ(左:縦書き和紙、右上:横書き白、右下:横書き黄色)
封筒デザインのイメージ(左:縦書き和紙、右上:横書き白、右下:横書き黄色)

髙橋:これも宛名書きや切手と同じように、横書きだと何かの招待状のように見えるため、秘書からそのまま渡していただきやすいのだろうと考えられます。

当たり前だけど、実は差別化になる!「ドキュメントとしての完成度」

MZ:今回は、封筒の宛名など外見部分に関するテストを実施されましたが、ターゲットに開封してもらえた後、資料請求やアポイント獲得など、次のアクションにつなげていくために重要となるポイントについても教えてください。

髙橋:中身の部分については、読み手の心理を理解して、情報の順番や置き方を考えながら文章を作ることが大切です。たとえばハイライトや下線、太字などを使って、そこだけ見れば概要がわかるようにし、興味をもっていただいたら、上から丁寧に読んでいただけるように設計する、などです。

 また特に最近、お手紙を読んでいただいた方の感想として「ドキュメントとしての完成度」を評価いただくことが多いです。「改行が決まったルールでされている」「言葉の使い方が正しい」など、どれも当たり前に思えることですが、実際に私たちが手紙の送付元企業様から文章のドラフトをいただくと、日本語や論理構成が正しくないケースも実は多いのです。

髙橋:大手企業の上席は60から70代の方がほとんどですよね。そういった方々からすると、言葉や構成がしっかりしているだけでそれなりに良い印象を受けるようです。最近はCxOレターでアプローチする企業の数が増えていることもあり、信頼を得るという意味でドキュメントとしての完成度も大切な要素です。

MZ:送付後のフォローアップとしてお電話をするほうが、その後につながりやすいのでしょうか。

髙橋:リソースがあるならフォローのお電話はしたほうがいいですね。それは単純なテレアポというよりも、秘書さんに対して代表や取締役の方にお手紙をお渡しいただけるように促す意味合いがあります。弊社では、手紙が到着した翌営業日にお電話することを推奨しています。

「量」か「質」か、でカスタマイズ性を変えれば費用対効果は出せる

MZ:今回のテスト結果を踏まえ、改めてCxOレター施策を行ううえで意識すべきことやポイントをお聞かせください。

髙橋:まず大切なのは、施策の方向性を明らかにすることです。数を打って商談やリードを取りたいのか、それとも数を絞って質を高めたアプローチをしたいのかによって、やり方を分けて実施する必要があります。

 できる限り取締役や代表に届くための工夫をすることが大切ですが、さすがに何百何千とカスタマイズすることは費用対効果から見ても不可能です。そのため数を打ちにいくのであれば、ある程度カスタマイズ具合は落としつつ、そのうえでできるだけ届ける工夫をしていくことが大切です。逆に質を高める方向性であれば、送付のタイミングや文面の1to1カスタマイズに工数を割くことで、費用対効果が見込めると思います。

MZ:最後に、CxOレター施策において御社が提供できる独自の価値について、お話しいただければと思います。

髙橋:冒頭でCxOレター施策を行う企業の課題としてお伝えした、「数が打てないから検証が難しい」を解決できるところに、弊社の価値があると思っています。

 様々な業種・商材をお持ちのお客様の案件をまとめてお受けしているので、大量のデータをもとに改善策をご提示できますし、ある程度実験的に実施したり、最新の動向を把握したりすることができます。

 また今回は外見部分のテストについてお話しましたが、中身の部分についてのテストも進めていきます。たとえば、差出人を代表者にするのか取締役にするのか、それとも部長クラスがいいのか。あるいは手紙のタイトルは何がいいのか、といったことを検証していく予定です。蓄積したデータとノウハウを活かし、今後も最短距離でお客様のCxOレター施策における最適解を提供していきたいと思います。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/21 10:00 https://markezine.jp/article/detail/40034