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MarkeZine Day 2022 Autumn(AD)

オンオフ統合実践の秘訣は「3つのフェーズ」と「5つのC」 電通×セプテーニに学ぶフレームワーク

 昨今、多くの企業にとって、オフラインとオンラインを掛け合わせたマーケティング戦略が重要になっている。MarkeZine Day 2022 Autumnでは、Septeni Japan(以下、セプテーニ)甲斐拓人氏、神蔵 麻鈴氏、電通 松野 泰大氏が登壇。両社が約100社の支援を通して生み出したフレームワーク「5Cモデル」を紹介するとともに、オンオフ統合を実践するカギを解説した。

オンオフ統合が重視される理由

 「統合マーケティング」は注目を集める一方、解釈の幅は広い。本セッションでは「マスデジ起点の統合型施策」つまり、オンとオフの垣根を超え、事業成長のために最適なプランニング・実行をしていくマーケティング活動と定義して、セッションを進めていく。

 そもそもなぜ多くの企業がオンオフ統合マーケティングを重視しつつも苦戦しているのか。いくつか背景はあるが、「特筆したいのはユーザー行動の複雑性が増していること」だと甲斐氏は語る。

Septeni Japan株式会社 マーケティング戦略本部 統合プランニング部 部長 甲斐 拓人氏
Septeni Japan株式会社 マーケティング戦略本部 統合プランニング部 部長 甲斐 拓人氏

 新型コロナウイルスの流行にも後押しされ、消費行動のインターネットショッピング化はますます進んだ。また、テレビデバイスがインターネットにつながり、「コネクテッドテレビ広告」という広告枠が生まれたことも特徴だ。コネクテッドテレビは、オンオフ統合の1つのキーになっているといえる。

 さらに複雑なのは、そうした広告手法のデジタル化が進む中で、4マスも依然として活用され「デジタルかマスか」の二項対立にはなっていないことだ。

 「多くの広告主やマーケターの皆様は、マスとデジタルの効果的な併用方法を模索しています。だからこそ統合マーケティングの意義が高まっています」(甲斐氏)

やらないことがリスクになる可能性も

 この状況の中で、今や「やらないこと自体がリスク」とさえ甲斐氏は指摘する。単一チャネルへの投資ではアプローチできない層が生まれたり、適切な予算配分を見誤ったりする可能性があるからだ。

 とはいえ、実践は簡単ではない。昨年のMarkeZine Day 2021 Autumnにおける同社のセッションで解説されたように、オンオフ統合マーケティングを実行するにあたってはいくつかの壁を乗り越える必要がある。

統合マーケにおける分断と障壁(昨年の講演内容は記事でご覧いただけます)https://markezine.jp/article/detail/37520
統合マーケにおける分断と障壁(昨年の講演内容はこちらの記事でご覧いただけます)

 どうすればこれらの壁を乗り越えることができるのか、その課題に向き合う必要がある。そこで電通とセプテーニが共同で提唱するのが、統合マーケティングの実践力を引き上げるためのフレームワーク「5Cモデル」だ。

 協業実績から好事例・失敗を振り返り導いたもので、広告主・代理店・プラットフォーマーなど様々な立場から活用できる。

オンオフ統合は3つのフェーズで考える

 では「5Cモデル」とはどのようなものか? まずはオンオフ統合のハードルを下げるために、「チャネル統合」「マスデジ連携」「統合マーケティング」の3つのフェーズに分けて考えるべきだと、神蔵氏は説明する。

Septeni Japan株式会社 マーケティング戦略本部 第2コミュニケーションプランニング部 部長 神蔵 麻鈴氏
Septeni Japan株式会社 マーケティング戦略本部 第2コミュニケーションプランニング部 部長 神蔵 麻鈴氏

 フェーズ1の「チャネル統合」は、オンラインとオフライン双方を試し、成果の実感を持つ段階だ。なるべく最小の力で行うために、たとえばコネクテッドテレビでの広告配信などでチャネルの統合を実践する。

 その手ごたえをもとに、フェーズ2の「マスデジ連携」へ進む。マスとデジタルのプランニングを連携させるなど、プロモーション効果の最大化を狙う。そして、プランニングを拡大し、フェーズ3の「統合マーケティング」へと向かっていく。

 「フェーズを分けることで、高く見えたオンオフ統合の壁が低く感じるのではないでしょうか。また、自社の実情に応じてどの段階から取り組むべきか意思決定が可能になります」(神蔵氏)

統合の要素「5C」を各フェーズで定義し、アクションに移す

 しかし、このように段階を分けても各フェーズで注力すべきことは曖昧なままだ。そこで、「5Cモデル」が登場する。

 5Cとは「Core(コア)」「Co Creation(コクリエーション)」「Communication(コミュニケーション)」「Cost Control(コストコントロール)」「Connect(コネクト)」の頭文字をとったもの。

 コアとは、戦略・配信・指標の連携や統合。コクリエーションはオンオフで分断しがちな社内組織や代理店同士で共創体制を作っていくこと。コミュニケーションはオンオフ全体で成果を出すためのコミュニケーション戦略やクリエイティブ。コストコントロールは最適な予算配分を目指すもの。そしてコネクトは、オンオフにおけるデータの連携・統合を指す。この5Cを各フェーズで意識することで、統合マーケティングが前進していく。

 しかし、要素がわかっても具体的に何をすればいいのか、まだイメージが難しい。そこで、用意されたものが「5Cモデルチェックリスト」だ。

 「オンオフ統合のフェーズごとに5Cをどのように実現していくべきか、アクションを紐付けるといいのではないかと考えました」(神蔵氏)

 チェックリストを通して施策の可能性を探ったり、現状の進捗を確認したりできる。実際に同社のクライアント企業では、同じフェーズ内でもチェックリストの達成度が高い企業のほうが、より高い成果を出しているという。

 以上をまとめると、5Cモデルとはオンオフ統合を3つのフェーズに分解し、統合の5要素を定義し、その実現に必要なアクションを項目化することでオンオフ統合を実践しやすい状況を作るためのものだ。また、広告主と代理店双方の担当者が5Cモデルを活用することで、共通認識を持ちながら統合マーケティングを進めていける。

5Cモデル活用3つのカギ

 最後に、電通の松野泰大氏が5Cモデルを活用して統合マーケティングを進めるうえでの実践の「カギ」について解説する。

株式会社電通 第3統合ソリューション局 ソリューション・プランナー 松野 泰大氏
株式会社電通 第3統合ソリューション局 ソリューション・プランナー 松野 泰大氏

 この数年間でメディアにおける役割の境目がなくなってきている。たとえば、従来テレビCMはリーチ拡大、デジタルはアクションの促進であり、その両者をつなげればオンオフ統合だと考えられてきた。しかし、それだけでは解決できない課題も多数出てきている。今やテレビCMの直接的な行動喚起も可視化されるし、人によってはデジタルのほうが認知されやすい。

 メディア・テクノロジーも多様化・複雑化し単純な話では許されない今、実践のカギとはどのようなものか? 松野氏はオンオフ統合マーケティング実践のカギを3つ挙げる。

 1つ目は、マス脳・デジタル脳を融合させたチームだ。本来、統合マーケティングとは、オンにもオフにも区分けしない『人』起点の設計図からスタートすべきだ。考えるべきは、どんな人を狙うか(ターゲット)、その人は今どんな状態か(インサイト)、どのプロセスをどう変えるか(Before/After)であって、その手段としてのマスやデジタルは意識しなくていいともいえる。

 しかし、携わるメンバーの出自によって、考え方に「マス寄り」や「デジタル寄り」といった偏りが出る。これがオンオフ統合マーケティングにおけるありがちな課題だと松野氏は指摘した。

 「マス脳タイプの方は、戦略やコアメッセージの開発に秀でている一方、デジタルに関しては、施策の効果検証などにまで目が向かないかもしれません。デジタル脳のタイプの方は、PDCAや数値改善にコミットできる一方、先述の人を起点した全体の流れには目が向いていないかもしれません」(松野氏)

 そこで松野氏は、統合マーケティングの推進をけん引する「統合スペシャリスト」を置くことが有効としたうえで、その統合スペシャリストは「マスデジ統合脳タイプ」の人材が担うことがふさわしいとした。こうした人材が、全体を俯瞰しながらも細部への視点も持ち、フルファネルかつオンオフ統合で有効な戦略の立案と、施策の設計をできることが重要だ。

 とはいえ、こういったバランス感覚を持った人材は市場においてかなり希少でもある。電通✕セプテーニの協業においては、人材育成に注力するとともに、両社それぞれの人材が補完し合いながら統合を推進するツインフロント・ツインプランニング体制をとっているという。

5Cの条件を満たした事例とは?

 2つ目のカギは、絵や理論だけで終わらせない実行ソリューションだ。マスとデジタル、それぞれの実践知とデータを掘り下げていくところまではできても、そこからマスとデジタルの連携したソリューションを実行するところまでやり切れない。「『なんとなくこれでオンオフ統合できてそう』という雰囲気で乗り切ってしまうケースが散見されます」と松野氏は指摘する。

 最後の実行までやり切るためには、可能な限り豊富なデータとソリューション群をもって対応する必要がある。電通×セプテーニの場合は、フルファネルをカバーする多彩なソリューション群を活用し、最適解を追求しているという。

 最後のカギは、5Cモデルを一歩踏み込んで活用することだ。先述の5Cモデルは「いわばオンオフ統合の実践知の集積。各社の商品や環境、ブランドステータスごとに一段掘り下げて解釈・適用することで、次に取り組むべき点が見えてくる」と松野氏。

 たとえばトップファネルの「認知」でマスとデジタルを有効活用したいケースにおいて、5Cを一歩踏み込んで活用するには、下図のようなポイントが浮かび上がる。

 5Cの条件を満たした好事例として、セッション内では2つの事例が紹介された。たとえば、コアに関しては、コネクテッドテレビをはじめ、ファネルを一気通貫した戦略を進めている。またコミュニケーションでは、認知を目的としたデジタル用の短尺素材やミドルファネル向けの素材など、適切なプランニングによってオンオフ統合が進められ、深化している。

 以上、セッションではオンオフ統合を実現するためのフレームワーク「5Cモデル」と、実践のための3つのカギが紹介された。最後に甲斐氏は次のように語り、セッションを締めくくった。

 「オンオフ統合マーケティングはいきなり完全にやろうとせず、3つのフェーズに分けてやっていきましょう。そこで『5Cモデル』をフレームワークとして活用してください。そして、知識とスキルを持った体制・豊富なデータとそれを活用する実行力・5Cモデルの活用という3つのカギも重要です。

 電通とセプテーニは、オンオフ統合マーケティングというテーマに本気で向き合って、ワンチームとして総合力を高めるよう連携しています。この領域に興味のある方、取り組んでいきたい方は、ぜひお声掛けいただけると幸いです」(甲斐氏)

今回のセッションのアーカイブ動画を公開中!

 現在セプテーニのWebサイト内で、今回のセッションのアーカイブ動画を公開しています。より詳細な内容を知りたいという方は、ぜひアーカイブ動画をご覧ください。

アーカイブ動画はこちら

 また、オンオフ統合マーケティングに関するご相談も絶賛受付中。相談はセプテーニのお問い合わせフォームにお願いいたします。

お問い合わせフォームはこちら

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/24 10:00 https://markezine.jp/article/detail/40059