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編集長インタビュー

2023年日本の広告市場の可能性/WPPジャパン CEO 松下恭子氏がグローバルの視点で紐解く

 2022年4月、WPPジャパンのCEOに松下恭子氏が就任した。グローバルで活躍してきた松下氏は、日本市場をどのように捉えて、何を切り口として開拓していくのだろうか。世界からみた日本の広告市場の可能性と、WPPジャパンの展開について聞いた。

WPPジャパンCEO就任の背景

——WPPジャパンのCEOに松下さんが就任されたニュースは、日本でも大きな話題となりました。まずは松下さんのキャリアについてお聞かせいただけますか。エージェンシーとブランド、どちらも経験された上で、エージェンシー側に身を置かれているのが特徴かと思うのですが。

 私は大学を出てすぐレオ・バーネットというアメリカの会社のアドエージェンシーに入社しました。最初は商品が消費者に届く直前の、コミュニケーションの部分に携わっていたわけですが、自分の興味に従ってどんどん内側に入り込んでいったんです。

 たとえばエージェンシーからブランドに移った時に、プロダクトマーケティングが気になりましたし、その次は商品のプランニング、その次は開発といったように、商品が生み出されるところまで興味を持ちました。ゲーム会社にいた時は、エンジニアやデザイナーと共にゲームを開発する経験も持ちました。

 そういった意味では私のキャリアは「エージェンシー」か「ブランド」かというよりも、広告・マーケティングから開発まで、プロダクトを作って売るところまで、すべてを経験したというところでしょうか。この総合的な経験を生かしてクライアントと新たな価値を作るのが、自分と組織の役割だと考えています。

 実際、WPPは自社プロダクトをはじめ、マーケティングプランニングのサービスや、コンテンツ制作やマス・デジタル広告事業など幅広く展開しています。これからは代理店という受け身のサービスではなく、クライアントの「パートナー」としてどの分野で何を提供できるかが重要だと考えています。

——松下さんにとって、WPPジャパンのCEO就任はどういった意味のあるチャレンジだったのですか。

 ワクワクの一言です。どんなカルチャーバックグラウンドの人でもグローバルCEOになる機会はあると思うのですが、長年海外で仕事をしてきた日本人の私が日本市場で今までの経験を生かして、リスクをとって挑戦できるというのは貴重な機会です。だからこそ、やってみたいと思いました。

WPP Japan Chief Executive Officer 松下 恭子氏 2022年4月よりWPPジャパンのCEOに就任。傘下のAKQA、BCW、ジオメトリー・オグルヴィ、グレイ、グループエム、ホガース、L&F、VMLY&R、ワンダーマン トンプソンを展開する日本市場でWPPの事業を統括、グループ全体の強化を図る。2014年にデータサイエンスに特化したグループ傘下のエッセンスに入社、APAC CEOなどを歴任した後、2019年よりグローバルCEOとして世界12カ国、23拠点を統括した。エッセンス入社前は、ソニー・ヨーロッパでマーケティングコミュニケーション、エレクトロニック・アーツではEMEA・APACのマーケティング責任者を務めた。教育アプリゲームテスター。

WPPジャパン 最高経営責任者(CEO) 松下 恭子氏
2022年4月よりWPPジャパンのCEOに就任。傘下のAKQA、BCW、ジオメトリー・オグルヴィ、グレイ、グループエム、ホガース、ランドー&フィッチ、VMLY&R、ワンダーマン トンプソンなど15社を展開する日本市場でWPPの事業を統括、グループ全体の強化を図る。2014年にデータサイエンスに特化したグループ傘下のエッセンスに入社、APAC CEOなどを歴任した後、2019年よりグローバルCEOとして世界12カ国、23拠点を統括した。エッセンス入社前は、ソニー・ヨーロッパでマーケティングコミュニケーション、エレクトロニック・アーツではEMEA・APACのマーケティング責任者を務めた。教育アプリゲームテスター。

新生WPPジャパンのパーパスやストーリーを固めた1年

——CEOに就任以降、2022年はどういった活動に注力されてきたのでしょうか。

 前のエッセンスでの仕事はアメリカを拠点にしていたので、CEOに就任した当時は、WPPジャパン内にあるブランドの一社一社がどんなビジネスをしているのか詳しくは知りませんでした。CEOとしてまずやったことは日本全15社の代表と会ってお互いを知ることでした。2日間のオフサイトミーティングを実施して、交流しました。

 そこで気づいたのが、私だけでなくカンパニーの代表同士も初めて会う方が多いということ。これまでWPPとして皆それぞれ活躍している中で、横のつながりを作る体制がそもそもなかったのです。なので皆でスタートラインに立った感覚がありました。

 オフサイトミーティングを実施した目的は、将来に向けてのビジネス戦略を見ていくためでもありますが、同時にリーダーとしてそれぞれが抱えてきた経験をシェアしてもらうことが大きな狙いでした。

 というのも、日本の経済全体がここ20年くらい大変な状況にある中で、広告業界も伸び悩んでいますし、皆同じように苦労し悩んできたはずなんですよね。うまくいったこともいかなかったことも、ナレッジをシェアしてもらう。そこに80%ほどの時間を割いたことで、学びや可能性の発見がいろいろとありました。

 そこから約2ヵ月後に「ad:tech tokyo(以下、アドテック)」への出展が控えていたんです。皆で力を合わせて取り組むプロジェクトとして最適なタイミングでした。WPPジャパンとしての今後の方向性が見えてきたところだったので、アドテックを新生WPPジャパンのローンチだと見すえて、パーパスやストーリーを固めていきました。

 参加者の声を聞き交流したいという思いがあったので、アドテックの事務局と相談してWPPのステージを持つことに決め、自分たちで2日間のプログラムを作ることになりました。準備期間は2ヵ月とかなりタイトでしたが、お互い得意な分野を任せ合って、これを通して社員が一丸になりましたね。

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この記事の著者

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2023/01/23 08:00 https://markezine.jp/article/detail/40947

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