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花王廣澤氏が若手視点で聞く、これまでとこれからのマーケティング

これからの広告主×データ×広告のあり方とは【日本マイクロソフト有園氏×花王廣澤氏対談】

 花王のマーケター・廣澤祐氏が、業界で活躍しているキーパーソンと対談する本連載。今回は2022年、Microsoft広告の事業責任者に就任した有園雄一氏をゲストに迎え、デジタル広告のこれまでとこれから、そして今後広告主に求められる動きについて話を聞いた。

Microsoft広告=ビジネスパーソン向けではない

廣澤:まず、有園さんが現在取り組まれているお仕事の概要とミッションについて教えてください。

有園:2022年5月31日に国内でリリースしたMicrosoft広告事業を統括しています。Microsoft広告には検索連動型広告からショッピング広告、オーディエンスネットワークなどあらゆるプロダクトがあります。

 また、Netflixの広告付きモデルにも、セールスとテクノロジーのグローバルパートナーとして携わっています。Microsoft広告とNetflix広告付きモデルのどちらも好評いただいています。

 国内での展開は準備中のものもありますが、Microsoft広告ではあらゆる領域に対応したエコシステムを構築しています。ビジネスパーソン向けSNSのLinkedIn、リテールメディアのPromoteIQ、そしてブランディング領域をカバーするNetflixなど、グローバルでは幅広い領域をカバーしています。

日本マイクロソフト株式会社 Regional Vice President Japan, Microsoft Advertising 有園 雄一氏
日本マイクロソフト株式会社 Regional Vice President Japan, Microsoft Advertising 有園 雄一氏

廣澤:グローバルではすでにエコシステムが構築されているとのことですが、実際に配信できるユーザー層はいかがでしょうか。MicrosoftはEdgeやBing、そしてMicrosoft 365などビジネスパーソンへのリーチに長けている印象があります。

有園:おっしゃる通り、ワークデイ コンシューマーと呼ばれる、PCを使って仕事とプライベートの両面で検索を行う層に対するリーチ力は強みの一つです。ただ、昨今はビジネスパーソン向け以外の広告でも活用できるようになっています。

 たとえば、Microsoft Rewardsという、Bingで検索するとポイントが貯まるプログラムが存在します。ポイントを貯めるとAmazonやiTunesなどのギフトカードとの交換やXboxなどで使うことができます。私は現在このポイントプログラムの拡大にも関わっているのですが、ポイ活をしている20代~30代の女性などの利用が広がり、一般消費者の方々にリーチできるボリュームが急増しています。今後は、様々なポイント事業者との連携を進めていく予定です。

 また、コロナ禍で仕事の合間に個人的な消費活動を行うビジネスパーソンが増えてきています。そのため、BtoB企業だけでなくBtoC企業であっても効果が見込めるようになっています。

サードパーティデータからファーストパーティデータへの兆しは昔からあった

廣澤:私は2015年からデジタル広告に携わっていますが、その頃にはDSPが全盛で、その後、配信面や広告枠そのものへの信頼性についての関心が高まり、PMPのような考え方や、DSPの流れとは真逆の保証型の優良な広告枠をおさえにいくような動きもありました。

花王株式会社 DX戦略部門 事業DX推進センター 事業DXサポート部 データドリブンMK推進室 廣澤 祐氏
花王株式会社 DX戦略部門 事業DX推進センター 事業DXサポート部 データドリブンMK推進室 廣澤 祐氏

 この流れを見たときに、新しいやり方というよりは少し前の方法に戻って、一度変化が落ち着いたように感じたのですが、有園さんにはデジタル広告の変化をどのように見ていますか。

有園:デジタル広告は劇的な変化が起き続けていると私は思います。私は1998年からIT業界にいて、検索連動型広告がネット市場を席巻する前から業界を見てきましたが、この歴史を一言で言うなら「サードパーティデータからファーストパーティデータへの移行」だと思っています。

 たとえば、既存検索エンジンはクローラーが世界中のサイトを巡回してデータベースを構築し、検索キーワードに合わせた検索結果、広告を表示しています。この一連の流れで使われるデータは基本的にサードパーティデータなのです。これは、既存検索エンジンは自社でコンテンツやデータを作っているのではなくて、オープンなウェブをクロールして情報収集している。つまり、サードパーティデータ依存型のビジネスモデルなんですね。

 私がサンフランシスコで働き始めたのは1998年ですが、その課題感は当時からあったのです。検索エンジン企業やネット広告事業者は20年以上前からサードパーティデータ依存に対する課題感があり、その上で様々な手を打ってきました。

 たとえば、スマートフォンを使ったIDの収集、Webブラウザ、そしてスマホのペイメントサービスなどですね。歴史的に、業界全体として、あらゆる角度からファーストパーティデータを取得する動きを強めてきたことがわかります。

 このような動きが起こる中、大きな転換期が訪れます。それはGDPRの施行です。許諾なく個人のデータを取得・活用してはいけない、という法律が整備されたことで、サードパーティデータの活用が難しくなり、ファーストパーティデータの取得に力を入れてきた企業だけが生き残りました。もちろん、IT・ネット業界の専門家は、いずれGDPRが施行されるということは2010年ごろから予想していました。

 サードパーティデータをベースに提供してきたDSPやSSP、アドネットワーク関連の事業者のビジネスモデルは2024年のサードパーティーCookie廃止とともに転換を余儀なくされる可能性が高いでしょう。

 そして、2018年のGDPR施行と軌を一にするのですが、Microsoftのようにファーストパーティデータを持つ企業が広告事業に力を入れるようになってきました。GDPRの施行以前、以後でデジタルマーケティングの歴史は大きく変化したのです。

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/21 08:30 https://markezine.jp/article/detail/41403

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