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今知っておきたいマーケティング基礎知識

ROAS計算の重要性を知り、広告効果の最大化を狙う戦略を立てよう

 ECサイトの広告戦略を立てる上で重要な指標の一つに「ROAS」という指標があります。広告効果を最大化するためには、ROASを活用してよりよい広告戦略を立てる必要があるでしょう。本記事では、ROASの基本的な意味や役割、計算方法から、ROASを向上させる方法や他のマーケティング指標との関係性について解説します。

ROASとは

 ROASとは、英語の「Return on Advertising Spend」の略で、広告における費用対効果のことを表します。すなわち、かけた広告費に対してどれだけの売上、見返りを得られたかのことです。広告費1円あたりの売上額を計算することから、広告費の回収率とも言い、広告が実際にどれだけの効果を上げたのか把握するために重要な指標です。

 ROASが高いほど広告の費用対効果が高いと言えるため、ROASの高い広告の予算配分を高くしたり、入札価格を上げたりするのに活用できます。近年ROASが重要視されている背景には、ネット広告などをはじめさまざまな広告手法が増えたことで、それぞれの広告効果を比較したいという需要があります。

デジタルマーケティングにおけるROASの役割

 インターネットやその他のデジタル媒体を通じて広告を含む情報を得、商品を購入するのが当たり前になった昨今では、さまざまなデジタル媒体を通じてマーケティングを行う「デジタルマーケティング」がさかんに行われています。例えば、SNS上に広告を出したり、検索結果に広告を表示させたりするのもデジタルマーケティングの一つです。

 デジタルマーケティングにおいてROASを活用すれば、どの媒体を通じて広告を出すのが最も効果的か検証できます。そのため、効率的に売上アップにつなげられるでしょう。また、ROASが低い広告にはどんな問題点があるのか洗い出し、対策を行うことでよりよい広告施策を打ち出すことも可能です。

ROASの計算方法

 ROASを計算するためには、以下の計算式を使います。

◾︎売上(広告によって得られた売上)÷広告費×100(%)

 例えば、広告によって得られた売り上げが600万円で、かけた広告費が200万円の場合、ROASは600÷200×100=300%と計算できます。この場合、広告費1円に対して3円の売り上げが出ていることがわかるため、費用対効果が高いと言えるでしょう。

 一方、広告によって得られた売り上げが100万円で、かけた広告費が200万円の場合、ROASは100÷200×100=50%と計算できます。この場合、広告費1円に対して0.5円の売り上げしか得られていないことから、費用対効果が低いと言えるでしょう。

ROASの計算でわかること

 前述のように、ROASはパーセントで算出でき、100パーセントを基準として上回れば上回るほど費用対効果が高く、下回れば下回るほど費用対効果が低い、ということがわかります。ROASが高いほど、広告が売り上げに貢献していると言い換えることもできます。

 ROASを正確に把握するためには、かけた広告費はもちろん、その広告によってどれだけの売り上げが得られたかをきちんと把握しなくてはなりません。テレビCMや交通広告、屋外に設置した広告などでは「広告によって得られた売上」を正確に把握するのが難しいですが、ネット広告なら「ある売り上げがどの広告から得られたものか」を把握しやすいため、特に近年ではROASが重要視されているのです。

ROASによる広告効果の最大化

 前章で、ROASの基準は100%とお話ししましたが、ROASでは広告費だけを考えているため、原価などその他にかかる経費は考えられていません。そこで、広告効果を最大化するためには、まず目標となるROASを設定するため、利益が出なくなる下限のROASを設定する必要があります。

 この下限となるROASのことを「限界ROAS」や「損益分岐点ROAS」などと呼ぶこともあり、KPIなどの目標値には下限よりも少し余裕を持たせた値を設定するのが推奨されます。目標とするROASを高く設定すれば設定するほど得られる利益の見込みは多くなりますが、その分広告費にかけられる予算が少なくなるので、打てる施策が限られるなどのデメリットが発生することがあります。

 ROASのメリットは複数の広告を同じ指標で評価できることです。効果の低い広告をカットし、効果の高い広告に費用をかけることで、広告効果を最適化、最大化することができるでしょう。

ROASをもとにした広告戦略の立て方

 ROASをもとに広告戦略を立てる場合、前述のように下限となるROAS(限界ROAS、損益分岐点ROAS)を把握し、目標となるROASを設定するところからスタートします。例えば、以下のような場合が損益分岐点ROASと言えます。

例)1つ6,000円の商品について、原価や人件費が3,600円かかり、広告費が2,400円かかるため、利益がちょうどゼロとなる場合。

 この場合、ROASは6,000÷2,400×100=250%であり、これがROASの目標値として打ち出せる下限の値となります。この値を割ると赤字になってしまうためです。

 この損益分岐点ROASを基準として、例えば50%増やして300%をKPI、すなわち目標ROASとした場合、より効果の高い広告を出さなければならないので、どの媒体でどんな出稿形態が適切なのかを見極めて広告を運用しなくてはなりません。目標ROASを達成するための方法については、後ほど「ROASを向上させるためにはどうすればいい?」の章で詳しく解説します。

ROASに基づく効果的な施策

 ECサイトでROASを活用し、より効果的な施策を打ち出すためには、3つのポイントがあります。

  • 売り方を意識する
  • 売上額のデータを適宜アップデートする
  • ROASのみを指標としない

 まず大切なのは、売り方です。1回の販売で利益を出せば良いのか、リピーターを多数獲得して長期的に利益を確保するのか考えましょう。例えば、前者は1つあたりの単価が高く頻繁に買い替えることのない商品に、後者は1つあたりの単価が安く頻繁に買い替える商品に当てはまるでしょう。

 前者の場合、ROASを算出するためには1回の売上を広告費で割れば良いですが、リピーターを得て長期的に利益を回収する場合、月間や年間ベースの売上で計算しなくては正確なROASをはかることができません。

 また、ROASを計算するために必要な売上額は、時期やイベントによっても大きく変化します。例えば、出店しているECモールがキャンペーンを行っている最中の売上額と、何も行っていない平常時の売上額は異なるはずです。都度ROASを計算し、時期やイベントに合わせた広告予算を設定するなどの対策をとることで、より効果的な広告戦略や施策を打ち出せるでしょう。

 また、矛盾するようですがROASのみで即座に広告の是非を判断してしまうのは危険です。広告を見た後、他のサイトを経由して商品を購入しているといったケースもあるためです。後述するROIやCPAなどの数値も併せ、全体的な評価を行いましょう。

ROASを向上させるためにはどうすればいい?

 ここまでROASを活用する方法やROASでどんなことがわかるか、効果的な広告施策などについて解説してきました。では、実際に目標となるROASを設定した後、ROASを向上させるためにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、以下の4つのポイントに絞り、ROASを向上させるためのポイントを解説します。

  • CVRの見直し
  • 顧客あたりの単価の改善
  • ターゲティングの見直し
  • チャネル配分の最適化

CVRの見直し

 CVRとは、サイトへ訪れた回数のうち、どの程度がコンバージョン(最終的な成果。特にECサイトの場合、商品の購入)につながったのかを見る指標のことを言います。CVRは、以下の計算式で求められます。

◾︎コンバージョン数÷サイト訪問(アクセス)数×100(%)

 CVRが高いほど、サイトを訪れた人がコンバージョンにつながりやすかったと言えます。つまり、サイトを訪れた人がより効率よく商品を購入してくれた、と言えるでしょう。CVRを向上させるためには、以下の2つのポイントがあります。

  • サイトの導線を改善する
  • ランディングページ(LP)を最適化する

 CVRを向上させるために大切なのは、見やすくわかりやすい、欲しいと思ったときにすぐ商品を購入しやすいサイトを作っておくことです。どれだけ魅力的な広告を作っても、商品購入までがわかりにくいサイトでは、なかなかコンバージョンにつながりません。

顧客あたりの単価の改善

 顧客1人あたりの単価を上げることは、純粋に利益を増やすことになり、結果的にROASの改善にもつながります。例えば、前述のCVRが同じであっても、顧客1人あたりの単価が高い方がより多く売り上げが得られるため、ROASの数値改善につながるでしょう。

 顧客あたりの単価を改善するためには、以下のような方法があります。

  • まとめ買いのキャンペーンを行う
  • 関連商品のサジェストを出し、「ついで買い」を促す

 一方で、単純に商品を値上げしてしまうと顧客が買い控えてしまう可能性があり、思ったようにROAS改善につながりにくい場合がありますので、注意しましょう。

ターゲティングの見直し

 広告を打ち出す際には必ずターゲット設定を行います。これをターゲティングと言いますが、ターゲティングが最適化されていないと、せっかく広告を打ち出しても広告による売り上げにつながりにくく、ROASの向上が見込めません。

 例えば、ゲームや電子機器をよく買い求めるユーザーに対して、ファッションやアパレル関連の広告を出しても効果は低いと考えられます。特にWeb広告では、ユーザーの過去の検索履歴に合わせた広告を表示できる「ターゲティング広告」などを利用できますので、積極的に活用していきましょう。

チャネル配分の最適化

 チャネルとは広告媒体のことで、例えばWeb広告・テレビ広告・交通広告などさまざまな媒体があります。ECサイトで特にROASを活用しながら広告を運用していく場合、Web広告を活用することが多いでしょうが、一口にWeb広告と言っても以下のようにさまざまなチャネルが存在します。

  • コーポレートサイト
  • オウンドメディア
  • SNS広告
  • 動画広告

 例えば、コーポレートサイトではどんな商品を扱っているのか、どんな理念を持っているのかユーザーにアピールできます。また、オウンドメディアを使えば、商材を日常生活で活用する方法を発信したり、コラムなどで興味を持つ人を増やしたりできるでしょう。SNS広告でフレンドリーに情報発信したり、動画広告でよりわかりやすく商品の魅力を紹介したりするのも有効な方法です。

 これらのチャネルそれぞれのROASを計算することで、よりROASの高い媒体に力を入れるなどの最適化が可能になります。

ROASと他のマーケティング指標との関係

 最後に、ROASと他のマーケティング指標との関係を解説します。ここでは、マーケティングに重要な指標であるROI・CPA・CPC・CPM・CVRの5つとの関係について詳しく説明します。

ROASとROI

 よくROASと一緒に語られる指標が「ROI(Return On Investment)」です。ROIは利益を得るためにどのくらいの費用がかかったかを表す指標で、日本語では「投資に対する利益」という言い方をします。ROIは以下の計算式で表されます。

◾︎利益(広告によって得られた利益)÷広告費用×100(%)

 ROASでは売上全体を見ていましたが、ROIでは利益のみを見ます。そのため、ROASのように原価や人件費などのことを考えて限界値を考える必要がありません。ROIは100%が限界値であり、上回れば黒字、下回れば赤字という非常にわかりやすい指標であるとも言えます。

 このため、利益ベースでわかりやすいROIが指標として使われることも多くあります。ただし、長期的な利益確保においても指標として使いやすいROASに比べ、短期的な利益をもとに計算するROIは長期的な施策の指標として扱うには不向きな傾向にあります。そのため、より効果的な広告戦略を立てるためには、ROIとROASの両方の指標を見ながら運用していくのが良いでしょう。

ROASとCPA

 CPA(Cost Per Acquisition)とは、1件のコンバージョン(広告から得られたコンバージョン)を得るためにかかった広告費用はいくらか、という指標です。そのため、CPAは以下の計算式で表されます。

◾︎広告費÷コンバージョン数

 CPAとROASの最も大きな違いは、表している単位です。CPAは1件のコンバージョンあたりどのくらいの費用がかかったのかを実際の費用で表します。しかし、ROASは広告の費用対効果を割合で見るものであるため、パーセントで表します。このため、CPAは低ければ低いほど良いですが、ROASは高ければ高いほど良い、という違いもあります。

ROASとCPC

 CPC(Cost Per Click)とは、ユーザーがクリックを1回する度にどのくらいの費用がかかるか、というものです。ユーザーが広告をクリックして広告主のページにアクセスした場合、そのクリックに対して広告主は費用を支払う必要があります。費用は広告を出稿するサイトやページによって異なりますが、計算する場合は以下の式で表されます。

◾︎広告費÷獲得したクリック数

 例えば、月額30万円のリスティング広告を運用し、該当の広告から得られた月間のクリック数が1,500だったとします。この場合、CPCは300,000÷1,500=200円と計算できます。CPCは間違ってクリックしてしまった場合も獲得クリック数に含まれてしまうため、ROASなどの効果を見られる指標と併せて見ていく必要があります。

ROASとCPM

 CPM(Cost Per Mille)とは、広告が1,000回表示されるごとに発生する費用を指します。Web広告が表示された回数を「インプレッション」と言いますが、このインプレッションが1,000回起こったときに発生する費用がCPMと言えます。

 CPCと似たような単位ですが、CPCはユーザー側でクリックするというアクションが必要なのに対し、CPMはユーザー側のアクションに関係なく、表示されたかどうかだけで費用が発生するかどうか決まるところが異なります。

 これもCPCと同じように、その広告から実際に効果に結びついたかどうかはわかりません。そのため、ROASなどの効果を見られる指標と併せて使う必要があります。

ROASとCVR

 CVR(Conversion Rate)は、前章でも出てきた通り、サイトやページを訪れた回数のうち、どのくらいが実際にコンバージョン(最終的な成果。特にECサイトの場合、商品の購入)につながったかをはかる指標のことを指します。ROASを向上させるためには、CVRの見直しが欠かせません。

 また、CVRを計算する際、Webサイト全体の訪問者を見るのではなく、ランディングページなど特定のページに訪れた人だけを見る方法もあります。サイト分析の際は、このように「どこを見るのか」が非常に重要です。

ROASの計算方法や活用方法を理解し、戦略や施策に活かそう

 ROASは広告の費用対効果を見るために、短期的にも長期的にも利用しやすい指標です。ROASの計算方法や活用方法を正しく理解するとともに、ROIやCPAなどいくつかの指標を組み合わせることで、より効果的な広告戦略や施策を打ち出しやすくなるでしょう。

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この記事の著者

マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/07/28 00:00 https://markezine.jp/article/detail/42691

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