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今知っておきたいマーケティング基礎知識

【パレートの法則】身近な例39選とマーケティングに活用するポイント

 パレートの法則の身近な例をカテゴリー別に39例集めた。パレートの法則は、マーケティング手法というより一般的な法則といったものだが、実はマーケティングに活用できることも少なくない。ビジネスシーンと日常的なシーンとに分けて事例を挙げていくので、マーケティングの参考にしてもらえたら幸いだ。

パレートの法則とは

 パレートの法則とは、「全体の80%の成果を、特定の20%の要素が⽣み出している」というものだ。例えば、「売り上げの80%は、20%の社員に依存している」というようなフレーズを聞いたことがあるのではないだろうか。

 「2:8(にはち、またはにっぱち)の法則」とも、「80対20の法則」などとも呼ばれることもあるパレートの法則だが、もともとはイタリアの経済学者であるビルフレッド・パレートによって提唱されたものだ。発表されたのは1880年代、経済統計から個⼈の所得額と所得を得ている⼈数との関係性から⾒出した法則だとされている。

 2:8という配分は絶対ではなく、全体的な傾向を⽰すものだといわれている。その点が、⼀般的な法則だといわれる理由でもあることを覚えておこう。次に、パレートの法則と似て⾮なる法則だが、面白いものを紹介しよう。

パレートの法則に類似する法則

 パレートの法則に類似するものとして、2:6:2の法則がある。働きアリの法則とも呼ばれるものだ。集団の中では、よく働くアリが全体の2割、普通のアリが6割、そして怠け者のアリが2割いるとされる。

 アリのような社会性を持つ昆⾍の世界では、怠け者のアリがよく働くアリの交代要員になっているとされ、組織運営で参考にされることもある。2012年、北海道⼤学の⻑⾕川英祐(はせがわ えいすけ)准教授らによって発表された論⽂によって、広く知られることになったものだ。

パレートの法則で見る身近な例39選

 ここでは、パレートの法則の⾝近な例を見ていこう。4つの経営資源に分類し、それぞれビジネスシーンと⽇常的なシーンとに分けている。

ヒト

ビジネスシーン

  • 20%の優秀な社員が80%の業績を上げる
  • 全顧客の中の20%が売り上げの80%をもたらす
  • 20%の顧客が80%の⼝コミや紹介をする
  • 20%の社員が80%の経営決断をする
  • 20%のリーダーが80%の社員を指導する

 20%の社員が80%の業績を上げるというのは、パレートの法則の代表例として紹介されるもののひとつだ。それに続く20%の顧客がという例も同様といえる。そこからどのようにマーケティングに利用するかというのが、パレートの法則を活用するポイントとなる。例えば、20%の優秀な社員が80%の業績をあげるのであれば、特別な権限の付与やさらなるスキルアップ研修などの施策を用意することが可能だ。

 大口や長期的な関係を構築している2割の顧客を優良顧客とし、特別なサービスを提案するなどして、より深い関係を築くこともできるだろう。また、口コミや紹介など自社商品やサービスの販売に協力してもらった場合にも、何らかの特典を用意して関係強化に努めてもいいだろう。

⽇常的なシーン

  • 20%の友⼈との会話が80%を占める
  • 連絡の80%は20%の⼈に集中している
  • 組織の20%のメンバーが80%の成果を出す

 ⾃分が普段している会話の80%が20%の友⼈に限られているというのは⾯⽩い考察ではないだろうか。実は、限られた仲の良い友⼈との会話が大半を占めているとして、だからどうするかというのが、パレートの法則をどのように活⽤するかという考え⽅の分かれ⽬となる。

 顔⾒知りとの付き合いはほどほどにとするのか、思い切って⾃分の中で線引きし、時間やお⾦を投資する範囲を決めるのかなど、具体的な施策への判断が変わってくるだろう。

モノ・コト

ビジネスシーン

  • レストランの注文の80%が人気メニュー20%に集中している
  • 観光スポットのうち20%が80%の観光客を呼ぶ
  • プロジェクトの問題の80%は、20%の要因によって引き起こされる
  • ビジネスプロセスを20%改善すると業務効率が80%向上する
  • 20%のリスク要因が80%の成果に影響する

 レストランの注文の80%が人気メニュー20%に集中していると聞いたらどうだろうか。どのようなジャンルの飲食店にも、必ずといっていいほど人気定番といえる看板メニューがある。ここに来たなら、これがイチオシ、またはおすすめというもので、何にしようか迷っている人への対策にもなる。

 この先がマーケティングへの応用だ。注文の80%を支える人気メニューだからこそ、素材や調理法に資金や労力を投じてクオリティーを上げ、かつ宣伝もしていくのか。それとも、不動の人気があるからこそ、収益の柱として安定しているため、次の看板メニューとなる新しいメニューの開発にリソースを投じるのかと考えていくことが可能だ。

日常的なシーン

  • 自分の洋服のコーディネートの80%は手持ちの20%のアイテムで成り立っている
  • 再生リストの80%は20%の曲で構成されている
  • 全体の80%の味を決めているのは20%の食材だ

 モノに関係することをパレートの法則に当てはめてみると、意外とそうかもしれないと思うことが多いことに気づく。お気に入りの服を着回すことはよくあることだが、自分のコーディネートの80%を手持ちのアイテム20%で構成しているという点は、誰しも少なからず心当たりがあるのではないだろうか。不要なアイテムは売る、譲る、捨てるなどして、有効活用できるスペースの確保につなげてもいいだろう。

 再生リストの80%が20%の曲で構成されているという例も、共感してもらいやすいものではないだろうか。音楽の趣味は人によって異なる。性別や年齢、日常的に使う言語によっても変わってくる。そのような中でも、再生リストに入ってくるような思い出の曲は20%という点には普遍性を感じる人も多いだろう。

 近年ではサブスクで音楽を楽しむ人が増えている。新しい曲ばかりではなく、再生リスト入りしている曲をリミックスしたり、カバー曲にして印象を変えたりして、再度売り出すという施策を考えることも可能だ。

カネ

ビジネスシーン

  • 売上の80%は、20%の商品によって生み出されている
  • 20%の投資先によって利益の80%が発生する
  • 売上の80%を担っているのは販売チャネルのうち20%だ
  • 納税額上位20%の納税者によって税収の80%が賄われている
  • 全座席の20%をプレミアシートにすることで80%の座席の値段が安くなる

 パレートの法則を生み出すことになった「社会全体の所得の80%は、20%の高所得者層によって生み出されている」という考察も、その対象は所得だ。お金に関する身近な例には、売上や利益についてのものが多く見られる。「売上の80%は、20%の商品によって生み出されている」という例は、代表格だ。

 興味深いのは、座席の例ではないだろうか。新幹線などの乗り物やスポーツ観戦、イベント、コンサートのチケットなど、座席を売る場合、一部の座席に特典や付加価値を加え高価格帯で販売することによって、大多数の座席の価格を抑えることができるというものだ。

日常的なシーン

  • 家計の支出の80%が20%の項目に集中している
  • スーパーでの支払いの80%を占めるのは、20%のリピート買い商品だ

 日常的なシーンでは、家計の支出が分かりやすい。家賃や食費、光熱費、通信費、教育費などが大きな支出と考えられる。交通費や娯楽費、交際費など、そのほかの支出と実際に合計額を比べてみてもいいだろう。

 パレートの法則で得た気づきをもとに、支出をもっと抑えられないか考えてみることも可能だ。契約プランを変更する、業者を変える、不要なものを解約するなどすれば、支出を圧縮でき、家計の見直しにつながる。

情報

ビジネスシーン

  • 出されたアイデアの20%が80%のイノベーションを生む
  • 顧客要望の20%が80%の顧客ニーズを反映している
  • 20%の顧客フィードバックが80%の改善に役立つ
  • 20%のトレンドが業界の80%売上を牽引する
  • サイトのPVの80%は20%のページが稼いでいる

 パレートの法則に従い、企画会議やアイデア募集などで出されるアイデアの20%がイノベーションにつながるのだとしよう。20%のアイデアがどのような場面やルートで出されたかを丁寧に追っていくと、大抵の場合、量や質の面で一歩抜きん出たアイデアを出してくる人がいることに気づく。そのような人材をどのように活かすかが、次の展開だ。

 顧客からの要望を集約したり、まとめたりしてみると、20%に集約できるというのがパレートの法則だ。数多く寄せられる問い合わせなども、実は同じようなものが多いということはよくあるだろう。どこが分かりにくいのか、どのように改善すれば販売増や業務効率化につなげられるかという施策をマーケティング担当者として考えていくことになる。

日常的なシーン

  • スポーツ観戦では、80%の印象が20%のエキサイティングなプレイで形作られる
  • スマホ利用者の80%は、20%の機能しか使っていない
  • 噂の80%には20%の真実が含まれる
  • 何気ないおしゃべりの80%のうち、意味があるのは20%に過ぎない
  • 受信ボックスにあるメールの中で20%のメールに80%の重要な情報が含まれている

 スポーツ観戦の後、興奮したシーンを話したり、ダイジェストで繰り返し見たりしたという経験は誰にでもあるだろう。試合時間が100分だとしたら、そのうちの20分が会場全体で盛り上がるようなプレイを見られるということになる。そのようなプレイを観客に楽しんでもらうために、どのような施策を打つかがマーケティングへの活用だ。

 近年のスマホは機能が高度化かつ多様化している上に、アプリの数も数えきれないほどある。すべての機能に対して、多くのユーザーが使っているのは20%の機能しかないともいえるし、20%の機能で満足しているともいえる。そうだとしたら、その20%の機能がどのようなもので、余分な機能を削ぎ落したスマホがあってもおかしくない。

時間

 4つの経営資源である、ヒト、モノ、カネ、情報ときて、最後に時間を加えておこう。時間に関するパレートの法則の身近な例も少なくない。

ビジネスシーン

  • ネットの閲覧時間の80%が20%のサイトで占められている
  • 仕事時間全体の20%で80%の成果を出している
  • 20%の高度な仕事が80%の作業時間を占める

 Webサイトや動画の閲覧時間の80%が20%のサイトで占められているというのは、共感してもらいやすい例だろう。例えば自社サイトの中で、特定のページにアクセスが集中していたら、どうしてそのサイトがよく見られているのかを分析する必要がある。要因や理由がわかったら、それを他のページに応用すればいい。

 仕事時間の20%で80%の成果を上げているという例も、よく見かけるのではないだろうか。これは、集中して取り組んでいる20%の時間で多くの成果を上げていると解釈でき、集中できない時間や無駄に見える時間を減らすにはどのようにしたらいいのかを考えるきっかけとすべきだろう。

日常的なシーン

  • 自宅の掃除の80%は、20%の場所で行われる
  • 自由時間の80%を、特定の20%の活動に費やしている
  • スマホを利用する時間の80%は、20%のアプリに限られる

 自宅の掃除に費やす時間の80%が20%の場所で行われているという例は、手がかかる水回りを連想させる。キッチンや浴室、トイレなど、なかなか手が出なくても一旦始めると時間を忘れてしまうという人もいるだろう。ロボット掃除機が普及しつつあるが、それ以外の場所の掃除をどのように効率化できるかと考えていくことで、家事の負担を軽減できるだろう。

 自分の好きなことをしていいといわれて、とっさに思いつくものは人によってさまざまだろう。しかし、よくよく振り返ってみると、趣味など好んで同じようなことをしているということは、よくあることだ。自由時間の使い方くらいは、マーケティングを度外視して自分の好きにしたいところではないだろうか。

パレートの法則をマーケティングに活用するポイント

 ここまでたくさんの身近な例を見てきたが、ここではパレートの法則をマーケティングに活用するポイントを見ておこう。

パレートの法則のポイント

 パレートの法則を理解するポイントとなるのは、20%の要素が全体の80%に貢献しているという関係性だ。一部特定の少数の要素が全体に大きな影響を与えていると言い換えられる。必ずしも、主流や大多数が常に大きな成果を生んでいるのではなく、すべての要素が同じように貢献しているのでもなく、少数のものが全体に大きく影響することがあるということだ。

 次に重要になってくるのは、全体に貢献する少数の要素の見極めだ。少数の要素の中でも、どの要素が大きく貢献しているかをひとつずつ確かめていくことになる。関係性が確認できたら、そこにリソースを費やし成果を最大化する方向で考えていくというのが、マーケティングに活用する場合の鉄則だ。

 所得の考察から発見されたパレートの法則は、応用できる分野が非常に広いことでも知られている。8:2という配分はわかりやすく、大別するときなどに適している。しかし、万物に適用できる絶対法則ではないという点に注意が必要だ。例えば、ロングテールの法則というものがある。

有用だが絶対ではないパレートの法則

 ロングテールの法則とは、主にインターネット販売で、人気や売れ筋とされる特定の商品よりも残り大多数の商品群のほうが売上で上回ることを意味するものだ。売上をグラフ化した際、右側に長く伸びていく恐竜の尻尾のような曲線を描くことから、ロングテールと名付けられた。提唱されたのは2004年、米国の雑誌に掲載された記事がきっかけだった。

 20%の商品が全体の80%を売り上げるとするパレートの法則と、売れ筋ではない80%の商品が売れ筋の20%の商品よりも合計販売額で勝るとするロングテールの法則との違いは、時代背景が大きな理由だといっていい。

 1800年代後半から1900年代前半ごろに提唱され、店舗販売で売れ筋20%の商品が大きな収益の柱だった時代と、オンライン販売が販売チャネルとして台頭し、売れ筋ではない80%の商品でも月に一度は売れるとされる違いからくるものだといえる。

 ロングテールの右側に位置する商品は、往々にして流行り廃れに影響されない定番の商品や、ニッチながらも一部にコアなファンを持つというものが多いといわれる。そのような商品は値下げ競争に巻き込まれることなく高い利益率を維持しやすい。

 ここで重要なのは、ロングテールの法則とパレートの法則のどちらが正しいかではない。データと向き合うことの多いマーケターだが、そのデータを通して見ようとしているものは、いつも顧客だ。

 直感的に合っている、違う気がすると判断しやすいパレートの法則は、共感もされやすく気づきを得やすいという特徴がある。ビジネスシーンや日常生活で取り上げた身近な例を参考に、今後もパレートの法則をマーケティングに活用していこう。

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マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/17 00:30 https://markezine.jp/article/detail/43503

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