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『しなきゃ、なんてない。』を1万種類の画像で伝える、生成AIを活用したLIFULLのチャレンジ

 LIFULLは生成AIを活用して1万種類のフワちゃんの画像を生成し、既成概念にとらわれない生き方を表現する「『しなきゃ、なんてない。』AI 10,000変化」キャンペーンを実施した。ブランディング×芸能人×生成系AIというチャレンジングな取り組みは「協力会社に頼らず、自社中心で企画を生み出す」という挑戦でもあったという。企画の背景や成果、AI活用で得た知見について、プロジェクトを主導した畠山大樹氏と橋本勝洋氏に聞いた。

「AIを活用した多様性の表現」を自社内で企画

――LIFULLさんは生成AIを活用して、1万種類のフワちゃんの画像を生成。X上でフォロー&リポストしたユーザーに画像を1種類プレゼントする「『しなきゃ、なんてない。』AI 10,000変化」を実施し、話題になりました。お二人はどのような役割をされたのでしょうか?

写真右から株式会社LIFULL クリエイティブ本部 ブランドコミュニケーション部コーポレートブランドユニット ユニット長 畠山 大樹氏、同ユニット コンテンツスタジオグループ長 橋本 勝洋氏
写真右から株式会社LIFULL クリエイティブ本部 ブランドコミュニケーション部コーポレートブランドユニット ユニット長 畠山 大樹氏、同ユニット コンテンツスタジオグループ長 橋本 勝洋氏

畠山:今回の取り組みを実施したコーポレートブランドユニットは、企業ブランドに関するコミュニケーションを司るチームです。

 今回、その中で私はベースとなる戦略策定や、どのような目的で、どのようなKGI・KPIを設定するのかを担当しました。また、プロジェクトを進めるためのプロセス設計や、実行を担当するメンバーのサポート、広告代理店との折衝にも関わっています。

橋本:現在とキャンペーン実施時では組織が変わっているのですが、当時のコンテンツスタジオグループは名前の通り、ブランドコミュニケーションやコンテンツを企画制作するチームでした。いわゆるマス向けの広告コミュニケーションではなく、広告以外の手法を用いてLIFULLのブランドや企業姿勢を伝えていく役割です。また、社内のメンバーだけでなく、映像制作会社などと直接企画を回していくグループでもありました。

 今回の取り組みで私は、コンテンツの細かな表現のディレクションを担当しています。また、元々個人でも生成AIを使っていたので、外部のパートナーさんとの技術的なコミュニケーションやフィードバックを行っていました。

――今回のキャンペーンの簡単なタイムラインも教えてください。

畠山:LIFULLは4月から期の後半に入るため、その頃に戦略を考え、5月には社内の中心メンバーでブレストを行いました。これまでは、この段階で広告代理店さんに入っていただき、こちらがブリーフィングをして企画提案をいただくプロセスが主でした。しかし、今回は社内で企画をしっかり作るというチャレンジもテーマに設けていたので、社内で会話しながら企画作りを進めました。

 キャスティングではAIを使用した企画自体がNGというプロダクションもあったりと難航したのですが、フワちゃんに決まり、7月8月で一気にシステムの開発を含めて制作をしていきました。それと並行して、どのような形で世の中に発信していくのか、PRのチームとも話を詰め、8月31日にローンチしました。

目的は「しなきゃ、なんてない。」への共感

――LIFULLさんは長く「しなきゃ、なんてない。」というメッセージを掲げ、様々な取り組みをされています。その中で今回のキャンペーンの立ち位置はどのようなものですか?

畠山: 2018年より、「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージから生まれた、「しなきゃ、なんてない。」というメッセージを通して既成概念にとらわれない生き方・暮らし方を発信してきました。立ち上げた初期はLIFULLの企業姿勢やブランドとしての考え方を宣言する取り組みでしたが、2021年からは、次のステップとしてLIFULLが実現したい未来を、「しなきゃ、なんてない。」を通して具体的に発信しています。

 次に必要なことは、私たちが発信してきたメッセージや既成概念にとらわれない生き方を表現した様々なコンテンツをご覧になった方々に「自分たちのことだ」と共感していただくことだと考えていました。今回の取り組みは、新しい技術である生成AIを取り入れながら、共感を得られる発信をしていくものでした。

――取り組みの目的やゴールはどこに設定されたのでしょうか?

畠山:弊社は社名変更をした2017年当時から、一貫してマスターブランド戦略をとっています。企業としてのブランドとサービスのブランド価値が向上することで、支援と貢献の関係を目指すものです。今回の取り組みのKGIは企業ブランドとサービスブランドの両方を知っていただいている方を増やしていくことがゴールです。

 具体的に施策で追うKPIに関しては情報接触や共感性エンゲージメントを踏まえて、今回はリポストを一つ指標に置くことにしました。

クリエイティブ本部 ブランドコミュニケーション部コーポレートブランドユニット ユニット長 畠山 大樹氏

3万弱の生成画像を目視でチェック

――今回、なぜAI活用に行き着いたのですか?

橋本:様々なアイデアのエッセンスを組み合わせて最終的な企画に落とし込みました。その中に、AI活用も入っていました。AIは基本的に既成概念がないと考えています。画像生成も含めて、人が想像していないものも出してくれますよね。「既成概念にとらわれない、こういう世界もあるんだよ」という表現が、生成AIならできるのではないかと考えました。

――AIが生成した様々なフワちゃんの姿は、感覚的に多様性を感じられます。一方で、芸能人のイメージを崩すことなく、AIで多様なクリエイティブを作るハードルも高いのではないかと感じます。

橋本:似てる・似てないの部分では、画像生成を実際にしたことがある人から見ると、もっとフワちゃんに似せられると感じると思います。私も当初はもう少し本人に寄せることを想定していましたが、特徴を捉えつつ、余白やギャップを見せることが企画の面白みにつながると考えるようになりました。

 また表現については事務所とも懸念事項を話し合い、「こういう見え方は避けましょう」というガイドラインをあらかじめ設定して、出力の仕方をブラッシュアップしていきました。

――出力されたクリエイティブはすべてチェックされたのでしょうか?

畠山:はい。1万種類が世の中に出る前に、3万弱の画像を目視でチェックしました。私たちはもちろん、LIFULLにはインハウスでクリエイティブ機能もあるので、そこのメンバーとともにチェック体制を組みました。また、フワちゃんのマネージャーさんも丁寧にチェックをしてくださいました。

橋本:最初はもっとスムーズにいくかと思っていましたが、なかなか思った通りにはいかなかったですね。ただ、性別や役割が違う複数人でチェックすることで、「この観点で見ると、この表現は傷つくよね」という多角的な判断ができました。私がOKだと思ったものも、別のメンバーから見るとナシというケースもあるんですね。このプロセスも多様性が感じられてLIFULLらしいと思います。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。2013年までは書籍の編集をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/16 08:00 https://markezine.jp/article/detail/43848

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