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LINE経由の再購入売上が+20%に 新規獲得とCRMを両立するオルビスの公式アカウント活用戦略

 今や人々の生活インフラとして多くの人に利用されているLINE。オルビスでは、LINE公式アカウントを通じた新規顧客獲得とCRMを本格化させるため、運用戦略を強化した。 メッセージの配信設計や効果検証・分析方法の見直しを図った結果、売上目標達成とCPOの改善に成功したという。本記事では、オルビスの照井氏と下平氏、LINE公式アカウントの運用支援を行ったミロゴスの千葉氏から、成功に導いた改善点や顧客にとって“ここちよい場”にするための工夫について聞いた。

カタログ通販で培ってきたイメージを崩さないLINEでのコミュニケーション

MarkeZine編集部(以下、MZ):オルビスではLINE公式アカウントを通じてユーザーと積極的にコミュニケーションを行われてきました。このLINEを通じたコミュニケーションはマーケティング戦略において、どのような役割を持っていますか?

照井:オルビスはLINE公式アカウントを2016年から開始しました。これまでLINEスタンプを使った新規「友だち」獲得の施策を10回以上実施し、2023年11月現在で約3,400万人の方が友だち登録をしてくださっております。

オルビス株式会社 CRM・メディア戦略部 新規戦略グループ グループマネジャー 照井 真規子氏
新規顧客獲得をメインKPIとしてCRMに注力

照井:当初LINEは新規顧客とつながれるため、獲得領域のメディアというポジションでした。ですが、スタンプ施策も10回以上と回数を重ねていくとどうしても獲得効率は下がってしまいます。長年の過程を経て現在は、CRM領域のメディアという位置づけになっています。

下平:オルビスではお客様との接点を持てる媒体としてカタログをはじめ、メルマガやオウンドメディアなどをこれまで活用してきました。それらのメディアと比較してもLINEは、インフラ的に多くのユーザーに使われており、生活になじんでいるツールであることからユーザーとのタッチポイントを持ちやすく、CRMとしても活用の幅が広いメディアだと考えています。

オルビス株式会社 CRM・メディア戦略部 コミュニケーション企画グループ 下平 沙樹氏
LINEの公式アカウント運用とEC施策の運営に携わる

MZ:オルビスではLINE公式アカウントをCRMに活用するため、2019年からその運用と効果検証・分析の体制を変更したとうかがいました。CRMへの活用には具体的にどのような狙いがありましたか。

下平:現在、CRMのためにLINEで行いたいコミュニケーションは大きく分けて二つあります。一つは、たくさんの新たな商品に出会っていただくためのコミュニケーション。もう一つが、長く使い続けていただくためのコミュニケーションです。

 後者に関しては、今まさに取り組もうとしている最中なのですが、前者については、2022年からチャレンジしてきました。これまで、カタログでのコミュニケーションなどで培ってきた商品やブランドが持つイメージを崩すことなく、お客様に新たにたくさんの商品に出会っていただくことを意識しました。

 具体的には、店舗とLINE上で共通した施策として、「オルビスウィーク」という毎月20日からの特別なお買い物期間を設けております。「オルビスウィーク」期間の施策は商品・ノベルティなど多岐にわたるため、各施策をバナークリエイティブやコミュニケーションに反映させながら、効果検証を進めています。

運用の効率化で顧客目線の運用を目指す

MZ:ミロゴスでは2022年3月より、オルビスのLINE活用の支援を行っているそうですが、CRMのための施策をどのように支援されてきたのでしょうか?

千葉:2022年にご相談いただいた時、オルビスさんはLINE公式アカウント上で既に非常に多くの友だちを獲得されている段階でした。

 当時のLINEを活用したCRM施策としては、既存のお友だちに対して一斉に配信するアプローチが多く行われていた中で、全員に同じタイミングで同じメッセージを届ける運用では獲得効率が鈍化していたことなどもあり、このままではいけないと課題を感じられていました。

 そこで、ミロゴスでは一人ひとりに合ったタイミングで適切なお知らせを届けることができる運用方法を提案し、新規顧客獲得とCRMの両面から支援を行いました。

ミロゴス株式会社 セールス部 アカウントセールスグループ 千葉 萌香氏
ECを持つ化粧品業界の企業を中心に、LINE公式アカウントを使ったECの売り上げ効率最大化支援を行う

千葉:新規顧客獲得の面では、どの方がどのタイミングでメッセージを受け取ると興味や購入につながるのか、セグメントを切って配信・検証しました。そして、クリックや購入などのアクションをするポテンシャルが高いユーザーに対して、タイミングや商品を合わせて配信を行いました

照井:ミロゴスさんに支援いただく以前は、基本一斉配信とリターゲティング配信を重ねており、一人当たりのフリークエンシーが過多な月もありました。

 また、長い間ご支持いただいてきたアカウントだからこそ、友だち登録いただいている方が求めている内容も千差万別。このセグメント分けも非常に困難でした。そこで、ミロゴスさんにご支援いただくことで、セグメントの見直しを行い、効率的なセグメント配信にシフトしまして、友だち皆様の毎日に寄り添えるような“ここちのよいアカウント”を目指しました。

「友だち歴」×「クリックの有無」の掛け合わせでセグメントを分析

千葉:CRMの側面では、リピート購入やメイン商品の販促ではなく、スペシャルケアの商品購入を促進するため、セグメントの最適化に加え、クリエイティブのブラッシュアップなどを行い、メッセージの表現を変えていきました。特別な工夫や仕掛けを行っているというよりは、基本的なやるべきことを着実に積み重ねたことで良い結果につながりました。

MZ:ミロゴスの支援のもとでオルビスは具体的にどのような施策を行ったのでしょうか。

照井:新規顧客獲得に関しては、反応率上昇をまず目指していたので、セグメントを切ってPDCAを回していくことを重視しました。具体的には、最初に「友だち歴」と「クリック有無」を掛け合わせて分類し、最も反応が良いセグメントの分析から始めました。結果としては、直近でクリックをしてくださっている方の反応率が高いことがわかっています。このように、PDCAを回して導き出した結果を基に、より効率を上げるための運用ができています。

下平:CRMの「お客様に新たにたくさんの商品に出会っていただく」という観点では二つあります。一つ目が、お客様の月々のお買い物サイクルをいかに楽しいものにしていくかという取り組みです。お客様が配信を受け取るタイミングと、わかりやすいクリエイティブ制作を重視しています。

 もう一つが、商品以外の接点でいかにお客様に寄り添い、オルビスに対して興味を持っていただくかという点です。具体的には、ポイントプレゼントとともに、お祝いメッセージをお贈りする「お誕生日」配信を開始しました。反応の数値も堅調に伸びており、最大の自分事である「お誕生日」を起点に、企業LINEアカウントへの関心度・親密度も大きく変わると感じております。

MZ:クリエイティブのPDCAを回す中で見えてきた「わかりやすいクリエイティブ」とはどういったものでしょうか。

下平:一目見て「何をしてくれる商品なのか」「誰からのメッセージなのか」がわかるクリエイティブですね。これは、限られたスペースでコピーとビジュアルのバランスをうまく使い分けることで実現しています。また、ターゲット層には小さな文字が見づらい世代の方も一定数いらっしゃるので文字の大きさや理解しやすさを心がけているほか、日々お使いいただくものとして信頼できる雰囲気を担保するように意識しています。

カルーセル形式の配信で実際に使用されたクリエイティブ

決め手は、根拠のあるKPIのシミュレーション

MZ:オルビスがLINEを活用したマーケティング戦略を転換していく際のパートナーとしてミロゴスを選ばれた理由は何だったのでしょうか?

下平:新規顧客獲得もCRMも、年間KPIに対するシミュレーションとその根拠がご提案当初からしっかりされていたことが大きな理由です。

 加えて、他の企業での様々なCRM推進支援事例も拝見し、その実績も選定理由の一つです。また、今後クリエイティブが大量に必要になる想定だったため、制作体制の強化についてもしっかりご提案いただいたことが決め手になりました。

照井:新規顧客獲得の側面では、より具体的で作り込んだ配信を効率的に行いたいと考えていたため、配信設計が得意で実績があるパートナーを必要としていました

 そういった観点から見ても、非常に細かい分析やセグメント配信を支援してくれるミロゴスさんのサービスは大変魅力的でした。

効率的な配信で気づいた“配信をしない時期”の重要性

MZ:今回の施策による成果をお聞かせください。

照井:新規顧客獲得向け施策の場合はCPOを成果指標として見ています。ミロゴスさんからのご支援開始当初から約20%改善しております。これはセグメントの絞り込みによって効果的な配信ができている結果です。

下平:CRM、既存顧客向け施策の定量的な成果は、現在、配信量を増やしてテストし、計測している段階です。現段階の成果を売上ベースで見ると、LINE経由でのリピートの売上が2023年3月時点で前年比+20%の改善となりました。今年も引き続き、リピートの売上額は伸長を続けています。

 加えて、「オルビスウィーク」期間のLINE配信を見て、新商品の発売を認識していただき、店舗にご来店いただくケースも見られます。このように、配信が一種の広告やチラシの効果も果たしています。

オルビスウィークに配信したクリエイティブ

MZ:効果的な配信を行うようになってから気づいた発見は何かありますか?

照井:新規顧客獲得の視点では、オルビスのECサイトに訪れる際に、Googleなどの検索ではなくLINEから来訪くださる方が一定数いらっしゃるという意外な発見もありました。

 一斉配信していた頃は断続的に実施していたので、配信がない期間のお友だちの動きは捉えられていませんでした。しかし、セグメント配信で配信間隔を空けたことで、自ら来訪して購入くださる方が認識できまして、このお友だちに向けたリッチメニューを意識することができました。

下平:CRM視点でも、LINEを通して公式サイトへ来訪いただいている方が多く見られたのは一つの発見でした。加えて、数年前から始まった定期購入プログラムをリッチメニュー下に置いたところ、一定数の流入が見られるため、LINE公式アカウントが新たな購買の入り口になっていることが見て取れます。

定期購入プログラムへの案内が置かれた実際のリッチメニューの様子

 また、オルビスが展開する食品など、化粧品以外の商品も一緒に紹介すると一定数の反応が見られるので、お客様の生活のあらゆる面でオルビスとの接点になるLINE公式アカウントは、LTVを高く保つ新たな手段としても価値を感じています。

ユーザーの日々の生活でのパートナーとしてのブランドへ

MZ:今後オルビスとしては、ユーザーとのコミュニケーションにおいてLINEの活用をどう考えていますか。

下平:オルビスの商品を購入したいと思っていただくための工夫はこれまでの取り組みの中で少しずつできてきたと思っています。今後のCRMでは、お客様にオルビスと長くお付き合いいただくために、お買い物を楽しんでいただき、日々の生活の中にいかに商品を取り入れてもらうかという視点が大事になります。そのため、長くオルビスでのお買い物を続けていただくための継続促進プログラムも取り入れていきたいと思っています。

 ミロゴスさんは数多くのCRMでの知見をお持ちなので、今後のシナリオの検討やリピートのためのコミュニケーション設計にはこれまで以上にご協力いただければ嬉しいです。

照井:LINE公式アカウントをCRM中心にしていきたいとはいえ、一定数新規のお客様も入ってくださるので、変わらずそちらへのコミュニケーションも取っていきたいと思います。現状では、ある程度ベストな配信設計が見えてきたのですが、新しいチャレンジも続けたいと考えています。

MZ:ミロゴスでは今後、オルビスにどのような価値を提供していきたいとお考えですか。展望をお教えください。

千葉:オルビスは、お客様のあらゆるフェーズで必要とされるラインアップを取り揃えた素晴らしいブランドだと思っています。

 ユーザーにとって「気づいたらオルビスとずっと一緒だった」と感じるような自然さを保ちつつも、オルビスへの愛着はしっかり作っていけるような接点としてLINEが活用されるように、これからも戦略立案や運用改善を支援していきたいです。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:ミロゴス株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/12/13 12:00 https://markezine.jp/article/detail/44157