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審査員が見たカンヌライオンズ2023

カンヌ2023に学ぶ:Vol.3平井 孝昌「それは同調圧力ではないか?『安全』も今後の大きなテーマ」

 2023年6月19~23日に開催された「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル2023(以下、カンヌライオンズ2023)」の潮流を審査員に聞く本連載。今回はメディア部門ショートリスト審査員を務めた平井孝昌氏(ADKマーケティング・ソリューションズ)に取材しました。

同調圧力になっていないか?「塊・クラスター」への意識

――平井さんもメディア部門のショートリスト審査員として参加された「カンヌライオンズ 2023」ですが、全体の傾向としてどのようなことをお感じになりましたか?

 ありきたりな回答をすれば、AIなどテクノロジーが上手く使われていたというものになりますね。私の個人的な印象としては、メディア部門で応募の合った中から約270作品を審査した中で、南米を中心にサッカー関連のエントリーが多く、ワールドカップの影響を色濃く感じました。また、性教育や性病など、これまでは人に言えなかったことをデジタルやアイディアで解決するものも多いと感じました。

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ エクスペリエンス・デザインセンター バーティカル・プランニング・ディレクター 平井 孝昌氏
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ エクスペリエンス・デザインセンター バーティカル・プランニング・ディレクター 平井 孝昌氏
インターネット黎明期からデジタルコミュニケーションの戦略立案、制作を担当。外資系広告会社でのデジタルプランナー、クリエイティブディレクターを経て、2020年からADKマーケティング・ソリューションズにバーティカル・クリエイティブディレクターとして入社。記号論とニューロサイエンスのアイデアを組み合わせた「文脈資産」のコンセプトを元に、従来の調査によるニーズ分析に、検索などの行動データによるターゲットインサイト分析を加えた戦略立案と、戦略、クリエイティブ、メディアを垂直統合したクリエイティブディレクションによって、ビジネスに貢献できるコミュニケーションを実現。

 そして、この2点も含めて全体として強く意識したことは「塊・クラスター」です。塊やクラスターとは、国だったり、男女だったり様々なものがあります。たとえば現在、ジェンダーの意識が高まり男性と女性などのクラスターのボーダーレス化は進んでいます。その中でも、いかに今までにない新しい塊・クラスターを見出していくのかを考えさせられる作品が多数ありました。

 Microsoftがデザイン部門と、クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション部門でグランプリを受賞した「ADLaM an Alphabet to Preserve a Culture」も、塊をどう意識するのかを考えられる作品です。アフリカのフラニ族が使うラフール語は話し言葉しかなく、話者の減少とともに滅びゆく運命にありました。その言語を手書きの「ADLaM」というアルファベットに起こしたものをデータ化して、活用できるようにした取り組みです。ラフール語というマイノリティな1つの塊にテクノロジーで再び光を当てた作品だと言えます。

「ADLaM an Alphabet to Preserve a Culture」

 一方で、ある国からは「この国の人間にとってサッカーは宗教です」というアプローチのエントリーがありました。でも、国民全員がサッカーを好きなわけじゃないですよね? 数%あるいは1%以下かもしれませんが、サッカーなんて嫌いだっていう人がいてもいい。サッカーが好きな人や嫌いな人という塊がある中でサッカーがもたらす価値や体験は同調圧力なのか、それとも、サッカーが好きではない人たちもケアしながら盛り上がっているのか。どちらであるかが、非常に重要な判断ポイントだと思います。私が外資系企業に在籍していた頃に東洋人というマイノリティな立場で、いろいろと感じることがあったバックグラウンドも関係しているかもしれません。

「安全」が大きなテーマになる

――他にはいかがでしょうか?

 もう一つ、「安全」がキーワードではないかと感じています。

 人の命がかかっている深刻な課題を扱った作品も非常に多かったです。たとえば、プリント&パブリッシュ部門のグランプリ「Newspapers Inside The Newspaper Edition」は政治や政府を批判するジャーナリストが暗殺されるケースもあるレバノンで、現地新聞の編集長が暗殺された日に、政府の弾圧で廃刊に追い詰められた6媒体を紙面に蘇らせたというものです。

 メディア部門でも、ラテンアメリカでは環境保全活動家が相次いで殺害され、自殺として処理されている問題に対して、事前にメンタルヘルスのカウンセリングブランドが精神分析を行い「この人は死自殺しませんよ」という証明書を出すことで、容易に自殺だと表明できなくするという「The Activists Reserve」というエントリーがありました。

「The Activists Reserve」

 今言った課題設定は日本では考えられませんが、たとえばドメスティックバイオレンスの問題など危険にさらされている人が多い中で、安全という価値をメディアとしてどれだけ発信できるか、語り合えるか、安全をメディアにできるか。これは非常に大きなテーマになると感じます。

 ――今回メディア部門では、AIが顔を盛ってくれるTikTokのフィルター「Bold Glamour」へ異を唱えた、Doveの「#Turnyourback」がグランプリを獲得しました。こちらはいかがですか?

 率直に言うと、非常に大きく重要な課題である反面、長らく言われ続けているテーマなので斬新さや驚きはそこまで大きなものではなかったと思います。一方で、Doveらしい広告を継続している一貫性が素晴らしいと感じます。評価ポイントはそこではないでしょうか。商品を売るための広告も当然展開する一方で、パーパスやポリシーを社会的・政治的な視点で発信し続けることはすごく良いことだと思います。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。2013年までは書籍の編集をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/08/03 10:25 https://markezine.jp/article/detail/42705

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