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NewsPicksのLTVドリブンマーケティング

フリーミアムモデルのKPI設計/NewsPicksが行き着いたLTVドリブンマーケティングを公開

 フリーミアムモデルのプロダクト・サービスにおけるマーケティングについては、戦略の道筋を立てるのが難しく、また参考となるような情報が世にあまり出回っていない。本連載では、2018年中ごろからNewsPicksが試行錯誤しながらアップデートしてきた、フリーミアムモデルにおけるLTVドリブンマーケティングの全容をCMOの菊地幸司氏に紹介してもらう。

NewsPicksのBtoCビジネスの構造

 NewsPicksは、会員数が924万人を超える経済ニュースプラットフォームです(2023年末時点)。無料でお使いいただいているお客様(以下、無料会員)と有料プランに申し込んでいただいているお客様(以下、有料会員)がいらっしゃいます。その他、法人として企業単位でご契約いただいている企業様もいらっしゃいますが、本稿では詳細は割愛させていただきます。

 無料会員は無料で見られる動画や記事はもちろんのこと、ニュースに対するコメントを閲覧することが可能です。有料会員はさらに、独自取材の記事コンテンツや、著名人が出演する経済トークバラエティなどの有料コンテンツを楽しんでいただけます。

 また、無料コンテンツの一部は広告です。よって、NewsPicksの主な収益は、無料会員および有料会員による広告売上と有料会員による有料課金の売上の合算になります。

 無料会員のほうが圧倒的に数は多いのですが、有料課金の売上があるため、一人当たりの収益は有料会員のほうが大きくなります。

フリーミアムモデルにおけるKPI設計の難しさ

 基本的なサービスや製品は無料で提供し、より高度または詳細、広範囲な機能は有料で提供するというビジネスモデルを「フリーミアムモデル」といいます。我々のようなメディアサービスの他に、ゲーム、動画配信サービス、ソフトウェアなどのカテゴリーでよくとられるビジネスモデルです。

 私は、NewsPicksのマーケティングを行う中で「フリーミアムモデルにおけるKPI設計の難しさ」を実感してきました。

 フリーミアムモデルのKPI設計が難しい理由は、大きく二つあります。

 一つ目の理由は、施策の選択肢は多いが、結果の直接比較が難しいということです。無料会員を増やす施策には様々な打ち手がありますし、有料会員を増やす施策も同様に様々な打ち手があります。多くの選択肢が存在するため、施策による効果の算出が複雑で、施策の効率性を簡単に比較することができません。

 もう少し説明すると、無料会員から有料会員に至るまでの遷移の仕方にはいくつかのパターンがあり、BtoCのマーケティングではそれを加味する必要があります。ずっと無料でお使いいただくお客様もいれば、無料会員から有料会員を申し込んでいただけるお客様、最初から有料会員にお申込みいただけるお客様、有料会員の状態と無料会員の状態を行き来するお客様が存在します。

 無料会員を増やす施策、無料会員から有料会員への移行を目的とする施策、有料会員を増やす施策、いずれも必要で、マーケティングKPIを設計するのが非常に難しいのです。NewsPicksの場合は有料会員による売上だけでなく広告売上もあるため、売上(KGI)を起点にしたKPI設計はさらに複雑です。

 この問題は、お客様の会員状態と、複数ある売上を考慮に組み込んだLTV(顧客生涯価値)を算出できれば解決します。算出さえできれば、あとは施策ごとのLTVを比較するだけです。

 LTVの算出方法は(実際はもっと複雑ですが)、まず獲得した無料会員数と無料会員の維持率から、経過した月ごとの無料会員の残存数を推定します。並行して無料会員から有料会員への転換率と、有料会員の解約率から経過した月ごとの有料会員数も推定します。経過した月ごとの推定会員数がわかれば、1人あたりの月間の有料プランの収益と広告からの収益を乗じて、無料会員獲得数で割ればLTVを算出できます。

 LTVを算出するモデルの作成は簡単ではありません。最初から完璧な算出モデルを作ることは目指さず、まずは作ってから改善していくほうが事業構造の理解も深まり、結果として早く完成させることができます。NewsPicksも粗いLTV算出モデルから、徐々に必要な変数を追加しアップデートしてきました。

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この記事の著者

菊地 幸司(コウジ キクチ)

 千葉大学工学部卒業後、三井物産子会社にて新規事業開発を担当。Eコマース事業の立ち上げ、Webサイト改善、CRMシステムの構築、在庫予測システムの構築などデータドリブンマーケティングにより黒字化。その後アイ・エム・ジェイ(IMJ)にてデジタルマーケティング戦略立案・実行支援に従事。 2017年にNe...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/24 14:34 https://markezine.jp/article/detail/44814

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